序章――昔取ったキネヅカで趣味なモデリング俺仕様なiPhoneケースを作ろう!(1)(2/2 ページ)

» 2010年09月21日 11時00分 公開
[水野操 ニコラデザイン・アンド・テクノロジー/3D-GANニコラデザイン・アンド・テクノロジー]
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もっと製品っぽいやつで

 しかしながら、わたしが作りたいのはこのような工具みたいな形状ではない。iPhoneの台とかケースである。ということで練習問題として、もう少しコンシューマ製品っぽいものにトライしてみることにした。それが、次に示す携帯電話もどきである。

ALT 図5 携帯電話もどき!?

 携帯電話といっても最近のスマートフォンとかではなく、わたしが使っていた初期のiモードのドコモ携帯に似た筐体を作ってみた。とはいってもオペレーションそのものはそれほど難しくない。基本となるボディーの形はあっという間にできた。そこにフィレットなどで使ってそれらしい形が出来上がってくる。

 次にこのパーツをシェル化してみる。といっても、それらしいコマンドが見つからない。いろいろと探ってみると「側壁」というコマンドのようだ。これで、中身もくり抜けた。

 そして、最後に行ったのが、各種ボタン用の穴を開けること。まずはどの携帯でも付いているような真ん中にあるメニューなどの操作をするボタン。また、その周りに4つiモード(Web閲覧)やメール用のボタンがある。これは、パターンというコマンドがあったので、それを使って、真ん中のボタンの周りに均等に配置されるように置いた。これでボタン4つが簡単に配置された。最後に数字のキーである。こちらも、キー用の最初の穴を開けたら、あとはパターンで配置すればよい。これも思ったよりも簡単にそれらしいものができた。

ALT 図6 数字キーを作る

 しかし……、いまひとつバランスが悪い気がする。携帯の長さももう少し調整したい。ここで、先ほどのSTがパワーを発揮する。例えば数字のキーの位置である。3次元上で構想設計をしていれば、少しずつ動かしながら状況を確認したいということもあるであろう。今回、キーはすべてパターンで配置した。それ故に、このパターンを選択すれば、15個のキーはすべて連動して、太い矢印の方向に移動する。もし動かす方向を変えるのであれば、矢印と一緒にある輪のようなものを操作すると方向も変えられる。もっとも、この場合には左右対称なので縦方向以外には動かさない。それから、筐体そのものをいじりたいという場合もあるだろう。そのときには、このモデルの端をつまんでやればよい。いとも簡単に粘土細工のように動かして、このパーツのイメージの検討を行うことが可能だ。どうやら、わたしでもそれらしいものがデザインできる自信がついてきた。

動画2 携帯電話もどきのモデルにSTを適用して、ボタンの穴を動かしたりボディの長さを変更したり

PC用キーボードのキーを作ってみた

 調子に乗ってきたので、もう1つデザインしてみることにした。さっきは筐体をモデリングしたので今度はキーである。ただし、手持ちの携帯のキーを見るとちょっと形状がシンプル過ぎるので、周りを見回して目に入ったデスクトップPC用キーボードのキーをモデリングしてみた。

ALT 図7 キーボードのキーを作ってみた

 キーの作り方そのものは、それほど難しくはない。基準面に正方形をスケッチした後に、それを望みの高さに突き出して、その際に勾配(こうばい)を10度前後付ければ、それらしい形になる。次にキーの上の基準面に文字を描く。今回は自分のイニシャルのMの文字にした。この文字をキーの上部の面に押し出しコマンドで刻み込んだ。中身については、先ほどの携帯電話もどきと同様にシェル化した後、取り付け用のリブのスケッチをキーの底面に描き、キーの上部から下側の面まで突き出しコマンドで作れば、これまたそれらしきものが完成した。

ALT 図8 文字を彫る

 もちろん、キーの高さが気に入らなければ、先ほどの携帯電話もどきと同じようにSTの機能で選んで上下させればよい。ところで、この機能を使うときは、選択する部分は意図したものを選ばないと意表を突いた挙動になったり、また、すでにたくさんのフィーチャーが重なった部分などが動いたりする選択をすると、エラーが出る。初期構想の段階の、あるいは設計途中であれば、個別のフィーチャを動かして検討をするといったような場合に使うのが一番向いているようである。もっとも、CGモデラーではないので、本当にそのような柔らかい作業を多用するのであれば、そもそもCADではなくCGツールを使った方がよいので、無駄にツールと格闘しない方がいいというのが個人的な意見ではある。

ALT 図9 形状を微修正する

 ただ、1ついえるのは、比較的CADの素人であっても、もちろんプロにとっても、習得が容易であるということ。粘土細工はさすがにいい過ぎかもしれないが(そのようにものを作りたければCGツールを使おう)……、より手軽に形状を変更しながらモデリングを進めることができそうだ。ちなみに、ここにたどり着くまで、ソフトをインストールし、ここには書けないような試行錯誤やいろいろな部品でやったモデリングの練習を日常の仕事の合間にちょこちょことやって1週間足らずで済んだ。この間、周りにSolid Edgeを知っている人もいないので、操作方法など聞ける人はゼロ。完全に独学である。ということは、お世辞ではなく十分に使いやすく仕上がったソフトといえるかもしれない。

動画3 PCのキーボードのキーの高さや彫り込んだ文字の位置をSTで動かす

次回は、いよいよ……

 さて、いよいよ、自分が作りたい趣味のiPhoneガジェットをモデリングできそうな気になってきたので、いったんここで小休止。次回は、ものの構想を練りながら、ガジェットのモデリングを進めていきたい。一歩一歩頭の中のモデルが3次元のデータへ、そしてリアルな物体へと進んでいるようで楽しみだ。何となく根拠のない自信がついてきたぞ。(次回に続く)

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。首都圏産業活性化協会(TAMA協会)コーディネータ。外資系大手PLMベンダやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスディベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)がある。




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