他分野からも知恵をどんどん借用しよう災害未然防止のための設計とTRIZ【活用編】(3)(2/3 ページ)

» 2011年06月22日 11時40分 公開

 では、ブレーキの場合について考えてみましょう。

  • 「ディスクがホイールの回転を止める作用が不足する」という問題が存在する。
  • それを「どのようにして物体の回転を止めるか」という抽象化表現に言い換える。
  • 知識データベースで、そのキーワードを基に検索を掛けてみる。
図3 図3 ブレーキシステムの機能モデル
図4 図4 「どのようにして物体の回転を止めるか」の検索結果例

 これから、「発熱を利用して、パッドの押し付け力を強化できないか?」や、「回転力を別の方向の力に変化することでエネルギーを吸収できないか」などのアイデアが浮かびます。もちろん、他分野に触発されたアイデアですから、その実現性や難易度は分かりません。しかし、これまでの先入観にとらわれた従来のシステムを大きく変える可能性を持ったアイデアであるとは思いませんか? このように、機能-属性分析結果から、そこに存在する根本原因に対してダイレクトに知識データベースを使ってアイデアを考えていくことが可能なのです。

究極の理想解からのアイデア発想

 TRIZの思想の中で、「システムは理想性が高まる方向に進化する」というものがあります。

 理想性とは、理想性=Σ有用作用/Σ有害作用の関係で、その概念が表されており、その究極の姿は、「システムの機能(働き)は存在するがシステム自身は存在しない」というものになります。それは自己否定の発想ともいえ、自分たちがいま一所懸命に改善しているシステムは、そのうち別のシステムに置き換わるという脅威を明示するとともに、そのための準備を怠るなという風に私は理解しているのです。

 例えば、自動車のブレーキシステムの究極の理想解は何でしょうか?

 それは、「自動車を安全に停止させること」ですね。では、なぜブレーキがないと自動車が停止できないのでしょうか? また、どのようにすれば、ブレーキ無しで自動車を止めることができるでしょうか?

 既に述べた、知識データベースを活用することが、そのヒントになることは、ここまで読み進めてきた皆さんには理解していただけると思います。しかし、アルトシュラーが定義した究極の理想解への質問にのっとって考えていくことでさらに将来システムのイメージをふくらますことができるのです。それを図5に示しておきます。

図5 図5 アルトシュラーの究極の理想解への質問表

 自動車のブレーキシステムの場合、まずブレーキシステムを構成する部品の展開図を作成します。

図6 図6 ブレーキシステムの部品系統図

 次に、先に述べた究極の理想解の、第1段階を模索します。それは、「ブレーキなしで自動車を止める方法はないか?」ということです。

図7 図7 ブレーキシステムの第1段階の究極の理想解例

 これはある意味、ブレーキメーカーにとっては死活問題ですね。何しろ自分たちが事業として取り組んできたブレーキシステムが必要なくなるわけですから。つまり、この第1段階での定義は、現状としてなぜなくならないのか? なくなるとしたらどういうことが起きる必要があるのか? といった事業的脅威と機会を再度俯瞰(ふかん)することになるのではないかと考えています。

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