RFID製造ライン監視・管理、モバイル管理のいま第21回 設計・製造ソリューション展レポート(4)(2/2 ページ)

» 2010年07月14日 00時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]
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UHF帯RFIDを使ったカンバン・組み付け現場カイゼン

 NECブースには「アジャイル生産現場ソリューションも展示された。

 同ソリューションは、NECパーソナルプロダクツ 米沢工場などで運用実績のある製造実績管理システムをパッケージ化したものだ。具体的にはカンバン方式の生産工程をRFIDによる電子タグで自動認識させ、工程の進ちょく情報も管理していく。

 「表記の違いや表示順など1つで現場の効率は大きく変わります。米沢工場での実証では、現場の担当者の『使いやすさ』へのこだわりを意識して反映してきました。その結果はすべてこのソリューションに組み込んでいます」(担当者)

 UHF帯RFIDは従来のRFIDと比較して通信距離が長いため、倉庫間の集配トラックの出入りを監視するといった用途も考えられる。アイデア次第で電子タグを使ったカイゼン方法が広がることが期待されている。

オープンな端末とオープンなFAを組み合わせる――Android端末でライン監視

 三菱電機の提供するFA機器は、その仕様が公開されていること、認定制度を持ち、さまざまなベンダが競ってアイデアを出していることが特徴だ。ブース内でも、三菱電機そのものの展示だけでなく、パートナー認定企業がそれぞれのアイデアを示していた。

 担当がその中でも出色と感じたのは、Android端末を利用したケー・ティー・システムのデモ出展だ。

 Androidとは、携帯電話向けに開発されたオープンなソフトウェアプラットフォーム。近年では携帯電話以外の組み込み機器への利用も盛んに行われている(詳しくは@IT MONOist 組み込み開発フォーラムのAndroidコーナーを読んでほしい)。

 ケー・ティー・システムは、MESシステム「EXPIO-MES」にエネルギー管理機能を追加したソリューションを紹介していたが、もう1つ注目を集めていたのが、参考出展していた「携帯端末を使ったライン監視ソリューション」のデモだ。

EXIPIO MESとAndroid端末を組み合わせたライン監視(ケー・ティー・システム、参考出展)

 写真を見ると分かる通り、市販のAndroid搭載の携帯電話上で、ライン稼働状況をリアルタイムで監視するものだ。実用に向けては今後の検証を待ちたいところだが、ここでは、複数のラインの監視を遠隔からでも集中的に確認できる点、端末が携帯電話であることから、異常を感知した際にすぐに音声通話をしたり、オンラインで状況を把握するといった作業が迅速に行える点に注目したい。

 前述の通り、Androidの仕様はオープンなものであり、無償で利用できる。またアプリケーション開発工数も、従来の逐一「手組み」で行う場合と比較するとぐっと少なくて済む。モバイル端末とネットワーク環境さえあれば、ライン管理作業は非常に効率かつリアルタイム性のあるものになるだろう。

 こうしたオープンな端末で面白いアイデアが生まれるのは、三菱電機がオープンな開発環境を広く提供していることもその要因の1つといえるだろう。iPadブームも手伝ってか、今年のDMS展では、このようなモバイル端末やタッチデバイスを使った現場改善のデモが、参考出展を含め、いくつか見られた。

製造ラインのセキュリティの穴をどうふさぐか

 出色だったのは、セキュリティ対策製品を提供するトレンドマイクロが出展していたことだ。PC向けのセキュリティ対策ソフトのイメージが強い同社がDMS展に出展したのには理由がある。

 セキュリティ対策というと、インターネットに接続している端末のみが対象となると誤解しがちだが、近年はUSBメモリなどのポータブルメディアを経由してウイルスに感染するケースが少なくない。USBメモリなどによるウイルス感染の脅威については、@IT掲載の下記記事を参照いただきたい。


■クラウド時代にオフライン端末でウイルス対策が必要な理由 - @IT□http://www.atmarkit.co.jp/news/201003/19/trendmicro.html■


 今回の出展では、「Trend Micro Portable Security(TMPS)」というインストール不要のセキュリティソリューションを展示している。USBデバイスを挿入すれば、端末側に一切の変更を与えずにセキュリティスキャンを実施できる製品だ。

Trend Micro Portable Security(TMPS)の機能イメージ(プレス資料より転載) Trend Micro Portable Security(TMPS)の機能イメージ(プレス資料より転載)

 しかし、出荷前製品の検査用コンピュータ端末などがウイルスに感染し、製品にウイルスが侵入してしまうというケースは決して少なくはないという。いくら製造ラインをインターネットから遮断しても、製造ライン上にある専用端末からウイルスが混入してしまっては防ぎようがない。とはいえ、専用端末へインストール型のウイルス対策ソフトを導入するとベンダのサポート対象外になってしまうほか、パフォーマンスにも影響する。またインターネット経由でのパターンファイル更新もできない。そこで、検索エンジンとパターンファイルをUSBメモリ内に内蔵したスタンドアロン型のウイルス対策ソフトが必要となる。

 「企業や個人利用のPCについては、多くの方々が対策する意識を持ちつつありますが、『オフライン(インターネットに接続していない)』で利用される製造ライン上の端末についてはいまだに意識が低い状況」(ブース解説員)

 ウイルス感染は、いざ発生すると、場合によっては製造ラインそのものの停止や、出荷品の回収など、その被害が甚大となる可能性がある。万が一の事態が発生する前に万全の対策を施しておきたい。

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