車載インフォテインメントシステムとは?IVIシステムの標準化を目指す「GENIVI」【前編】(2/2 ページ)

» 2011年02月14日 00時00分 公開
[K.I.マヘーシ,@IT MONOist]
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IVIとの接続に用いられるインターフェイス

 冒頭で説明したとおり、車内環境にとどまらず、家庭/オフィスといった車外環境とのシームレスな接続や、ほかの外部機器との連携がIVIシステムの特長の1つです。そのため、将来的には、IVIシステムとの接続に用いられるインターフェイス(接続技術)は増加傾向にあるといわれています。

 ここでは、IVIシステムに現在使われている・今後使われていくであろうインターフェイスを紹介します。

[1]SDカードインターフェイス

 現在、SDカードインターフェイスに置き換わる特定の接続技術がないことから、今後もSDカードインターフェイスによる接続が使われていくものと考えられます。また、セキュアなデータ転送ができる(安全性が高い)点も将来的に使われていくであろうという理由の1つです。

 さらに、取り外し可能なフラッシュベースの記憶装置として、主にデジタルカメラやPDA、ポータブルミュージックプレーヤーなどの小型電子機器でなじみのあるSDメモリカード(Secure Digital Memory Card)は、小型で比較的使いやすく、低消費電力・低価格であるため、IVIシステムでの活用のしやすさもポイントとして挙げられます。

[2]USB

 USBによるIVIシステムへの接続は、標準の有線接続手段として今後も残っていくだろうと考えられます。ただし、現在、主に使用されているUSB 2.0から、約10倍の転送速度を持ち「Super Speed」といわれているUSB 3.0へとシフトしていくものと思われます。ちなみに、USBの代替技術としての最有力候補が無線技術です。将来的には無線技術がUSBに取って代わり、IVIシステムとの標準的な接続手段となるかもしれません。

[3]Bluetooth

 短期的に考えると、ほかの外部機器とヘッドユニット間における標準的な無線接続技術として、Bluetoothは今後も使われていくでしょう。しかし、長期的にはWi-Fiなどの別の無線接続技術が使われていくと考えられます。

[4]Wi-Fiアプリケーション

 Wi-Fiを使ったユースケースとして、以下4種類のアプリケーションによる接続が考えられます。

  • ホットスポットとの自動車の接続を行うアプリケーション
  • V2V(自動車と自動車)/V2R(自動車と道路)との接続を行うアプリケーション
    特に、安全性と交通効率を考慮したアプリケーションが将来的に増加傾向にある。
  • 自動車をホットスポットとするアプリケーション
    インターネットに接続できる無線LANアクセスポイント(ホットスポット)として自動車を使う場合を想定。
  • ほかの外部機器(スマートフォンなど)とヘッドユニットとの標準接続としてWi-Fiを使うアプリケーション
    「[3]Bluetooth」でも述べましたが、電子機器とヘッドユニット間の無線接続技術(標準接続プロトコル)として、長期的にはWi-Fiなどの無線接続技術が使われていくといわれています。Bluetoothが提供するすべてのユースケースをWi-Fiでサポートできるわけではありませんが、現在、Wi-Fi/Wi-Fi Directなどの技術が評価されつつあります。

[5]モバイルブロードバンド(LTEとWiMAX)

 将来的にはモバイルブロードバンドとしてWiMAXの代わりに、より通信速度の速いLTEが主流になる可能性が高いでしょう。

[6]ほかの外部機器とヘッドユニットとの接続 ― ターミナルモード

 ターミナルモードアプリケーション向けには、短期的に有線と無線の標準接続としてUSBとBluetoothが使われると思います。しかし、将来的には小電力無線通信(RFID)技術である近距離無線通信(NFC)がターミナルモードアプリケーション向けの接続技術として使われるでしょう。

[7]IVIシリアル通信/バスプロトコル

 CAN、LIN、MOST、FlexRayおよびイーサネットは、将来のIVIシステムのために必要なプロトコルになるでしょう。特に、次世代車載ネットワークとして注目されているFlexRayは、自動車の安全性、利便性、快適性を実現する技術として期待されています。

標準化が進む自動車業界とIVIシステム

 現在、自動車業界はシステムの複雑化に対応すべく、標準化・協業化を進めていく傾向にあります。こうした標準化活動および協業活動により、増大するソフトウェア開発費用の削減や電子システムの信頼性と品質の向上などを業界全体で目指しています。

 その中のグローバルな標準化団体として、車載ソフトウェアの共通化を目指す「AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)」が挙げられます。また、日本国内の車載技術の標準仕様を作ることを目的に設立された「JasPar(Japan Automotive Software Platform and Architecture)」も自動車用の電子機器のソフトウェア基盤とネットワーク通信の標準化・共通化を目指しています。当初、JasParはFlexRayにフォーカスして活動を開始しましたが、現在はそれ以外の技術の標準化・共通化も行っています。

関連リンク:
AUTOSAR
JasPar

 一方、本特集の主役であるIVIシステムはというと、これまで自動車メーカーごとに異なったハードウェア/ソフトウェアプラットフォーム上で独自開発が行われてきました。また、それと同時に複雑化するIVIシステムの各機能間の動作確認・テスト(品質確保)に多大な時間とコストを投入してきました。こうした流れは結果的に、自動車メーカー単独でのシステムアップデートや機能追加を困難なものとし、どうにも立ち行かない状態を作り上げていきました。

 この問題に対し、共通・標準なハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャとしてのオープンなインフォテインメントプラットフォームの必要性が強く求められはじめました。

 オープンで標準化されたインフォテインメントプラットフォームがあれば、開発者や自動車メーカーは標準化された仕様の下、自由にIVIシステムを開発できるようになり、何世代にもわたって製品の機能拡張を実現できます。また、OS、ミドルウェアのほか、アプリケーションレベルにまで再利用を促すことで、開発期間の短縮、高いコストパフォーマンス、アップデート/アップグレードの簡略化といったさまざまなメリットが得られ、拡張性・柔軟性に優れたIVIシステムの開発が可能になります。



 次回後編では、2009年3月、IVIシステム向けにオープンなインフォテインメントプラットフォームの幅広い採用を目指し発足された非営利団体「GENIVI Alliance」と、同団体が開発した「GENIVIプラットフォーム」について詳しく紹介します。(後編へ続く)


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