原発事故から学ぶインタラクションギャップ甚さんの「想定内だぜぃ!トラブルは」(3)(2/3 ページ)

» 2011年05月13日 10時30分 公開

バラツキを理解する

 それでは、図2を見ながら「バラツキ」を理解しましましょう。

 福島第1原発には、1〜6号機が設置されています。そのうち、特に不具合を起こしているのは、1〜4号機です。なぜこのような事態になったのか、その原因を1〜4号機でくくり、よくない点や原因を追究します。実は、この考え方は基本形となりますが、あくまで初歩です。職人はちょっと異なります。

図2 図2 特性要因図はバラツキを探求する

 まずAとBで2つのグループに分類します。福島第一原発におけるAチームは大きな不具合が未発の5、6号機であり、Bチームは現在、大きな不具合を起こしている1〜4号機とします。いきなりよくない点や原因を探求するのではなく、AとBの差、つまり、「バラツキ」を徹底追究します。

 一般的な探求法では、Aチーム(大きな不具合未発チーム)を切り捨ててしまうのに対し、バラツキの探求は、常にAチームも調査の対象として継続調査します。

 次が、「匠の道具(2)」の神髄です。

  1. インタラクションギャップとは、複数以上の要因間にトラブルが潜在することを意味する。
  2. 引き出した瞬間、トラブルは「想定内」となる。

 良君が言うように、少々理解が困難ですので、もう一度、図1の特性要因図を見ながら、理解しましょう。

 「インタラクションギャップ」とは、それぞれの単語を辞書で調べると、以下のような説明がありました。

  • インタラクション:interaction、複数の要因が互いに影響を及ぼし合うこと。相互に作用すること。
  • ギャップ:gap、すき間や食い違いのこと。
図1(本記事1ページ目にも掲載) 図1 ××変更に関する特性要因図とインタラクションギャップ(出典『ついてきなぁ! 失われた「匠のワザ」で設計トラブルを撲滅する』日刊工業新聞社刊)
良

洗濯用の洗剤とトイレ用洗剤には、その容器に「混ぜるな危険!」の表示がありますね。どちらも悪くないのに、混ぜると「塩素ガス」が発生して人命に関わります。これは、即、理解できる事例ですね。


甚

さすがに富士山麓大学の院卒じゃねぇかい。浅い理解なら早い! そんじゃよぉ、図1の赤い斜線部を見てみろ!


 ソフトウェア技術者を代表に、全ての技術者が悩むインタラクションギャップがそこにあります。これを……、

   マンマシン(Man/Machine)インタフェース

と言います。

 あまりにも有名なインタラクションギャップです。

良

だいぶ、すっきりしてきました。意外と理解は容易だったと思います。でも、甚さんがいつも言っているのは、「やさしいものほど訓練が必要である」と……。


甚

全く、何度もうれしいこと言ってくれるじゃねぇかい。あん? そんじゃよぉ、過去の悲しいトラブルを分析しようじゃねぇかい。その前にテストするぞ!


良笑

えっ、また突然テストですか? 超カンタンですよ。「糖分」「塩分」「脂肪分」、ルンルン♪ ルンルン♪


甚怒

フンガーッ! 余分三兄弟のことを聞いてんじゃねぇよっ!! オメェ、また酔っぱらっているのか? ザけるんじゃんねぇ!


良泣

ヒィィ! すみません……。


甚

特性要因図は、「4Mで切る」……、「匠のワザ」では、これを推奨しているがよぉ、その「4M」を言ってみろ!


良

超カンタンですよ。4Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)をいいます。これを特性要因図の切り口にしています。


甚

イッツ、パーフェクトゥ!(It’s perfect!) 最近、どうしたんだぁ。大震災は悲しいが、オメェら若造がやたら活性化したなぁ! オジンのオレサマとしては、超ウレシイってもんよ。


良真剣

そうなんです。あの大災害で、「このままじゃ、いけない!」って、僕みたいなノーテンキな技術者も気が付いたんです。期待されているってことを!


甚笑

ンー! イッツソー、ワンダホー! (It’s so wonderful!) そんじゃ、「インタラクションギャップ」を、事例でもって徹底理解しようぜぃ!


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