OKIデータが取り組む製品ライフサイクルを考慮した環境配慮設計環境配慮モノづくり最前線(2)(1/2 ページ)

化学物質管理、CO2排出抑制など、エレクトロニクスメーカーを中心に、製造業に課される環境への責任は大きくなりつつある。メーカーの現場ではどのような取り組みが進められているだろうか。

» 2011年07月11日 11時54分 公開
[吉村哲樹@IT MONOist]

製造業の重要な経営課題である環境対策

 ここ数年の間で欧州を中心に、企業が生産・販売する商品に対して一定の環境基準を満たすことを求める規制が次々と設けられるようになってきた。最も広く知られるのが、製品の中に有害化学物質を含むことを禁止するRoHS指令、そして製品中に含まれる特定化学物質の登録、管理、届出(一定量を超える場合のみ)を義務付けるREACH規制であろう。近年では欧州以外の国・地域でもRoHS指令に相当する環境規制を設ける動きが広がりつつあり、グローバルにビジネスを展開する製造企業では、今やこうした規制を十分に意識した取り組みが欠かせない。さらに欧州ではErP指令(エネルギー関連製品のエコデザイン指令)による管理プロセスを含んだ規制も広がりつつある。環境に対する取り組みが適正に行われていることを、マネジメントプロセスから証明していかなくてはならない。加えて、物質面での規制に加え、事業活動における二酸化炭素(CO2)の排出量削減に関する取り組みも要求されている。

 こうした流れに早くから対応し、環境経営への取り組みを進めてきたのが株式会社沖データ(以下、OKIデータ)である。同社はプリンタ、複合機の総合メーカーとして、1994年にOKIより分社してできた企業。OKIグループは早くから環境に配慮した企業活動に取り組んできたが、グループ内の中核企業の1社であるOKIデータも業務のあらゆるプロセスにわたって環境保護への取り組みを率先して進めている。CO2排出量の削減に関して言えば、同社は2012年までに対2007年比で6%削減、2050年には50%削減という高い目標を掲げている。

 本稿では、同社のモノ作り企業ならではの環境経営への取り組みについて、同社 経営企画室 地球環境部 部長 加藤靖幸氏と同社 開発本部 副統括本部長 長岡和彦氏に詳しく話を聞いた。

「環境配慮設計」が製品ライフサイクル全般にわたる環境活動の肝

 OKIデータでは、大きく分けて2つの環境活動に取り組んでいる。一つが「環境配慮型商品・技術の創出」、そしてもう一つが「CO2排出量の削減」である。

 前者は、製品のライフサイクル全般にわたって環境への影響を考慮し、消費者に環境配慮型の製品を提供するという取り組みである。製品のライフサイクルは、部品や材料の調達から始まり製造、輸送、消費者による使用、そして廃棄と、多くのフェーズから成る。それら全てにわたって環境への影響を最小化するためには、設計が鍵を握ると加藤氏は述べる。

 「製品の設計は、製品ライフサイクルの全てのフェーズに影響を及ぼす。従って、それぞれのフェーズにおける環境への影響を常に考慮しながら、製品の設計を進めることが何よりも重要だ」(加藤氏)

OKIデータ 経営企画室 地球環境部 部長 加藤靖幸氏 OKIデータ 経営企画室 地球環境部 部長 加藤靖幸氏

 例えば、エネルギー効率。製品の製造時に発生する電力を削減することはもちろんのことだが、消費者が実際に製品を利用する際に発生するエネルギーを減らすための工夫も設計に盛り込む必要がある。また、廃棄後のリサイクルを容易にするための機構や仕組みも設計時に考慮しなくてはいけない。さらには、原材料にも気を配る必要がある。環境へ影響を及ぼす可能性のある原材料をなるべく使わないようすると同時に、RoHS指令やREACH規制をはじめとした各種環境規制をクリアできる設計を心掛けなければならない。

環境配慮設計のプロセス

 OKIデータでは、製品設計の工程ごとに、こうした点を細かくチェックするレビューを設けている。具体的には、まず商品企画段階で製品の基本仕様を検討する際に、国内外のさまざまな環境規制をクリアできるかどうか、詳細に検討を行う。設計・開発段階に入ると、さらに細かいチェックを行う。同社では開発工程の各段階において設計審査を行っているが、社内で独自に設けた「製品環境アセスメント」という基準に基づき、詳細なチェックを行っている。

 例えば、第一段階の設計審査では、各部品に含まれている化学物質の量が環境アセスメントや各種環境規制をクリアしているかどうか、詳細にレビューが行われる。設計が進み、最終的に製品の全体像が見える段階になると、今度は製品全体に含まれる化学物質の総量や消費電力、騒音などが基準をクリアしているかどうかが厳しくチェックされる。こうしたチェック項目は多岐にわたり、その全てが文書化され、設計・開発部門や品質保証部門の中で共有されている。

長い開発リードタイムの中で将来の規制をどう読んでいくか

 こうした内部チェックを行う際に気を付けているのが、その時点での環境規制の内容だけでなく、将来的に規制に加えられる可能性がある変更点まである程度予測しておくことだという。長岡氏は次のように説明する。

 「将来、製品を販売開始する段階で、今ある規制の内容がどのように拡張されているかを予測しながら設計していく必要がある。例えばREACH規制などは、継続的に規制対象物質が追加されていく。従って、法規制の動向に常に目を配って情報収集を行い、その内容を随時設計・開発部門にフィードバックするようにしている」

 特に、REACH規制やErP指令など欧州の環境規制は、詳細な動向がなかなか日本に伝わってこないため、小まめな情報収集が欠かせないという。

 「業界団体で各企業が情報を持ち寄って共有したり、あるいは意見を集約して関係省庁に提出するなどの活動を通じて情報収集に当たっている。また、弊社は欧州に販社があるため、そこを通じた情報収集も頻繁に行っている」(加藤氏)

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