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» 2011年04月11日 00時10分 UPDATE

電気自動車:電気自動車にはクラウドが不可欠、Microsoftとトヨタがサービス構築で提携

自動車へ移動体通信を使ってリアルタイムに情報を提供するテレマティクスサービス−。クラウド「Azure」を利用することでサービスの立ち上がりが早くなり、スマートグリッドに不可欠な家庭の電力エネルギー管理システムなどとの連携もスムーズになる。Microsoftとトヨタの提携の狙いは何か。

[畑陽一郎,@IT MONOist]

 Microsoftとトヨタ自動車は2011年4月7日(日本時間)、トヨタ自動車の次世代テレマティクス向けグローバルクラウドプラットフォームの構築に関して戦略的提携に合意した。Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏とトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏が米国で提携内容を発表後、4月8日には日本の報道機関向けに、日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏とトヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏が詳細を説明した(図1)。

 提携内容の骨子は2つある。まず、2012年にトヨタ自動車が発売予定の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)に搭載するテレマティクスサービスに、Microsoftのクラウドプラットフォームである「Windows Azure Platform(Azure)」を採用する。次に、2015年まで両社が協力して独自のグローバルクラウドプラットフォームの構築を続けることだ。

ALT 図1 トヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏(左)と日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏(右)

 2000年に設立された顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービスへ両社が2011年7月までに合計10億円を出資する。トヨタメディアサービスは、日本マイクロソフトの技術支援を受けながら、2012年までにグローバルクラウドプラットフォームを構築する。


Azure採用の狙いはサービスのスピード展開

 テレマティクスとは移動体(車)と携帯電話などの移動体通信システムを組み合わせて、リアルタイムな情報サービスを提供する仕組みである。トヨタ自動車はこれまでもMicrosoftの開発ツールなどを使って、顧客向けの情報システムを構築してきた。

 トヨタ自動車は早くも1998年には、「Microsoft Visual Basic 6.0/ASP」を開発ツールとして利用し、設置型の情報端末「GAZOO」を使った情報提供サービスを開始している。2002年には「.NET Framework」を利用した車載型のテレマティクスサービス「G-BOOK」を発表し、2009年には北米市場と中国市場にも導入済みである。2010年10月にはエネルギー管理システムである「トヨタ スマートセンター」を開発し、青森県上北郡六ヶ所村で実証実験を開始している。トヨタ スマートセンターの目的は、HEMS(Home Energy Management System)対応のスマートハウスとEV、PHEVを相互に連携させることで、都市全体のCO2排出量と居住者の費用負担を最小化するよう、車両の充電や住宅内の電力消費を調整することだ。

ALT 図2 Azureを使って提供している「通れた道マップ」 G-BOOK搭載車両から得たデータをAzure上でMicrosoftの地図サービス「bing」と結合し、通行できる道をスマートフォンなどから閲覧できるようにした。

 トヨタ自動車は提携発表直前に、Azureを使ったテレマティクスサービスを開発済みである。「通れた道マップ」というサービスだ(図2)。2011年3月に起こった東日本大震災で道路が寸断された際、G-BOOK搭載車両から得たデータをG-BOOKデータセンターでとりまとめ、Azure上にアップロード後、Microsoftの地図サービス「bing」とマッシュアップして、スマートフォンなどから閲覧できるようにした。開発期間は1日と短い。

 トヨタ自動車はこれまでG-BOOKサービスを展開するにあたり、サービス地域に自社のデータセンターを設置してきた。今回、Azureを採用した理由は、テレマティクスサービスを各国市場ごとに素早く展開するためだ。「中国市場へのG-BOOKサービスの展開は日本市場向けからかなり遅れた。これは当社が自らデータセンターを設置しなければならなかったことも理由の1つである。Azureを使えば、EVやPHEVの展開に応じて、地域ごとにテレマティクスサービスを即座に実施できる」(同社)。日米中で展開しているG-BOOKサービスは今後、トヨタ自動車独自のデータセンターから、Azureに統合、移行する。

電力管理がサービスの中核

 2012年に提供を開始するテレマティクスサービスでは、EVやPHEVでの必要性が高い機能を充実させる。全ての機能をスマートフォンなどを用いて遠隔表示、操作できるようにするという。「所有する車の電池残量表示や充電開始時間の設定、充電中のエアコン起動の他、電池残量から計算した到達可能距離や可能距離内に存在する充電スポットなどを表示する」(友山氏)。さらに、運転者の癖を把握して、走り方を推薦するエコアドバイス機能などを提供する。

 トヨタ自動車は、PHEVを充電した場合の家庭の電力使用量を予測している(図3)。PHEVはガソリンエンジンを備えているので、電池容量は20km走行できる容量にとどまっており、EVよりも少ない。それでも導入家庭の消費電力の30%以上を占めるという。各家庭がお互いに協調せずに充電すると、系統電力の容量を超えてしまう可能性がある。そこで、トヨタ スマートセンターの実証実験では太陽電池や二次電池(蓄電池)と組み合わせて、系統電力への負荷が少なくなる仕組み作りを進めている。「震災では、プリウスの電力を使って炊飯器を動かした例があると聞いている。自宅で発電した電力をEVやPHEVに移動する『H2V(Home to Vehicle)』だけでなく、EVなどから電力を取り出す『V2H』もAzure上のサービスとして視野にある」(友山氏)。

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ALT 図3 充電が系統に与える影響は大きい 比較的電池容量の小さなPHEVでも、充電に要する電力は、導入家庭の消費電力の30%に達する。電力系統に与える影響を小さくするために、トヨタ スマートセンターを使う必要があるという。

 なお、今回の提携は排他的なものではない。「当社はトヨタ自動車用にAzureをチューンナップすることは無く、グローバル基盤として他の自動車メーカーに提供することもありうる」(日本マイクロソフトの樋口氏)。「当社のアプリケーションは他の自動車メーカーから要請があれば、提供可能だ。低炭素社会や省エネルギーの実現に役立つからだ」(トヨタ自動車の友山氏)。

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