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» 2011年06月03日 13時00分 UPDATE

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(11):成果を求め過ぎると失敗する! 町工場2代目共同体 (1/2)

大手企業の下請けを忠実にこなすのみでは未来はない。町工場の2代目リーダーを集めて共同体を結成し奮闘し続ける。

[宇都宮茂/enmono,@IT MONOist]

 マイクロモノづくりを成立させるためには、設備を持って製造する会社と、製品アイデアを持つ方とのコラボレーションが必須です。今回は、東新製作所 取締役 石原幸一氏にお話を伺いました。大田区で製缶業を営む企業のマイクロモノづくり事例です。

 今回のコラム、実は成功談ではありません。マイクロモノづくりに挑戦したものの失敗に終わってしまったのですが、その教訓を生かして次のステップに挑んでいくという話なのです。

「なぜ売れないのか」

石原氏 東新製作所 取締役 石原幸一氏

 2007年に石原氏は自社にレーザー加工機を新設しました。新しい機械でのモノづくりに新たな期待も込めて、「いままでにはない、自分たちでデザインした製品を作ろう」という意気込みで、「TIGRIS」というブランドを作り、「猿フック」などの製品を生み出しました。

 このときは、自分たちでデザインし、新しく導入した設備で部品を切り出し、製品化して、展示会にも出展し来場するバイヤーにPRしました。物珍しさから注目は集めるものの、残念ながら商談には至らず、せっかく作った猿フックなどの製品の販売のめどは立ちませんでした。

 石原氏によると、このときは「自分たちができることをして自社製品を生み出す」「設備の稼働を稼ぐ」など、モノづくり的な部分しか眼中になかったといいます。「どのようなお客さまに」「いくらぐらいで」販売するのか、という仮説もなく作ってしまったのです。そのため、「なぜ売れないのか」という評価基準を明確にして次のステップへ進むということができなかったのです。試作品を作ってみて、反響を確認しながら……といったマーケティングなども一切することはなかったといいます。

猿 猿フック

 実際、読者の皆さんの中にも思い当たる方はいらっしゃると思いますが、モノを作ることができる町工場では、「思い付いたらすぐに形にすること」ができるものの、それが売れないということがよくあります。「売れそうだ」という、自分たちなりの確証をつかむまで、作ることを我慢する。そういう気持ちが重要なのではないかと、石原氏は言うのです。

 モノづくりに生きてきたからこそ、作るのを我慢し、市場の反応を調べる必要があるのではないでしょうか。マーケティングを生業(なりわい)にする方々に丸投げするのではなく、慣れないながらも自分たちで、お客さまの反応を我慢して聞いて回るという地道な努力をしてみることが、マイクロモノづくりへの第一歩なのです。


脱・アニキとOGN

 石原氏は、「いまはオヤジ(先代)の時代のような高度成長期ではない。『下請け』として言われたことをしっかり忠実に守ってモノを作ってるだけでは未来がない」と考え、自分1人で、新しいことに挑戦してきました。そして会社のリーダーシップの在り方も、「オヤジが命令し、部下はそれに従う」というようなスタイルでは、この変化の早い時代――お客さまのニーズが多様化する時代にはそぐわないと思うようになり、グイグイ引っ張る、いわゆる“アニキキャラ”だった自分を変えてきたといいます。

 社員一人一人が自立し、お客さまに向かうようなスタイルを取らなければ、いちいち社長の指示を待ってしまうようになり、スピード感が削がれてしまう。ただし、いままでとは180度違う考え方ということもあって、現社長である石原氏の父親にはまず理解されないし、社員である職人たちにも、なかなか理解してもらえなかったとのこと。

 また地元の商工会などの仲間にもなかなか相談を持ちかけられる雰囲気ではないし、実際に相談してみてもなかなか理解されないものだったそうです。

 そんな孤立無援の中、石原氏はさまざまなセミナーや勉強会に参加したり、本を読んだりしながら、自分1人でできる限りのことをいろいろと試していきます。しかし、自分1人では限界もある……。少しでも仲間を増やそうと考え、まずは気心の知れた地元企業の2代目、3代目リーダーを誘い「おおたグループネットワーク(OGN)」を立ち上げたのです。

 石原氏によると、中小企業が連携するネットワークは大抵失敗する……、とか。原因を推測するなら、それは幹事会社と仲間たちの間で利害の衝突などが生じてしまうからかもしれません。そういう事例を実際に見聞きしてきた石原氏は、何かしらの成果を求めるようなネットワークというものを目指さず、取りあえず気の合う仲間が集まる場だけを提供し、「何も成果を出さない」ということを目指したのです。

 そうすると、短期的な成果を求めるような会社はネットワークには残らず、気の合う仲間のみが残っていきました。井戸端会議のように集まっては他愛のない話をする、そのような従来の考えでは奇妙ともいえるネットワークが生まれました。

 何の成果も求めないからこそ、自由に話し合える仲間となり、一緒に展示会へ出ても自社のPRをするのではなく、お客さまを紹介し合うようになり、その結果として、仲間内での受注につながるようになってきたとのことです。

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