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» 2011年03月24日 17時00分 UPDATE

スマートグリッド:計画停電で明らかになった、電力ネットワークの課題と対策

東北関東大震災で原子力発電所をはじめとして多数の発電所が停止したことで、東京電力は大規模な計画停電に踏み切った。電力ピーク需要を抑えるために、スマートグリッド構築を検討すべきだろう。

[石田雅也,@IT MONOist]

スマートグリッドの構築が日本でも急務

 3月11日金曜日午後に発生した大震災により、2つの原子力発電所と7つの火力発電所が停止して電力供給が止まり、関東全域をカバーする東京電力の電力供給量が大幅に減少した。それまで5200万キロワットあった電力供給量が、一気に3100万キロワットまで低下。通常3月には4000万キロワット程度の電力需要があり、それに対応できないという前代未聞の事態を迎えた。

 週末には電力需要が減るものの、週明け14日月曜日からは抜本的な対策をとることが不可避となり、東京電力は日本で初めての「計画停電」に踏み切った。計画停電の実施においては、運用面を含めてさまざまな問題点が露出したが、同時に日本の電力ネットワークの先進性と将来に向けた大きな課題を示すことにもなった。

「スマートさ」が足りなかった

 いまや世界各地でスマートグリッドの重要性が認識され、米国を先頭に導入計画が進むなか、日本の電力ネットワークは安定して稼働しており、すぐにスマートグリッドへ移行する必要はない、との声が少なくなかった。東京電力の2009年のデータによると、自然災害やメンテナンスを除く事故による停電の回数は、1家庭あたり年間で0.05回、つまり20年に1回の割合しかない。年間の停電時間も平均2分という短さである。

 しかし今回の計画停電は、現在の電力ネットワークの先進性を示す一方で、日本におけるスマートグリッドの必要性を証明する格好になった。大震災のような不測の事態に対応できるだけの柔軟性、スマートさに欠けていたからである。

 東京電力が実施中(3月23日現在)の計画停電は、サービスエリアを5つのグループに分け、時間帯ごとに輪番で停電を進めていく方式をとっている。実際にはエリア内の約1600か所にある変電所ごとに電力供給を調整することが可能で、市や区などの自治体レベルよりもさらに細かい地域単位で停電を制御している。この変電所単位の制御により、鉄道への電力供給を優先することもできるようだ。

 日本の電力ネットワークは、発電所からの電力を集約して、変電所まではコンピュータシステムで制御している。しかしそこから先の家庭や学校、企業や工場・鉄道など、電力が使われる場所までは電気を流すか止めることしかできない。

 今後は電力を利用する側にも通信機能や監視機能を内蔵したスマートメーターが設置されていく。電力ネットワーク全体がコンピュータシステムで制御できるスマートグリッドへ進化すれば、個々の利用状況に応じた最適な電力供給が可能になり、最大電力量を抑えることができる。計画停電は不要になり、発電所の増強も必要なくなるだろう。スマートグリッドを構築すれば、自然災害にも強く、変化に柔軟に対応できる電力ネットワークを形成できる。

火力と原子力への依存率は8割超

 かねてから指摘されていた原子力発電の危険性も改めて見せつけられた。化石燃料に頼る火力発電と合わせて、旧来型の発電方法に依存する体制そのものを、早急かつ根本的に見直さなくてはならない。

 日本では地域別に10社の電力会社があり、電力供給市場をほぼ独占している(図1)。発電方式別の電力供給能力を見ると、火力発電の割合が最も大きくて60%、次いで原子力が23%で、両者を合わせると8割を超える。残りの17%が水力である(図2)。最も多くの電力を供給している東京電力でも同様で、1年前の2010年3月の時点で火力発電が59%、原子力が27%、水力が14%、という比率になっている。

図1 電力会社10社の発電規模 図1:電力会社10社の発電規模(2010年3月時点、東京電力のまとめによる)
図2 発電方式別の電力供給能力 図2:発電方式別の電力供給能力(単位:万kW、2010年3月時点、東京電力のまとめによる)

 このような電力会社による火力発電と原子力発電に依存したエネルギーインフラからの脱却が急務になってきた。日本は国土の狭さもあり、自然環境と協調できる再生可能エネルギーへの取り組みは、諸外国と比べて後れをとっている。太陽光発電など再生可能エネルギーの利用拡大に、国や地方自治体、企業、一般家庭を含めて、今から全力で取り組む必要がある。

電気自動車も電力供給源に

 一方で技術革新による省電力化の動きは着実に進んでいる。半導体をはじめとするエレクトロニクス技術の進歩に伴って、電気を使うさまざまな機器に消費電力を抑える技術が組み込まれつつある。家庭内や交通信号にも広く使われるようになったLED照明はその典型である。

 ビルや工場では、電力などのエネルギー使用量をコンピュータシステムで最適化するEMS(エネルギー管理システム)が普及期を迎えている。ビル向けのBEMS(ビルディングEMS)や工場向けのFEMS(ファクトリーEMS)のほか、家庭向けにも今後スマートメーターの普及とともにHEMS(ホームEMS)が拡大していく道筋は見えている。

 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の分野でも、日本の技術は世界をリードしている。EVやPHEVは電力を利用するだけではなく、電力を蓄える役割も担うことができる。電力需要の少ない夜間にEVやPHEVに電力を蓄えておき、電力需要がピークに達する夕方から夜にかけて、その電力を家庭で使うことが可能になる。電力会社からの供給量の変動にも適応しやすくなる。

 こうした各分野の取り組みを急ピッチで進めていけば、10年後の2021年までには、日本が世界で最も先進的なエネルギーインフラを持つ国に生まれ変わっているはずだ。

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