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» 2011年06月02日 12時00分 UPDATE

3次元スキャニング&プリンティングの最新技術:3次元プリンタで私がフィギュア化されるまで (3/3)

[加藤まどみ,@IT MONOist]
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微調整の後、3次元プリントへ

 出来上がったSTLデータはさらにプリントしやすいようモデリングツールを駆使して修正して、3次元プリンタへと送られる。空いているすき間を埋めたり表面を滑らかにしたりといったことを、それぞれの作業に適したソフトウェアで行う。微調整は30分程度で、髪を作るならプラス1時間程度といったところだという。

 今回は、頭部アップと全身モデル。こちらは1つの装置で同時に出力することになった。

 出力に使用した3次元プリンタは、アルテックが販売するOBJET社のハイエンド機「Connex500」。今回はデモ準備の都合によりConnex500を使用したが、フィギュアのサイズが同じで、かつ樹脂が「VeroWhite」であれば、Connexよりも下のクラスの「Eden260V」でも同じモデルの造形が可能だ。

Connex500の造形 Connex500で造形している様子

 データは厚さ16μmの輪切り状に、一層ずつ高速形成されていく。家庭にあるインクジェットプリンタと同じインクジェット方式で、インクの代わりに液状の樹脂が吐出される。この樹脂は紫外線を当てることにより固まる。一層分の形状を樹脂で描いて紫外線を当てて固めると、成形物を乗せた台が16μm分下がる。その一連の処理が高速で行われる。そうした処理が繰り返されながら立体ができ上がっていく。駆動部のすき間など、宙に浮いてしまう部分については、ソフトウェアが自動で判断してサポート材料を吐出するようになっている。サポート部は、後で水で簡単に洗い流せる。

サポートの除去作業

 造形物が出来上がったらサポート材を取り除く。手で触ってみるとぽろぽろと崩れ落ちていく。

 高い水圧で落とす専用装置もあるが、手元にあるブラシ(歯ブラシなど)でこすりながら水道水で落とせる。

 今回は、専用装置を使用。上部がプラスチックののぞき窓でワイパーも付いている。足下のペダルを踏むと、ホースのつながった洗浄ツールの先端から40〜50バールほどの水が噴き出る。洗車向けの高圧の放水装置を使用しており、かなりの水圧だ。

サポート除去作業 サポートの除去

本人のマスクと全体像が完成

 そしていよいよ3次元造形物が完成! できたのは、顔周りと全身の2通り。

完成品 左は高さ約18cm、中央の全身像は約26cm、右は大きさをイメージしやすいように置いたワインボトル(本人の身長は約150cm)

 造形に関する詳細データは、以下のとおり。

頭部アップ&全身モデル

  • 造形機種:Connex500
  • モード:High Quality(16μmピッチ積層)
  • モデル樹脂:VeroWhite(アクリル系白色硬質樹脂)
  • モデル材使用量:3074g(VeroWhite)
  • サポート材使用量:1404g
  • 造形時間:41時間59分

 以下は、仮に上記2個のモデル造形を別々に行った場合の計算データである。

頭部アップモデル

  • 造形機種:Connex500
  • モード:High Quality(16μmピッチ積層)
  • モデル樹脂:VeroWhite(アクリル系白色硬質樹脂)
  • モデル材使用量:2578g(VeroWhite)
  • サポート材使用量:1159g
  • 造形時間:38時間28分

全身モデル

  • 造形機種:Connex500
  • モード:High Quality(16μmピッチ積層)
  • モデル樹脂:VeroWhite(アクリル系白色硬質樹脂)
  • モデル材使用量:508g(VeroWhite)
  • サポート材使用量:265g
  • 造形時間:8時間56分

 なお、インクジェット方式3次元プリンタで複数のモデルを1度に造形した場合の所要時間は、個別に造形した場合の所要時間の合計より短くなる。今回のように、形状や大きさの異なる物体が同時に造形できるのも大きな利点だ。

さて、どのように使うかは、あなた次第?

 今回の体験で、ハンディタイプの3次元スキャンの手軽さを実感できた。数をこなしたい場合や、有機物のような厳密性が要求されないもの、一からモデリングするのが大変な形状、手作りのモックアップなどが向いているだろう。マーカーを付けなくてもすみ、また人間や動物であれば多少動いても大丈夫なようだ。ノートPCと電源さえあれば被写体のところにスキャナを持っていける。厳密な数値が必要なものであればレーザー計測方式という風に使い分ければよい。

 一度形を取り込めば加工や反転などが思いのままだ。今回の工程では使用しなかったが、CADで扱えるデータに変換するソフトウェアもあるため、取り込んだデータを新たな設計に流用することも可能だ。例えば葉の形を取り込んだ製品を作ったり、人体のデータを椅子(いす)や車のハンドル、義手など人体と直接触れる製品作りに役立てられるかもしれない。

 モデルを出力する3次元プリンタについては、樹脂の種類や色が豊富になりつつある。「ゴム状のものや表面の質感が特徴的なもの、耐熱温度の高いものなど、バリエーションは今後さらに増えるでしょう」とアルテック 産業機械本部 デジタルプリンタ事業部 部長の井上賢志氏は言う。また2種類以上の異なる樹脂を同時に使えるといった特徴的な製品もある。積層方法についても、液体中の光造形や粉末固着式などさまざまだ。必要となる精度や扱う材料に合わせて選ぶとよいだろう。

Profile

加藤まどみ(かとう まどみ)

技術系ライター。出版社で製造業全般の取材・編集に携わったのちフリーとして活動。製造系CAD、CAE、CGツールの活用を中心に執筆する。



DMS2011でも見られる3次元スキャナ&プリンタ

 今回取材協力いただいたアルテックとデータ・デザインの2社で扱う製品は、2011年6月22〜24日に開催する第22回 設計・製造ソリューション展内のブース展示でも見られる。展示内容などは以下の関連リンクで確認いただきたい(データ・デザインはスリー・ディー・エス社と出展)。

 アルテックブースでは、この記事に出てきた宮本記者フィギュア(デスマスク調)実物も見られる。


第22回 設計・製造ソリューション展(DMS2011):アルテック

会期 2011年6月22日(水)〜24日(金)
時間 10:00〜18:00(24日は17:00に終了)
会場 東京ビッグサイト
ブースNo. 東1ホール 小間番号19-40

第22回 設計・製造ソリューション展(DMS2011):データ・デザイン

会期 2011年6月22日(水)〜24日(金)
時間 10:00〜18:00(24日は17:00に終了)
会場 東京ビッグサイト
ブースNo. 東1ホール 小間番号11-40


 「自分フィギュア化」の相談は……、“ダメ元”で交渉してみていただきたい。

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