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» 2011年06月29日 07時00分 UPDATE

スマートグリッド:米国のスマートグリッド構築コストは最大4兆円

米国がスマートグリッド導入を狙う理由は、発電送電設備の老朽化を低コストでカバーするためだ。このため、米国ではスマートグリッド技術に対するコストベネフィット分析が重要視されている。EPRIによれば、PHVの普及や変動電力料金用アプリケーションなどの費用を試算に加えたことで、構築コストが以前の予想の3倍近くまで膨らんだが、ベネフィットはそれ以上に増えるという。

[Rick Merritt,EE Times]

 米国電力中央研究所(EPRI:Electric Power Research Institute)が発表した162ページのリポート 「Estimating the Costs and Benefits of the Smart Grid」によれば、スマートグリッドの実現、すなわち発電送電設備をデジタルネットワーク化するといった構想が進むに伴い、構築に必要なコストが2倍以上に増えると同時に、享受できるメリットも2倍以上になるという。多様な形態のスマートグリッドを実現する上で、センサーネットワークへの期待が急激に高まっている姿も明らかになった。

 EPRIの予測によると、米国内で電力網の老朽化に対応するために必要なコストは、3377億〜4762億米ドル(2兆7000億円〜3兆8000億円)に達する見込み(図1)で、2004年当時に予測していた1650億米ドルから大幅に増加している*1)。一方、それに伴うメリットも、2004年当時の予測では6600億米ドルだったが、1兆2千億〜2兆米ドルまで飛躍的に増大すると予測した。

*1)編注:2004年の予測では、ベネフィット/コスト比は4である。2011年の新予測では比を4以上だと見込む。

ALT 図1 スマートグリッド構築費用の見積もり 送電と変電所(左)と配電(中央)、宅内(右)について、最小見積もり(赤)と最大見積もり(青)を示す。縦軸は100万米ドル。出典:EPRI

なぜ予測がこれほど上ぶれしたのか

 予測値が異なった理由は、2004年の予測では以下のような項目が考慮されていなかったからだ。すなわち、PHV(プラグインハイブリッド自動車)や再生可能エネルギー源、グリッド規模のエネルギー貯蔵システム、分散型発電システムなどの他、エネルギー価格の変動に応じて消費者がエネルギーの使用量を調整するという需要反応アプリケーションなどだ。

 メリットを低く見積もりすぎていた項目もあった。CO2(二酸化炭素)排出量の削減や、省エネ化、大型停電1回当たりに生じる100億米ドルのコスト削減などが挙げられる。

 リポートによれば、スマートグリッド構築に必要なコストの約7割をバックエンドの配電システムが占め、2320億〜3394億米ドルにのぼるという。さらに、発電送電設備のバックエンドITシステムの構築に323億米ドルが必要な他、IT関連のセキュリティ用ハードウェア/ソフトウェアを37億米ドルと予測した。

センサーへの注目高まる

ALT 図2 送電線に取り付けられたセンサーの例 エネルギーハーベスティング技術を利用した温度センサーと電流センサーを取り付けたところ。他の技術と比較して1桁コストが低いという。出典:EPRI

 センサーネットワークは現在、スマートグリッドを実現するには必要不可欠だして、注目を集めている(図2)。EPRIのリポートによると、センサーを搭載した約7万個の各種機器のネットワーク化に対応するために、約60億米ドルを投じる必要があるという。

 EPRIのフェローで、今回のリポートの作成メンバーであるクラーク・ゲリングス(Clark Gellings)氏は、「過去18カ月の間に、送電系統と配電系統に向けたセンサーに対する注目が驚くほどの勢いで高まっている」と述べている。

 同氏は、「発電送電設備の多くは、経年劣化が進み、想定耐用年数を超えてしまっている。例えば、既存の変電所の想定設計寿命は40年であるにもかかわらず、現在の平均築年数は42年だ」と語る。

 さらに同氏は、「こうした状況に対応するためには、センサーやネットワーク、各種プログラムなどを幅広く導入して設備をバックアップする必要がある」と付け加えた。

 米国政府は、2009年に成立させた景気刺激策の一環として、スマートグリッドの実現に向けたさまざまなプロジェクトやイニシアチブに約430億米ドルを投資してきた。EPRIの専門家によると、こうした取り組みの一環としてスマートグリッド標準の策定に注力すれば、スマートグリッド構築に向けて継続的な影響を与えることが可能だという。

個人の負担は軽い

 スマートグリッドの構築費用は誰が負担するのだろうか。リポートによれば、最終消費者だ。2007年時点の予測では1億4212万契約(うち13%が商業部門と産業部門の顧客である)。2030年にはこれが1億6503万契約に膨らむ。

 2030年の契約の大半を占める1億4393万契約は、住宅用顧客であり、スマートグリッドに対して、1カ月あたり12米ドルを負担することになる。これは10年間で1455米ドル(約12万円)に相当する。これは非常に少ない額だ。商業部門の2018万件の顧客はそれぞれ1カ月当たり84米ドル、10年間で1万米ドルを負担し、産業部門の92万件の顧客は1カ月あたり1266米ドル、10年間で15万1000米ドルを支払うからだ。

 今回のリポートは、EPRIの約10人のマネジャーが、10社以上の業界企業の幹部たちから収集した情報をもとに作成した。EPRIは、米国の電力会社や研究機関が連携してサポートを提供する、独立非営利シンクタンクである。

【翻訳:田中留美、編集:@IT MONOist】

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