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» 2010年12月01日 00時00分 UPDATE

モノづくり最前線レポート(25):収益に結び付く「4つの箱」カイゼンフレームワーク (1/2)

ちょっとのスキルで業務改善に成功したヤンマーエネルギーシステムの事例と、日産NPW活動のベースにある思考フレームワークを紹介

[原田美穂,@IT MONOist]

 2010年11月17〜19日、東京ビッグサイトで日本能率協会主催「ものづくりNext↑2010」が開催された。

 ものづくりNext↑2010は、メンテナンス・テクノショー、非破壊検査フェア、インフラ検査・維持管理展、生産システム見える化展、ものづくり3Dexpoの5つの展示会から構成されている。本稿では、フォーラム読者の関心に近い「生産システム見える化展」会場で開催された「可視化・整流化・IT改善・コーナー」のプログラムの中身を一部紹介する。

 可視化・整流化・IT改善・コーナーは昨年も開催されており、そのときの模様の一部を下記記事で紹介している。今年も日本プラントメンテナンス協会やものづくりAPS推進機構に参加する専門家の方々を中心に多数の講演が聴講できた。

当月引き当て、生販情報の可視化も少しのスキルがあれば自力でできる!

 「技術情報連携のためのプラットフォームの必要要件」と題したセッションでは、モノづくりAPS推進機構 進化型マスター連携研究会に所属するヤンマーエネルギーシステム 企画部 企画グループ 大坪 啓二氏が登壇し、自身の基幹システムのマスターデータ連携の経験を語った。

ヤンマーエネルギーシステム 企画部 企画グループ 大坪 啓二氏 ヤンマーエネルギーシステム 企画部 企画グループ 大坪 啓二氏

 「過去、マスターデータは変更がない、あるいはほとんどない、という前提で基幹システムが作られていました。しかし、現在はライン変更や取引先変更などが頻繁に発生するようになってきています。このため、マスターデータの変更頻度も高まっているのですが、古い基幹システムでは、変更がないことを前提とした設計ですからマスターデータの変更履歴が追えないケースがほとんどです。この状況では、トランザクションの参照先が最新版のものだったのか、過去の情報だったのかが判別できません。また、部門ごとにマスターデータが乱立しており、それらの整合性の不備も見逃せない問題です」(大坪氏)。

 ヤンマーグループに所属するヤンマーエネルギーシステムでは、多くの基幹系業務システムがグループで共通化されているため、細かなカスタマイズが難しく、工夫を凝らして運用する場面が少なからずあるという。設計・生産・販売のおのおのが連携しておらず人間系で処理するケースが多いため、入力間違いや個々のマスターごとに入力タイミングが異なるため整合性が取れなくなる場合もあるという。

「業務知識と少しのITスキルで実現できる」生産管理システムと販売管理システムの連携

 同社が取り扱うガスヒートポンプ式エアコンは見込み生産で使用別に型式を持っており、合わせて20製品、250種程の仕様になる。「いままでは表計算ソフトを利用して担当者が入力作業を行い、そのシートを基にPSI会議で調整していました。しかし、手作業の入力ですから、最新の情報ですら作成するのに2日間もかかってしまいます。このため、会議の段階ではすでに情報が陳腐化しているのが大きな問題でした」(大坪氏)。

 在庫圧縮圧力が強まる中、従来は必要がなかった当月引き当ても実施しなくてはならなくなったため、手入力の仕組みの限界が見えてきたという。そこで、大坪氏はグループ全体で運用しているシステムは生かしたいが、新たな当月引き当てのニーズにも対応したい、と考え、新規システム構築ではなく、既存基幹システムから情報を取得する方法を思いついたという。

 「といっても大がかりなシステム改修ではなくて、私が手作業で既存のAS400から情報を受け取って、Webアプリケーションで操作・閲覧できるようにしたのです」(大坪氏)。

 大坪氏は独学で夜間に情報を取得するバッチ処理プログラムを作成、前日までの設計・生産・販売に関するデータをWebアプリケーションで閲覧できるようにしたという。これにより、直近1.5カ月分の生産見込みを自動化、個々の引き合いについては販売担当者や入力時期、引き合いの順位付けなども確認できるようになったそうだ。

 「実際に行っていることはちょっとした知識があれば実現できることですが、いままで2日がかりで入力していた情報が自動化され、また、営業側との情報連携もスムーズにいくようになりました。発注内容に対して、いつ誰がどのような追加要件を入力したかも一覧で分かるようになっています」(大坪氏)。

 同様の仕組みを、完全受注生産を取っている非常用発電機でも実現しているという。こちらはAS400のオーダーエントリシステムを利用しており、「従来はデータのハードコピーを比較して目視で変更を確認していた」ものが自動で確認できるようになったという。さらにプラスアルファの予想外の効果として「夜間バッチで当日確定分までを翌日に反映し、その履歴のみを確認できる仕組みのため、当日の誤入力などのムダなログ情報を排除できる」(大坪氏)利点も得られたそうだ。

 制約の多い条件の中でも業務知識と少しのITスキルで実現できる生産管理システムと販売管理システムの連携を実現している好例といえるかもしれない。

 「ただし、完全に私が手作業で構築したものなのでこの仕組みはメンテナンスや保守の面に課題があります」との注意も示したが、これについては社内で仕組みや内容を複数人で共有するなどでもある程度対処できる場合もある。大きな改修を待って動けないでいるよりも、まず見ること、そのために必要な仕組みを構築してみるのも1つの方法だろう。

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