【DSJ2011】ディスプレイ技術の革新で発展するデジタルサイネージ組み込みイベントレポート(1/2 ページ)

2011年6月9〜10日に幕張メッセで開催された「デジタルサイネージ ジャパン 2011(以下、DSJ2011)」では、デジタルサイネージに関する最新ソリューションが多数披露された。その中から特に注目したい製品・サービスを紹介する。

» 2011年06月27日 12時52分 公開
[石田 己津人,@IT MONOist]

シャープとサムスン電子が狭額縁で競い合い!!

 デジタルサイネージの要素技術の中でも最も重要なのは“ディスプレイ技術”だろう。DSJ2011では新しい技術動向が見られた。

 シャープは、新開発した超薄型ベゼルの60V型ディスプレイ「PN-V602」を一押ししていた。同製品はマルチ構成(最大25画面)でシステムフレーム幅がわずか6.5mm。さらに、「直下型LEDバックライトの採用により、エリア制御で消費電力を半分にしたり、従来機比で約2倍となる1500カンデラ毎平方メートル(cd/m2)の高輝度を発揮する」(説明員)。実際に目を引く“明るさ”だった。

 サムスン電子(展示は代理店であるエヌジーシー)も当然、超薄型ベゼルを訴求ポイントにし、マルチ構成(最大100画面)で5.5mmのシステムフレーム幅を実現した55V型新製品「SyncMaster UD55A」をブース前面で展示していた。同製品の輝度は700cd/m2とシャープ新製品の半分以下だが、その分、消費電力を250Wに抑える。デジタルサイネージ分野でも両社の争いは続きそうだ。

超薄型ベゼルと高輝度が売りのシャープの60V型ディスプレイ新製品サムスンは55V型マルチ構成でシステムフレーム幅5.5mmを実現した 画像1(左) 超薄型ベゼルと高輝度が売りのシャープの60V型ディスプレイ新製品/画像2(右) サムスンは55V型マルチ構成でシステムフレーム幅5.5mmを実現した

関連リンク:
シャープ
サムスン電子
エヌジーシー

 もはやデジタルサイネージでマルチタッチ操作は珍しくないが、NECが初披露した「MultiTouchWall(仮称)」は、46V型(1366×768画素)のマルチディスプレイで対応していたのが目新しかった。

NECの「MultiTouchWall(仮称)」は、46V型×8面のマルチ構成でマルチタッチを実現 画像3 NECの「MultiTouchWall(仮称)」は46V型×8面のマルチ構成でマルチタッチを実現

 マルチタッチは赤外線センサー方式、同時認識は2点ながら操作感は十分に滑らかだった。既に東京・品川の日本マイクロソフト新社屋に導入されている。NECはデジタルサイネージ分野でマイクロソフト、インテルとの戦略的協業を進めている(関連記事)。MultiTouchWallもシステム基盤には最新の第2世代インテル Core iプロセッサ(詳細は不明)とWindows Embedded Standard 7を採用している。

 裸眼3Dディスプレイでは、大日本印刷が仏Alioscopy社、前述のエヌジーシーが蘭Dimenco Display社のレンチキュラー方式製品(それぞれ47V型と52V型)を展示していた。同方式は、パネル前面に張った特殊レンズで左眼・右眼の間に視差を生み出し、映像を3D化するもの。視点数と輝度は、Alioscopy社製品が8視点で500cd/m2、Dimenco Display社製品は28視点で700cd/m2である。やはりスペックの差が示す通り、後者の方が見やすかった。

28視点で映像が鮮明な蘭Dimenco Display社の裸眼3Dディスプレイ 画像4 28視点で映像が鮮明な蘭Dimenco Display社の裸眼3Dディスプレイ
関連リンク:
NEC
大日本印刷

透明LCDやプロジェクターの活用も

 興味深かったのは、石田大成社、エヌエスティ・グローバリストなどが展示していた“透明ディスプレイ”だ。どちらもサムスン電子が2011年春から量産を開始した22V型透明液晶パネルを使用していた。VA(Vertical Alignment)方式、1680×1050画素の同パネルは、バックライト光源にエッジ型白色LEDと外光を用いたり、開口率を高めて15%超の透過率を確保している。エヌエスティ・グローバリストは「ショーウィンドウがサイネージに変わる」(説明員)と、展示する絵本に関連するコンテンツを“ウィンドウ(透明ディスプレイ)”に表示していた。

透過率15%超を誇るサムスン電子の透明ディスプレイを使ったショーウィンドウ 画像5 透過率15%超を誇るサムスン電子の透明ディスプレイを使ったショーウィンドウ

 同じく岡谷エレクトロニクスが展示していた台湾Poindus SystemsのパネルPC「VariVitro」もショーウィンドウとして使えそうだった。VariVitroは、投影型静電容量タッチパネルの導電層をエッチングすることで、10mm以下のガラスを介したタッチ操作を可能にしている。つまり、ショーウィンドウの内側に貼り付つければ、インタラクティブなデジタルサイネージとして使える。

岡谷エレクトロニクスが展示していたガラス越しでもタッチ操作可能なパネルPC 画像6 岡谷エレクトロニクスが展示していたガラス越しでもタッチ操作可能なパネルPC

 変わったところでは、三菱電機のDLPプロジェクターを使ったデジタルサイネージがある。6500ルーメンの高輝度プロジェクターを2台使い、住友スリーエム製のリアプロジェクションスクリーンに対して背後から同じ映像を重ね合わせて投影していた。説明員は「2台のプロジェクターを使うのは画面の明るさを確保するため。映像の重ね合わせで生じるズレは補正している。プロジェクターとスクリーンなら設置場所が固定されないというメリットがある」としていた。

高輝度プロジェクター2台を使って背面から投影するデジタルサイネージ 画像7 高輝度プロジェクター2台を使って背面から投影するデジタルサイネージ
関連リンク:
三菱電機

 プロジェクター活用という点では、大日本印刷の「CHARALOID(キャラロイド)」もユニークだった。CHARALOIDは、人型パネルにプロジェクターで背後からキャラクター像を投影し、専用ソフトに入力したテキストから音声を合成(音声合成エンジンにはエーアイの「AITalk」を使用)。テキストに挟み込んだコマンドによりキャラクターの表情を変えたり、キャラクターが手に持つパネルのコンテンツを切り替えられるため、まるで実際にキャラクターが喋っているかのように見える。デジタルサイネージ向けディスプレイとして、プロジェクターがあらためて見直されそうな印象を受けた。

背面投影で人型パネルが喋っているように見える大日本印刷の「CHARALOID」 画像8 背面投影で人型パネルが喋っているように見える大日本印刷の「CHARALOID」
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