ゼロから分かるREACH規制のウラ側いまさら聞けないモノづくりの基本ルール(3/3 ページ)

» 2011年05月10日 11時00分 公開
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EUの化学物質規制の動向

 EUは、こうした化学物質規制の国際的な動向に敏感に反応してきました。

 例えば、上記のライフサイクル思考は、2001年2月7日に欧州委員会が採択した包括的製品政策に関する政策提案で詳しく説明されています。また、欧州委員会は、2003年6月に包括的製品政策に関する通達を採択しています。この通達は、製品のライフサイクルを通じた継続的環境改善の枠組みを構築することを提案しています。

 また、上記のように既存化学物質による環境への悪影響が国際的に懸念されていたにもかかわらず、欧州の従来の化学物質規制では既存化学物質への対応が十分でなかったことが、REACH導入の大きな契機の1つになりました。

 例えば、欧州委員会が2001年2月13日に公表した「将来の化学物質政策の戦略白書」は、既存の化学物質規制のもとでは既存化学物質の多くが規制の対象外になっていることを指摘しました。さらに、同白書は、産業界に化学物質のデータ収集およびリスク評価の責任を負わせること、製品のサプライチェーンの下流にいる者にもデータ提供の責任を負わせることなどを提案しました。

 このように、化学物質規制の国際的な動向と歩調をあわせて、従来の化学物質規制の不十分な点を補い化学物質による環境への悪影響を効果的に防ぐため、REACHが制定されたということができます。

 本稿では、REACH規制そのものが出来上がる背景を紹介しました。実際の規制は非常に多岐にわたり、実務ではその時々で注意すべき動向もあります。最新動向のフォローや業界団体ごとの対策など、情報収集は積極的かつ継続的に行っていく必要があります。


筆者紹介

浦邊卓次郎(うらべ たくじろう)
スクワイヤ・サンダース・三木・吉田外国法共同事業法律特許事務所
弁護士、ニューヨーク州弁護士
ベンチャーキャピタル、M&Aを含む企業法務全般を専門分野として、業種は主に電気・通信、テクノロジー、ソフトウェアなどを取り扱う。事例として、外国企業の日本における無線事業の開設と実施に関する法的アドバイス、対日投資案件におけるコーポレートガバナンスおよびコンプライアンスなどに携わる。
2006年に渡米しLL.M.(Master of Laws:法学修士)およびニューヨーク州にて米国弁護士免許を取得。その後1年間のロサンゼルスオフィスでの勤務を経験し、2008年夏に東京オフィス勤務。第一東京弁護士会所属。



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