アジア市場で軸足を固め、海外進出支援を狙うモノづくり最前線レポート(22)(2/2 ページ)

» 2010年09月15日 00時00分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       

SCM分野への参入とアジア法人

――アジア地域に拠点を移すことと併せて、最近ではSCM分野に注力されているようですが。

藤井 2010年6月14日にリリースしたAsplova SCMは国内だけでなく、グローバルでサプライチェーンをオペレーションしていくことを念頭に作られています。この意味ではAsplova Asia設立とこの製品のリリースはリンクしており、当然の流れといえます。

14年前の構想を実現する機が熟した

――貴社の実績あるスケジューラエンジンを使ったSCM(SCP)システムの実現については、14年前から着想されていたようですね。ちょうど米国では3PLなどが注目され、国をまたいだサプライチェーンの在り方が大きく変わった時期です。米国はこのときすでにグローバル化を実現しつつあったことからサプライチェーンの効率化が注目された経緯があったと思います。サプライチェーンマネジメントの最先端事例も米国発のものが多い印象です。

高橋 14年前、米国で開催されたAPICSの展示会では、多くのスケジューラベンダーがグローバルサプライチェーンを想定した製品をPRしていましたが、これらを実現するにはかなりの投資が必要な時代でした。

 実際のところ、この時期、グローバルサプライチェーン管理を標ぼうした生産スケジューラメーカーが構想した機能を実現するには、マシンスペック、ネットワークインフラなど、すべての面において環境が貧弱だったといわざるを得ません。手ごろな金額で実現することは難しかったと思います。

 しかし、現在では日本はもちろん、アジア各国のインフラ整備も進み、安定した通信が実現しているほか、コンピュータ機器の価格そのものも驚くほど安くなってきています。昔の汎用機やUNIXサーバ機程度のスペックなら数万円で手に入れられる時代です。わたしはいまこそ、当時のAPICSで注目されていたグローバルサプライチェーンをすべての企業が管理できる時期になったと考えています。

サプライチェーン全体を見渡すにはサプライヤ全体で導入できる仕組みが必須

――当時も、いまも、生産物流、調達などは大きな(高価で高機能な)システムが必要という印象が強くあります。

高橋 多くの方がいまだにそのような印象を持っているようですね。しかし、実際には10年前に64ビットCPUを搭載したUNIXサーバ機でないと動作しなかったようなシステムでも、64ビットマルチコアCPU搭載の一般的な「パソコン」でも同等程度の性能を出すことができます。信頼性の問題についても、バックアップやフェイルオーバ技術が低価格でも実現しつつありますから、一定の品質を得られるようになっています。

 SCPシステムは、結局のところ、セットメーカーのような大きな企業だけが導入しても始まりません。部品や原材料を提供するサプライヤメーカーでも同様に導入できていなければ、文字どおりのサプライチェーン管理は実現するはずがありません。

 サプライヤ全体が無理なく導入できる価格設定であること、誰でも使いこなせること、サプライチェーン全体を見渡すには、この2つの要件は絶対必要だと考えました。

 Asplova SCMは、こうしたわたしたちの考えを結集したソリューションです。誰でもが扱え、なおかつ、各拠点が連動して有機的に調整可能な仕組みを、極力手軽な環境で利用できるようにしたかったのです。

◇ ◇ ◇

 同社が開発しているAsplova SCMについては、下記記事でも紹介している通りだ。多数のライン、物流拠点のそれぞれの制約条件を考慮した最適解を自動算出する機能を持つ。比較的規模の小さな事業拠点でも導入しやすい価格帯で提供できることも特長の1つとなっている。2010年末にもフル機能のリリースを予定しているという。

高橋 日本のマーケットを重視してきた当社ですが、各社が本格的にグローバル化を進めつつあります。グローバル化の中には、現地化という手法も含まれます。

 現地化とはすなわち、現地法人ということです。日本の市場が縮小しつつある中、海外に拠点を移す企業はますます増えるでしょう。その際、親会社の本拠地がどこにあるか、ということは大きな問題ではなくなるかもしれません。

 われわれは、もちろん日本企業のアジア進出のお手伝いもしていますが、日本企業に限らず、現地販売代理店を通じて、現地企業とのビジネスも積極的に行っていこうと考えています。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.