独自品から標準品まで、“世界と勝負できる”DMPの先進グラフィックスIP【ESEC2011レポート】ディジタルメディアプロフェッショナル

先日行われた「第14回 組込みシステム開発技術展(ESEC2011)」において、ひときわ存在感を示していたのがグラフィックス専門の国内IPベンダー、ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)だ。ニンテンドー3DSにIPコア製品が採用されるなど、その技術力は高く評価されている。本稿では、ESEC2011における展示・デモ内容をレポートし、DMPが手掛けるグラフィックスIPの魅力に迫る。

» 2011年05月31日 10時00分 公開
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ハードの力を示すDMP MAESTROテクノロジー

 ディジタルメディアプロフェッショナル(以下、DMP)のESEC2011ブースでまず目を引いたのは、OpenGL ES1.1を独自拡張した3DグラフィックスIPコア「PICA200」だった。PICA200は、任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」に搭載されたことで一躍有名になった国産IPコアで、GPUで一般的なプログラマブルシェーダの定番処理をハードウェア化し、リソースの限られた組み込み機器でも豊かな3Dグラフィックスを高性能に描画することができる。ここに、同社が長年培ってきた高度な半導体設計技術と先進的なグラフィックス描画アルゴリズム開発技術の融合から誕生した「MAESTROテクノロジー」が生かされているのだ。

ESEC2011に出展したDMP ESEC2011に出展したDMP。見応えのある展示・デモを披露し、来場者の注目を集めていた

 DMPブースでは、ニンテンドー3DS上で専用のデモコンテンツを実行し、ハイエンドPC上で実行するのと遜色ない3Dグラフィックスを訴求していたが、実際、携帯ゲーム機で実行している映像とは思えない程の高い質感とスムーズな3Dグラフィックスを実現していた。また、「シャドウ」「フラグメント単位のライティング」「サブディビジョンプリミティブ」など、MAESTROテクノロジーの主要機能を画面操作でオン/オフし、それぞれの効果を確かめることができた。例えば、シャドウ機能では、輪郭部をボカす“ソフトシャドウ”、物体が自らに影を落とす“セルフシャドウ”の効果がハッキリとうかがえた。

PICA200 リアルタイム3Dデモ(1)PICA200 リアルタイム3Dデモ(2) ニンテンドー3DS搭載 「PICA200」リアルタイム3Dデモ

アプリケーション広がるPICA200シリーズ

 PICA200のアプリケーションを広げるため、DMPは派生製品の訴求にも力を入れていた。その1つがFPGA向けの「PICA200 for FPGA」だ。FPGA向けの本格的な3DグラフィックスIPコアは世界的に珍しく、FPGAアプリケーションである放送機器、航空宇宙機器などでPICA200の採用が実際に始まっているという。その他、PICA200からMAESTROテクノロジーを省いた標準的な「PICA200 Lite」もある。3Dインタフェースのニーズが高まるコンシューマ機器で引き合いがあり、2011〜2012年にかけて搭載製品が出荷される見通しだ。

 また、PICA200を実装したグラフィックスLSI「NV7」搭載のGPUボードと、Via Technologies社のx86系組み込みCPUボード「EPIAシリーズ」を組み合わせたシステムも展示されていた。「NV7は従来、アミューズメント機器で多用されていたが、Windowsが動作するx86系CPUボードと組み合わせることにより、アーケードゲームやデジタルサイネージの分野を狙っていく」(同社)という。組み込み機器でもリッチなインタフェースが求められる現在、PICA200の適用範囲はさらに広がりそうだ。

「PICA200」によるリアルタイム3Dグラフィックスデモ 「PICA200」によるリアルタイム3Dグラフィックスデモ。PICA200を実装したグラフィックスLSI「NV7」を搭載したGPUボードと、Via Technologies社のx86系組み込みCPUボード「EPIAシリーズ」を組み合わせたシステム

処理性能の高さで標準IPコアでも差別化

 DMPがPICA200シリーズと並行して展開する、標準2D/3DグラフィックスIPコア「SMAPHシリーズ」も標準品ながら高い競争力があるようだ。

 特に目立っていたのが、Adobe Flash LiteやSVGコンテンツの描画を高速化する、OpenVG 1.1対応の2DベクターグラフィックスIPコア「SMAPH-F」である。「ベクターグラフィックス処理をCPUに替わってSMAPH-Fに任せると、処理性能は数十倍になる。これは世界でもトップクラスという自負がある」(同社)。

 SMAPH-Fの処理性能の高さは、大手セットメーカー、半導体ベンダーに採用されている点からもがうかがえた。実際、DMPブースでは、大手車載機器メーカーのSoC上で、Flash Liteアプリケーションを実演。既にチップ量産に向けた検証は済んでいるとのことで、間もなく市場投入されそうな様子だった。さらに、ルネサス エレクトロニクスが2010年末に発表した最新のモバイル機器向けアプリケーションプロセッサ「EMMA Mobile EV0」もSMAPH-F採用SoCとして紹介されており、Cover Flowや地図コンテンツがスムーズに動くデモアプリケーションを披露していた。

OpenGL ES2.0対応IPコアで将来へのパスを用意

 ハイブリッド型グラフィックスIPコア「SMAPH-H」も興味深かった。“1つのコアで、3Dグラフィックスと2Dベクターグラフィックスを両方実装したい”というニーズの高まりに応じて、PICA200 LiteとSMAPH-Fを組み合わせたものだ。「もともとSMAPH-Fは、PICA200 Liteの回路を踏襲しながらOpenVGに対応している。そのためハイブリッド化しやすかった」(同社)。

 そして、将来の有望株が、国内で初めてOpenGL ES2.0に対応した3DグラフィックスIPコア「SMAPH-S」だ。ブース内では、東京エレクトロン デバイス製FPGAボード上のXilinkx Virtex-6にSMAPH-Sを実装。ARM Cortex-A9 MPCore評価ボードと組み合わせ、ベンチマークソフトでおなじみの米Futuremark社の3Dコンテンツを実行し、高い陰影処理機能を示していた。

「SMAPH-S」グラフィックスIPによるOpenGL ES2.0プログラマブルシェーダ描画のデモ 「SMAPH-S」グラフィックスIPによるOpenGL ES2.0プログラマブルシェーダ描画のデモ

 SMAPH-Sの特徴は、“シェーダプロセッサを2〜24個の幅で搭載可能”な拡張性にある。低消費電力が求められるモバイル機器から性能重視の据え置き機器まで幅広いデバイスに対応でき、現在、スマートテレビでの引き合いもあるという。「ES2.0対応の競合IPコア製品と比較して、ゲートサイズを大幅に削減できると、高く評価してくれるユーザーもいる。シェーダプロセッサを増やす場合も単純に回路を並べるのではなく、共有できる部分は共有して回路を節約している」(同社)と自信を見せた。

 スマートフォンでは既に標準となったES2.0は今後、他の組み込み機器に広がっていくとみられる。実際、SMAPH-Sもセットメーカー、半導体ベンダーへのライセンス供与が始まっているという。いま、最も勢いのあるグラフィックスIPベンダーらしく、ESEC2011におけるDMPの展示・デモは、大いなる可能性に溢れていた。

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提供:株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2011年6月29日