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» 2011年05月20日 12時45分 UPDATE

3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(4):3次元データと有事の関係を再考してみた (1/2)

 3次元データもシミュレーションも、利用領域を限定するのはもったいない。身の回りのさまざまな有事で役立てないか?

[水野操 ニコラデザイン・アンド・テクノロジー/3D-GAN,@IT MONOist]

 本日は頑張って(!?)3次元と「有事」の間に関係を見つけてみようと思います。故に少々とりとめのない、つれづれなる話に今回はご容赦を。

 東日本大震災が起きてから、自分の仕事や生活についていろいろと考えた人も決して少なくないのではないでしょうか。特に仕事に関していえば、自分の仕事は有事の世の中で一体どんなことに役立つのだろうか、ということ。あるいは、その手前の段階の話として、自分の業務への有事への対策というものがきちんとできているかどうか、ということです。

 そもそも「非常時への対応」とはどのようなことでしょうか。災害が起きたときにいかに直接的な人的、物的被害を最小化し、そこから業務を再開にまで持っていけるのか、あるいはその予防を考えるということ。さらには、その後もいわゆる平時に戻るまで、会社としては、限られた経営資源の中で、事業として継続していけるだけの最低限の経営を続けていかなければなりません。つまり災害のダメージを最小にし、いち早く立ち直り、経営を続けるためのプランが必要なわけですね。

 特に「経営を続けていく」ということを考えたときにフォーカスを絞った「Business Continuity Plan(BCP)」という言葉も、いままで知らなかった方が耳にされる機会も増えてきたのではないでしょうか。

 大手企業を中心に、まさにこのようなことへの計画を立てている会社もあると思います。しかし、自動車業界のサプライチェーンに関して最近よく報じられているように、実際には元の生産量に戻るのには時間がかかりそうです。ましてや、日頃から考えていなかったら、それこそ「想定外」のことが起きて、大慌てになってしまいます。さて、有事への対応とはどういうことか。

 「平時において有事への準備を図る」とは、そのプランを単に作っただけでは机上の空論になってしまいます。つい先日、私が師範や師範代を務めさせてもらっているWeb上の情報編集学校「イシス編集学校」の先期の修了式がありました。その修了式において、松岡正剛校長が言った言葉が心に残っています。それは、「いかに平時の中に、有事を作っていくのか」ということでした。よくよく考えれば、この非常時の訓練がきちんとできている限りにおいては、少なくともその範囲内で効果的に行動できます。今回の震災でも生存率が高かったのは学校だったようです。「平時において有事の行動がたたき込まれている」から慌ててしまうような状況でも落ち着いた行動ができるわけです。

 飛行機のパイロットも、基本的な操縦訓練の後は、とにかくEmergency(緊急事態)の訓練が多いのです。筆者も、かつて飛行訓練をやっていたとき、気分良く飛行機で飛んでいた、と思ったら、教官に突然スロットルをアイドルに絞られる。つまりは、Emergencyを常に想定してシミュレーションを行う。いかに有事のオペレーションを、通常の行動のごとく行えるようにするのか、ということですね。

 常に自分の日常の中に有事が入り込んできており、それがいざというときに役に立つのです。「あることが起きたときに何をしなければいけないのか」。その次には「どのような行動が続くのか」「どのようなことを考える必要があるのか」。さらには、「どのようなことを予測すべきなのか」。

 有事には定型的な行動ではなく、状況に応じた適切な判断と行動が求められます。そのような有事が平時に持ち込まれたときに名付けられる言葉が、一般には「シミュレーション」と呼ばれるのです。

日常の中にシミュレーションを取り入れる

 シミュレーションという言葉は、技術に関わる人間にはおなじみだし、一般にも普及している言葉です。ちなみにWikipediaによれば、シミュレーションとは「実験・訓練を目的とし、複雑な事象・システムを定式化して行う模擬実験をいう」と説明されています。まさに、製品開発の中でもさまざまな形で日常的に行われているものですね。特にこのうち、実験と呼ばれているものについては昔から行われていたし、いまも頻繁に行われています。どんなに精緻(せいち)に、注意深く作ったとしても、最後は実際の物体を作ってテストしてみないと本当に大丈夫なのかどうかは、よく分かりません。

 一時期、ハイエンドCADが特に脚光を浴びていた頃、3次元CADやPLMの業界では「試作レス」という言葉が、よく飛び交っていました。業界にずっと関わってきた身として、ふと思い出す言葉の1つでもあります。3次元で設計することのメリットを強調するためのフレーズ、といえばその通りですが、要するに「フル3次元で開発を進めれば、試作なしに一発でうまくいく」と言いたかったわけです。しかし、現実にはそんなことを言っているベンダーの当人たちだって、一度も試作されたことのない自動車には乗りたくないだろうし、飛行機にも乗りたくない……。つまり、それだけ実物の重みがあるわけですね。だから、やっぱりリアルなシミュレーションは欠かせないのです。

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