連載
» 2011年06月10日 11時40分 UPDATE

実践! IE:現場視点の品質管理(3):あなたが品質管理で果たすべき役割は何か (1/4)

製造現場で実施する製品管理を中心とした品質管理の基本を解説する。組織における品質管理の在り方から先人の教訓まで、筆者の経験とノウハウを紹介。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,@IT MONOist]

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前回(第2回)はこちら

1.品質管理の基本理念

 製品品質の生い立ち(設計から製造工程に至る過程で作られた品質)は、その製品の一生を支配しますので、良い製品を作り出すことこそ品質管理の根本理念でなければなりません。従来、私たちは“不良撲滅”をモットーに品質管理を推進してきましたが、不良撲滅の根本は、“不良を発生させない”ことであり、不良品の発生を工場内のあらゆる部門で予防するという原則こそが品質管理の源です。その品質管理活動の基本的な考え方は、以下の通りです。

(1)品質管理の根本は技術向上にある

 品質管理の基本は、品質に関する情報(単に、性能的な品質のみではなく、不良、事故、故障、実験結果などの全ての情報を含む)を品質向上や技術向上に有効に結び付けることにあります。このとき、基礎技術や管理技術などを結集して積極的に品質向上に努力することこそが最良の「品質管理活動」であるといえます。

(2)品質管理は、製品の品質を維持することである

 品質管理は、顧客に対して品質の信頼性を保証することであるといえます。このために、不良品を次工程(お客さま)に送らないという強い信念に徹して行動していくことが大切です。

(3)管理は、“標準”があって初めて可能となる

 標準は、その時点の技術水準を現しています。従って、標準は常に改善(改訂)され続けていなければなりません。品質管理活動は、まさに、標準化に始まり標準化に終わるともいわれるほどの重要なことです。換言すれば、標準のないところに、品質改善活動はあり得ないのです。

(4)品質管理は、経営の合理的運営の要素である

 品質管理は、生産性の向上や原価低減などの具体的な経営効果を上げるものでなくてはなりません。

2.製造現場の行う品質管理とは?

2.1 「5M」と「管理(P-D-C-A)サイクル」

 連載の前々回と前回「現場視点の品質管理(1)(2)」では、総合的品質管理(TQC:Total Quality Control)および統計的品質管理(SQC:Statistical Quality Control)の概要を紹介してきました。ここからは、総合的品質管理(TQC)のうち、製造現場で実施する製品管理を中心とした品質管理について説明していきます。

 製造現場で取り組んでいく品質管理とは、「日々の生産活動を通して、収集したデータに基づいて、「P(Plan)―D(Do)―C(Check)―A(Action)」を繰り返すことによって、5M(材料:Material、機械:Machine、方法:Method、人:Man、計測:Measurement)を管理して、バラツキ(ムラ)を小さくし、その結果として製品の出来栄え品質のバラツキ(ムラ)を小さくすること」ということができます。

 生産現場では、一般的に要求される品質特性を直接測定することが困難な場合が多いために、品質の状況を表現する尺度として、生産品質を5つの要素(5M)でとらえていく方法がよく用いられます。つまり、生産現場で実現できる品質特性を代用特性に置き換えて、製品の品質に適合させるということです。従って、この5つの要素を管理することが、顧客のニーズに対応し、許容されたバラツキを確保していくことが重要となります。5Mの内容については、次回以降に詳細を説明しますので、ここでは割愛します。

 また、品質管理での“管理”とは、「方針を定めて目標を決め、決めた根拠をデータなどを集めて明確化させて標準化していくための継続的な努力である」といえます。まず、目標を達成するための計画を立案(Plan)して、次にその計画を実施(Do)し、その結果の確認を計画と比較しながらチェック(Check)し、その差異を反省し検討を加え、再び措置を取る(Action)といったPDCAサイクルが品質管理活動の基本になっており、“管理サイクル”と呼ばれています。「管理」には、目標を現在の水準より高く決めて、これを達成する活動と、決めた水準値を一定に保つ維持管理をしていくことによって標準化し、守っていく活動の2つの目的があり、「管理」は、改善と維持のためにPDCAサイクルを回していくことであるとされています。

2.2 第一線監督者の役割

 製造現場の第一線監督者は、数多くの職務を遂行しなければならない立場であり、その業務の重要性はいうまでもありません。職場の安全衛生管理、労務管理から、品質、納期、原価の管理に至るまで、経営上の必要な諸管理に対して、およそ介入しない分野はないのではないでしょうか。従って、現場の人たちの仕事に対する熱意と努力が、経営品質はもちろんのこと、作り上げていく製品の品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)を支える大きな原動力となっているといっても過言ではありません。

 そのような、毎日現場で実行されている仕事の目的をよくよく考えてみると、結局は品質の維持向上か、原価の低減か、納期の確保か、いずれかに関連していることに気付かされます。

 例えば、不幸にして職場内の1人が、仕事中に急に体調が悪くなって仕事を止めて病院に行かなければならなくなったとすると……、

  1. まず、その人が担当していた仕事の進行が止ってしまいます
  2. その穴埋めをするために、同じグループの人たちが残業を余儀なくされるかもしれません
  3. または、仕事に不慣れな他のグループの人たちの応援を求めなければならないかも知れません

 このようにして、製造現場では、適切な対策をとって製品を決められた期日までに作り上げる努力を日々行っているわけです。仕事中に体調を崩したり、ケガをするようなことはめったに発生しませんが、風邪で早退したり休んだり、あるいは、生産量の突発的変動などの理由により、他のグループの応援要請に応えたりすることは毎日のように発生しています。このような仕事の内容は、次の点を考えてみれば、製品の品質、納期、原価につながりを持っていることが分かります。

 すなわち、上記の1、2、3に対応して、

 1. では、仕事がストップすることによって、計画された生産進度に狂いが生じて、納期に支障をきたします。

 2. では、計画以外の残業の発生で、人件費が増加し、原価面で支障をきたします。

 3. では、他のグループの未経験者の応援で、作る製品の品質が低下したり、作業能率が低下して、最終的には品質や原価面でも支障をきたします。

 このような事態を招かないように、製造現場ではいろいろな努力をしています。また、このような苦境におちいらないように、日ごろの安全衛生管理を確立してケガや病気から職場を守る努力をしているわけです。

 品質管理とは、この例のような努力を行うことによって、製品の品質、納期、原価を維持し、さらに、これらの水準(レベル)を向上させようとする手段であるといえます。従って、現場における第一線の監督者を中心とした仕事は、毎日が品質管理の仕事の連続であるといっても過言ではありませんし、そのように意識をして日々の仕事に取り組むことによって、より一層、質の高い品質管理を達成することが可能となります。

 品質管理の理想は、検査で判定して、不良品を排除するといったことをしなくても、使用者を十分に満足させられる品質を創出でき、それを維持していける状態に工程の水準(レベル)を向上させることです。つまり、生産現場の品質管理活動のみによって、品質を保証していけることが最も経済的に製品を作る方法です。


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