連載
» 2011年02月08日 00時00分 UPDATE

現場の声からプロセス改善を深掘りする(7):改善する習慣の浸透と定着 (2/3)

[清水 祐樹 横河ディジタルコンピュータ株式会社,@IT MONOist]

改善活動自体を見えるようにする

 改善活動を組織に浸透させ継続させるためには、活動自体を見えるようにすることが、有効な手段の1つになります。

 はじめに、改善活動・改善効果を見える化することの目的について考えてみます。

目的1:改善の目標に対する効果の報告

 改善活動も組織のリソースを使用して実施している限りは、効果測定を行いスポンサー(大抵は上級管理者)に対して、状況を報告する義務があります。これにより、継続的な改善活動のリソースを確保してもらうことにつながります。

目的2:改善担当者、施策を実施する開発担当者などの、改善意識の維持、向上

 人は、良くないもの、悪いものが目の前にあると、自然と何とかしようとします。現在、自分たちのソフトウェア開発がどのような状況・位置にいるのか、その位置が見えるようになるだけで、改善に対する意識が向上します。

目的3:解決策の是正

 目標に対する改善の効果が思うように発揮されていない個所を特定し、解決策を是正することにより、目標達成に近づけます。

 改善活動を見える化することは、目標の達成状況を見える化することにつながります。ですので、目標の設定は繰り返しになりますが「大変重要」です。

 また、1つの解決すべき問題点に対して、複数の解決策が実施される場合があります。そのような場合は、解決すべき問題点(結果としての目標)、それぞれの解決策に対して見えるようにするための測定データを設定してください。

 そして、測定するデータとともに、測定の手段に関しても検討し準備してください。

 では参加者の皆さんは、“何を見えるようにするために、どのようなデータを測定している”のでしょうか。意見を伺ってみました。

   
  ・不具合発生率を見るために、変更量(規模)、不具合の密度(1000行の変更に対して何件の不具合が発生しているか)を測定する

・コストの削減状況を見るために、作業の工数、ソフトの再利用率を測定する

・後戻り件数の削減を見るために、サンプル試作の回数、変更内容の分類(数)

・不具合の検出状況を見るために、テスト件数当たりの不具合数、テスト時間当たりの不具合数
 
     



 このように、自分たちの目的・目標によって、どのようなデータを測定するかは、当然変わってきます。また、測定データは項目単体で見ていても状況を把握することはできません。データとデータの関係を分析することにより、見えてくることがあります。各測定データは規模と比較する場面が多くありますので、自分たちの成果物の規模情報を測定することは大変重要になってきます。

 さらに、不具合に関するデータの収集方法などについて、参加者の皆さんといろいろと議論を行いました。その中で、“不具合の解釈の仕方”が問題点として挙がりました。それは、発生した不具合の原因などを検討する際に、“主観が入り込み正確なデータが収集できなくなる”ことです。

 正しく改善状況を見えるようにするためには、測定するデータの意味合いをしっかりと定義しておかなければなりません。改善状況の見える化を実施する際も、測定データの意味合いを深く検討し、収集のルールを構築するようにしてください。

 改善活動を見えるようにするための最後に、見える化(測定)の注意点に関して確認してみます。

データの過剰収集

 本来の開発業務に大きく影響するような測定活動を行うことは、本末転倒です。欲しいデータと収集負荷のバランスをきちんと取るようにしましょう。

測定目的による障害

 測定の目標とデータの使用方法をきっちりと伝えていかなければなりません。それが誤解されると、正確なデータが集まらない可能性があります。工数、不具合数の収集などは、“評価が目的でない”ことをはっきりと伝えておかなければなりません。

測定のミスマッチ

 データ項目の意味や尺度が曖昧(あいまい)なままデータ収集を実施すると、データの一貫性を欠き正確なデータ収集と分析が行えません。不具合の数え方や、工数の付け方などのルールを明確にしておく必要があります。

プロセスとのミスマッチ

 不具合の対応工数の減少などを目的として測定を行うと、“簡単な不具合から手を付ける”ようになったり、レビューの指摘率向上などを目的として測定を行うと、“やたらとレビュー時間が増えてしまったり”といった問題が起きます。こうした事態にならないためには、やはり測定の目的とデータの使用方法、改善後の姿をきっちりと現場に説明し、理解を得ることが重要です。

 これらの注意点を考慮して、目的・目標に合わせて測定データを検討し、改善活動の見える化に取り組んでみてください。

 開発活動と同様に、データ測定、分析、フィードバックに関して、しっかりと計画策定を行い、それに従って実行し、見えてきた状況を定期的に改善活動の内容にフィードバックすることが、継続的に改善活動を実施するうえで、大変重要になってきます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.