群雄割拠の車載Liイオン電池(1/3 ページ)

ハイブリッド車や電気自動車など、電動システムを搭載する自動車の市場拡大に合わせて、新たな車載リチウムイオン電池の開発が加速している。本稿ではまず、車載リチウムイオン電池の開発/供給に関する業界動向をまとめる。その上で、国内電機メーカーが車載リチウムイオン電池の性能向上のために行っている取り組みを紹介する。

» 2011年01月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]

“合従連衡”がさらに複雑化、Tesla社が台風の目に

 現在、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動自動車に関する技術開発で最も注目されているのは、言うまでもなく、リチウム(Li)イオン電池であろう。

 従来、Liイオン電池は、携帯型電子機器の電力源として用いられていた。Liイオン電池の技術開発を主導し、現在高いシェアを持っているのも、ソニー、三洋電機、パナソニックなどの電機メーカーである。一方、自動車メーカーやティア1サプライヤの多くは、2008年初頭まで、車載2次電池としてLiイオン電池を用いることには慎重な見方を示しており、車載Liイオン電池の開発には注力していなかった。

 2008年後半以降になると、環境に対する世界的な意識の高まりやガソリン価格の高騰、加えてリーマンショックによる景気後退などもあり、自動車メーカーは“売れるエコカー”である電動自動車の開発に注力するようになった。これら新開発の電動自動車に用いる2次電池として注目を集めるようになったのがLiイオン電池である。そして、自動車メーカーやティア1サプライヤと電機メーカーをはじめとするLiイオン電池メーカーとの間で、車載Liイオン電池に関する供給契約や協業の発表が相次ぐようになった。

 

図1 車載Liイオン電池の開発/供給に関する企業間の関係 図1 車載Liイオン電池の開発/供給に関する企業間の関係 

図1に示したのは、車載Liイオン電池に関する自動車メーカー、ティア1サプライヤ、電池メーカーの相関図である。2010年に入り、企業間の“合従連衡(がっしょうれんこう)”はさらに複雑さを増している。

 現在、台風の目となっているのが、米国のEVベンチャー企業であるTesla Motors社だ。Tesla社は、2010年1月にパナソニックとEV用電池モジュールの共同開発を発表。2010年5月には、トヨタ自動車(以下、トヨタ)とEVの共同開発を行うことと、同社から出資を受けることを発表した。また、2010年11月にはパナソニックから出資を受けることが明らかになった。2010年11月に米カリフォルニア州で開催された自動車の展示会『LA Auto Show』では、Tesla社製の電動システムを搭載したEV「RAV4 EV」を、トヨタが公開している。

 こうした動きに先立ち、2009年5月にTesla社に出資していたドイツDaimler社は、電動自動車関連でTesla社以外の企業との間でさまざまな動きを見せている。2010年3月には、中国のLiイオン電池メーカーBYD社と、中国市場向けEVを共同開発するための合弁企業を設立した。2010年4月には、フランスRenault社−日産自動車連合との間で、業務提携と相互出資を行うことを決めた。この業務提携では、車載Liイオン電池を含めたEV開発も検討分野の1つとなっている。2010年9月には、トヨタに対してHEV関連技術の供与を申し入れたという報道があった。

 また、従来、電動自動車の開発に慎重な姿勢を見せていたスズキは、2010年5月にPHEVの実証実験を、2010年9月に電動バイクの実証実験を開始した。両車両とも、三洋電機製のLiイオン電池を採用している。

 2009年夏からEV「i-MiEV」を量産している三菱自動車は、EV用Liイオン電池調達の選択肢を増やす方向性を鮮明にしている。現在は、同社が15%、ジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)が51%、三菱商事が34%出資しているリチウムエナジー ジャパンからEV用Liイオン電池の供給を受けている。しかし、2010年7月には東芝と、2010年9月には韓国LG Chem社と、三菱自動車がEV用Liイオン電池を共同開発していることが明らかになった。

 2011年以降も、車載Liイオン電池を巡る各企業間の関係はさらに複雑さを増していくだろう。

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