回路設計だけでは終わらないプリント基板設計とCADの必要性電気回路設計者向け 実践! EDAツール活用法(3)(2/2 ページ)

» 2010年05月17日 12時00分 公開
前のページへ 1|2       

4. プリント基板設計CADの設計フロー

 次に基本的なプリント基板設計フローをAllegro PCB Designという米国Cadence社製のプリント基板設計CADを例に紹介します。

 図3の「電子部品を配置」「電子部品の配線、ベタ作成」の作業時はDRC(デザイン・ルール・チェック)が働き、回路や設計ルールに違反した場合はリアルタイムでその個所にエラーマーカーが表示され、設計者に違反があることを知らせます。この機能により設計者はエラーマーカーが出ないようにするだけで回路図どおり、設計ルールどおりの設計を行うことが可能となります。

photo 図3 Allegro PCB Designを用いたプリント基板の設計フロー

5. プリント基板設計CADの導入メリット

 前述の設計作業の時間短縮と設計品質向上以外にも、プリント基板設計CADを利用するメリットはあります。Allegro PCB Designにおいては、例えば、「自動配線機能」なら人手では3日かかるような配線の設計を約3分程度で完了させることができます。前述のDRC機能を利用すれば、設計者自身が細かい設計ルールを1つずつチェックする必要がありません。熱/EMI(不要電磁波)/SI(信号品質)/PI(電源品質)/DFMなどの各種解析ツールと連携し設計情報のやりとりを簡単に行えます(解析ツールについては今後の記事にて紹介します)。

 また、Allegro PCB Designはもちろん各CADベンダでは設計データのビューアを無償公開していますし、設計図がデータなら海外拠点や遠方地とのやりとりもすぐに行えます。取引先や関連企業と同じCADを利用すれば、さらに設計作業を効率化することができるでしょう。

6. プリント基板設計CAD導入の検討事項

 CADさえ導入すればプリント基板の設計がすべてうまくいく、というわけでは決してありません。設計者がCADを実務で活用するには操作方法の習得が必要であり、機能が多ければ便利ですが、理解し使いこなすには時間を要します。特に未経験者にCADの操作を習得させ、一人前のプリント基板設計者に育てるのは大変なことです。

 せっかく導入したCADが十分に活用されていないというケースも少なくありません。プリント基板設計CADの導入は立ち上げの問題も十分考慮する必要があり、機能や価格に加え、販売会社の技術サポートやトレーニングセミナーの充実度もCAD選択の重要なファクターといえます。

7. 最後に

 ここまでプリント基板とその設計用CADについて説明してきましたが、読者の皆さまの中には、プリント基板って知らなかった、あるいは見たことはあるけれど設計する人がいるとか専用のソフトウェアがあるとは思わなかった、という方もいると思います。

 次回からは、プリント基板設計CADでは解決できない放射ノイズや発熱といったプリント基板設計が抱える問題とその解決策について紹介していきます。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.