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» 2011年03月25日 09時13分 UPDATE

マイクロモノづくり〜町工場の最終製品開発〜(8):金型屋さんがSNSで協力者を仕切って商品開発する (1/3)

日本の金型屋さんが製品開発を開始。外部の人たちを巻き込み、かゆいところに手が届く製品を開発しようと奮闘する

[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]

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日本の金型屋さんが最終製品を作り出した

 マイクロモノづくりを成立させるためには、設備を持って製造する会社と、製品アイデアを持つ方とのコラボレーションが必須です。今回は、プラスチック射出成形金型製造を行う、いわゆる“金型屋さん”からのアプローチで、マイクロモノづくりが成立した事例の紹介です。

 モルテック社の代表取締役 松井宏一氏は、二代目社長として入社後、現場経験を積み営業をする中で、インターネットに出会います。その後松井氏は、製造業界では有名なミナロの緑川賢司社長が講演するセミナーに参加して、その可能性を感じ取り、自らWebサイトを立ち上げ、ブログも書くようになりました。

ALT モルテック 代表取締役 松井宏一氏

 松井氏はインターネットで自社のことを情報発信していく中で、従来の取引先だけではない方々との引き合いが来るようになったといいます。現在は、従来の客先からの売り上げが落ちた分を補える新規取引先に巡り合うことができています。

 さらに、同氏の地元、川崎市の中小企業支援の仕組みをうまく利用することで、外部のデザイナーとのネットワークを築きました。

 このように松井氏は、異なる業種の方々との出会いを積極的に経験することで、マイクロモノづくりを実践するに至りました。話をうかがえば、いろいろな人と出会うことが好きということで、インターネットも楽しいということでした。

Twitterを活用したモノづくり

 2009年の終わり、松井氏は川崎市の方に依頼されて、専修大学で中小製造業について講演する機会がありました。そこで、経営学や商学部といった文系の学生たちに、自社で作ったアクセサリーを見せながら話をしたところ、学生たちに大いに“ウケた”とのことです。社長自身は、理系でもない文系の学生にモノづくりの話が、ここまで響くとは思わなかったといいます。

ALT 学生たちが開発した商品

 その後、専修大学の教授と話をしていく中で、「インターンシッププログラムとして、学生たちと一緒にモノづくりをするようなことができないか」というアイデアが生まれ、2010年にそれを実施したとのことです。その頃から使い始めたTwitterを活用して学生たちと情報交換しながら、商品企画を進め、デザインをし、金型も作って製品を生み出しました。そして現在は、作った製品を販売する段階にあるとのことです。

 「TwitterやFacebookなどのソーシャルメディア(SNS、ソーシャルネットワーキングサービス)を活用したモノづくりというのは、新しい試みだ」――ということで、メディアの注目を浴びましたが、現実的には「かなり苦労した」とのことです。最初の3カ月ぐらいは、いわゆる“飲みニケーション”で、学生たちとフェーストゥーフェースで、モノづくりに掛ける思いの共有を図りました。目指すところを共有しなければ、ソーシャルメディアを使ったコミュニケーションが取れないからです。

 学生たちのアイデアから生み出されたサンプルに対して細やかな意見が集まり、すぐに金型も修正して、イメージ通りのものを産み出していく。このスピード感が、町工場の持ち味であり、強みです。

 社員は給料をもらう立場のため、社長の指示に対し、完全に納得してはいなくても従いますが、学生はそうではありません。このプログラムやプロジェクトに取り組んでも学生たちは単位が取れないので、「興味がなくなった」といって活動をやめてもペナルティがありません。

yk_enmono08_03.jpg

 チームを仕切る松井氏は、学生たちのモチベーション維持にかなり腐心したといいます。しかしその苦労が逆に、自身の経験値を上げ、マネジメント能力も非常に向上したということでした。

 マイクロモノづくりをすることで、こういう経験値が向上するというのは、そう言われてみればそうなのですが……、私どもも想定していなかった効果です。

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