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» 2010年07月12日 00時00分 UPDATE

第21回 設計・製造ソリューション展レポート(2):「クラウド解析環境」がいよいよ本格化! (1/2)

2010年6月23日から25日までの3日間、東京ビッグサイトにて「第21回 設計・製造ソリューション展(以下、DMS展)」が開催された。本稿では、PCクラスタ、クラウド関連技術を扱う企業ブースを紹介する。

[原田美穂,@IT MONOist]

富士通とNECソフトが考える2つのクラウドCAEの方向性

 いわゆる「クラウド」にはさまざまな類型があるが、国内大手ベンダ2社が提示したクラウドのビジョンが非常に興味深かったのでここで紹介しておこう。優劣で比較できるものではなく、対象やビジョンの置き方が異なっている点に着目したい。

 基幹系システムのクラウド化が注目されているのはもちろんだが、本稿では、CAE環境のクラウド展開にフォーカスして紹介したい。

Webブラウザから実行するスパコンCAE解析

 NECソフトが提供するHPC Onlineは、大学や研究機関が保有するHPC環境の一部を活用し、流体解析や構造解析などに利用するサービスだ。

 この場合、利用者はハードウェアなどのメンテナンスコストを負担する必要がなく、また、月次の課金体系であるため必要な時にのみ利用することができる。開発中の製品のデータをオンラインに流すことに不安を覚える向きもあるだろうが、このサービスはSSLで通信を行うほか、演算に使うデータそのものも暗号化しているため、万一、HPC側のハードウェアなどが紛失したとしても、そこからデータを取り出すことは、実質的に不可能となっている。設備投資が不要なうえ、月次で利用できるためコスト面で優位なサービスだ。

 このサービス自体は2009年から提供されているが、今回の出展での主なアップデートは、ターミナル接続以外にもWebブラウザを使った操作画面が提供されるようになった点。データのアップロードやジョブ監視などがGUI操作できるようにより、より利便性が高まっている。

クラウドPCクラスタの解析環境提供に向けて性能検証センターを設立

 一方、富士通でもCAE向けにPCアーキテクチャをベースとしたクラウドサービスの検証を進めている。

 複雑な3次元設計図をインターネット経由で送信して解析するとなると相当の時間がかかるのではないかという疑問があったが、「データ軽量化については現在検証を進めているところ」(富士通説明員)とのことだ。もっとも、解析そのものに数日かかっているような場合なら、クラウド経由でHPCを利用すれば、「数分から数時間で結果を得られるはずなので、通信ボトルネックについてはさほど気することなく、HPCの利点を得られるだろう」(同)とのことだ。

展示会場ではプレスリリース前の参考出展として控えめの展示だった 展示会場ではプレスリリース前の参考出展として控えめの展示だった

 富士通では、川崎工場を基点に携帯電話機器開発などの社内プロジェクトでの実証実験を進め、2011年には外部向けにも展開する方向で調整を進めているとのことだ。富士通の提供する解析ソフトウェア以外でも対応するという。加えて、ネットワーク越しに解析環境を展開することで、拠点や地域を越えた解析も可能になる予定だ。

 なお、DMS展後の2010年7月6日には、富士通トラステッド・クラウド・スクエア内にCAE解析の動作および性能の検証を行う施設「PCクラスタ性能検証センター」を開設したことを正式に発表している。

 発表によると、同センターでは、インテル Xeonプロセッサ(5600番台)を搭載した「PRIMERGY BX920 S2」「PRIMERGY BX922 S2」(最大216並列)、計算ネットワークにInfiniBandを利用したシステムを用意している。センターの正式設立に先駆けて行われた、エムエスシーソフトウェア、エクサ・ジャパンによる検証では、解析ソフト側の並列ソルバやドメイン管理機構と組み合わせることで、コア数にあわせてリニアに処理性能が向上するという結果が出ている。

 エムエスシーソフトウェアの汎用非線形構造解析ソルバ製品「MD Marc」では、SMP、DDM有効の場合、16並列の場合で逐次実行と比較して10倍の処理速度になることが実証されている。また、エクサ・ジャパンの熱流体ソフトウェア「PowerFLOW」を使った直接解法による流体騒音シミュレーションの計算時間の評価では、192並列までの有効性が実証されているという(プレスリリース)。

 富士通が提案するクラウドベースの解析環境は、NECのそれとは方向性が異なり、オンプレミス、プライベートクラウドでの活用を視野に入れている。クラウド上でどんどん自社製品の解析情報を蓄積することで、ナレッジの共有ができるほか、「蓄積情報を基に将来的には、最適解を推測して提示するような仕組みも考えられる」(同)という。

 両社のCAE領域におけるクラウド、オンラインサービスの方向性は異なるものだが、どちらも実務上に大きなメリットをもたらす可能性が高い。今後の動向に注目したい。

クラウド的特徴をフレキシブルに活用するのが“ハイブリッドクラウド”

 NECブースでは、このほか基幹系システムでのクラウド利用も紹介されている(詳しくは下記事前記事を参照)。

 NECブース内セミナーでも同社のクラウドサービスの取り組みが紹介された。同社では「クラウド」ではなく、より業務にフィットした現実解として『「クラウド的」特徴を持ったシステム』を提案している。クラウド的特徴とはつまり、オンラインでどこからでもアクセスできること、メンテナンスコストがかさまないことなどの「クラウドならではの利便性」を提供しつつ、従来システム同様の社内システムとしての安心感を提供するというものになるようだ。

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