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» 2011年07月01日 11時00分 UPDATE

中小企業における設計者CAE環境も進化させたい:富士通、8ポートInfiniBandスイッチ採用で小規模PCクラスタを廉価に

InfiniBandを利用した小規模PCクラスタ環境が、廉価なコストで実現可能になる。将来は町工場にも普及させたいと富士通は意気込む。

[小林由美,@IT MONOist]

 富士通は同社の小規模PCクラスタ製品に8ポートInfiniBandスイッチ(メラノックス社「IS5022」)を採用する。販売開始は7月上旬を予定している。これを機に、富士通は中小企業へのPCクラスタの普及へより高い意欲を見せる。

 ワークステーションで作業する設計者自身が扱う構造解析のモデルの規模が、解析専任者が扱うものほどではないとしても、従来と比べれば確実に複雑化し大きくなっている傾向。またアセンブリ全体を解析してみたいと言うニーズも増えてきているとのこと。そのような状況下、ワークステーションの中でソルバを稼働させて計算処理すると、そこにパワーが取られ、CADなどほかのプログラム稼働に支障を来す、または満足のいく解析が実行できないこともある。

 そういったケースでは、解析ソフトウェアにおけるソルバ(数値計算)の処理を2〜数台の小規模PCクラスタに任せ、ワークステーションにはプリ/ポスト(解析の前処理/解析結果表示)の処理を任せるといった分担をさせる。例えばワークステーション8台が稼働し、それぞれのユーザーが2並列で解析をしている場合では、従来環境に16並列のPCクラスタを追加導入してそこにソルバの処理を任せることで、計算時間が大幅に短縮でき、より大規模なモデルが扱えるとしている。

 さらにInfiniBand(通信方式)を採用することで、計算処理速度をアップして、設計業務のストレス軽減・効率改善がより望めるとしている。従来のPCクラスタ向けInfiniBandスイッチの価格は、154万円(参考価格)で、36ポート(36台のサーバをつなぐ前提:つまり中〜大規模PCクラスタ前提)が標準だった。なので2〜数台のPCによる小規模クラスタで十分なユーザーは、それより通信速度面などで劣るギガビット・イーサネットの採用が妥当だった。InfiniBandは小規模PCクラスタでも性能向上が望めるにもかかわらず、その規模にマッチするスイッチが従来なかった。今回の発表は、この壁を取り払おうとするもの。8ポートInfiniBandスイッチの価格は35万円(参考価格)である。

 PCクラスタでもネットワークサーバでよく使われる通信規格のギガビット・イーサネットはよく使われているが、同社の調査によれば並列数が16コアになると計算性能が飽和してしまうという。一方、InfiniBandは、48コアを超えても計算性能は飽和せず伸び続けるという結果が出ているとのことだ(記事末、関連リンク参照)。

並列 ベンチマーク結果:「LS-DYNA」による検証

 小規模なPCクラスタ環境構築において、同社が構造解析ソフト「LS-DYNA」で検証した結果では、先ほどのワークステーション8台に小規模PCクラスタを導入する例で、解析ソフトウェアのライセンスをPCクラスタライセンスに移行することで年間で2分の1程度(年間500万円前後の保守費用)にまで抑えることが可能だという。初年度には保守費用にプラスしてハードウェア費用が掛かるが、それを乗せたとしても、4年間運用で約1650万円削減できるとしている。

 ネットワークやハードウェアの知識がないユーザー自らがPCクラスタを導入することになっても、同社が相談に応じてくれる。PCクラスタの導入決定や管理は、従来のネットワークサーバのようにIT部門(情報システム部)が関与するのではなく、設計や解析部門が担当することが多く見られるという。

 従来は製品・部品設計の端々でCAEを繰り返し使うことで試作実験の回数を減らしていくという運用が主流だといわれてきたが、PCクラスタを導入することで、設計でパラメータスタディを活用し、CAEの実行タイミング自体を減らしていくということも可能だと同社は提案する。しかしながら、そのような解析は、マシンパワーも投資コストも非常に掛かり、最適化設計のスキルを持つ人材もうまく育ちづらいこともあって、一部の大手企業だけが実践しているにすぎなかった。ただし、最近はパラメータスタディが可能な解析ソフトは使い勝手の改善やコストダウンが図られてきており、8ポートInfiniBandなどの小規模PCクラスタ向け製品も登場していることから、今後はパラメータスタディ解析の普及が加速される可能性はあるだろう。

 富士通は今後も、モノづくりに携わる中小企業にターゲットを絞ったPCクラスタ製品やワークステーション、サービスを続々と増やしていくとのことだ。大企業から仕事を受注して部品や装置を製作する、いわゆる町工場でも解析ソフトウェアの活用は増えてきており、そこも積極的にターゲットにしていきたいという。「1年の間でも、ハードウェアのスペックは大きく進化していくので、その進化度合いを見ながら、顧客ニーズも踏まえつつ、製品開発していく」(同社)。

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