連載
» 2011年06月21日 06時30分 UPDATE

立ち上がる風力発電(2):実用化迫る「直線翼縦軸風車」の可能性 (2/3)

[石田 己津人,@IT MONOist]

流体解析を生かして自己起動性高める

 前述した通り、直線翼縦軸風車の欠点とされるのが自己起動性の低さだ。その点で水野研究室の実験機は2.5m/秒前後の弱い風でも起動するという。その要因は、直線翼の前縁部に乱流を起こす「乱流促進装置」、具体的には微小な突起物を取り付けているからだ。

photo 微小な突起物を取り付けた「乱流促進装置」

 乱流促進装置そのものは、航空機などでも翼の揚力を高めたり、流体抵抗を減らしたり、飛行を安定させるために使われている。水野氏は長年にわたり流体解析を研究し、「トンネル換気シミュレーション」などの産業分野に生かしている。この流体解析手法により、翼面から気流が剥がれて回転が失速しやすい直線翼縦軸風車の弱点を補う独自の乱流促進装置を開発したのだ。その結果、自己起動性や性能特性がアップしたという。

photo 図2 乱流促進装置の効果。同装置を付けた翼は気流がまとわりついている(剥離していない)のが分かる

 その他、水野研究室では性能予測の精度を高める研究も行ってきた。例えば、風は風車を通過する際にエネルギーが吸収されるのに加え、風車内で気流が広がることを考慮した性能評価法を確立している。また、コンピュータで流体の動きをシミュレーションする「数値流体力学」による性能評価も手掛ける。「スーパーコンピュータを使っているわけではないので、1つのパターンを数値計算するのに何カ月もかかる」(水野氏)という環境の中で地道に研究を続けてきた。その結果、今では「どういった型と大きさの翼をどのように運転すれば、どれだけの性能が得られるのか、性能予測の精度はかなり上がってきた」という。

NEDO技術革新事業で実用化計画が採択

 水野研究室では10余年にわたる研究成果をふまえ、いよいよ直線翼縦軸風車の実用化に向けて動き出している。その1つが、縦軸風車を利用した発電システムなどの自社製品を持ち、自然エネルギー事業に力を入れる工藤建設(岩手県奥州市)との産学連携である。

 工学院大学と工藤建設は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「2010年度 新エネルギーベンチャー技術革新事業」に「自己起動特性を向上した直線翼縦軸風車の実用化開発」というテーマで応募し、見事に採択された(同事業の「風力発電その他未利用エネルギー分野」で採用された4テーマの1つ)。

photo 「模型実験に頼らず“現物主義”でやるしかない」と語る水野氏

 残念ながら、NEDOの技術革新事業では、フェーズA:フィージビリティスタディ、フェーズB:基礎研究、フェーズC:実用化研究開発の発展段階があり、その都度審査を受けることになるが、両者のテーマはフェーズBには進めなかった。ただ、原因ははっきりしている。

 水野氏はこう語る。「実験に風洞を借りるとコストがかかるからと、模型実験に頼ったのが失敗だった。直線翼縦軸風車の場合、流体、構造、材料といろいろなスケールファクターがある中で、完全に相似な模型を作るのは非常に困難。結果的に模型は破損してしまった。これからは“現物主義”でやるしかない」。

Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

エンジニア電子ブックレット