連載
» 2011年07月14日 12時16分 UPDATE

変わりゆく中国の日系製造業(4):変わる中国拠点の立ち位置〜ローカライズ拠点からグローバル拠点へ (1/2)

いま、中国進出企業が中国拠点の立ち位置を見直し始めている。日本製品のローカライズ拠点ではなく、世界戦略の拠点として立ち上がる中国の現状と筆者の考える戦略を紹介。

[藤井 賢一郎/アスプローバ,@IT MONOist]

前回はこちら

市場の急激な成熟と“周辺事業”の逆転現象

 昨今、多くの日本の製造業が中国国内に研究開発部門を置くことを発表しています。

 筆者はその多くが中国国内で販売する製品の中国仕様の設計などを考えたものと認識していましたが、現実はどうも違うようです。確かに中国国内での設計思想(できるだけ安価に、簡素な製品を開発設計する)というものは存在するようですが、既に中国の消費者(特に都市部)を対象とした製品開発では、世界に通用するような機能が必要とされてきています。従来のような簡素な製品はそのまま、低価格品の需要が高い中国国内の農村部や、他の新興国でも販売が可能でしょう。

 しかし、より多くの利益を生む高機能な製品に関しては、中国国内の高所得層のみに販売するだけではなく、世界ブランドとして世界市場に輸出することも念頭に置かれています。

 また、研究開発部門を自国に設置できる製造業の工場における生産技術のレベルは、それなりに高いものと想定できます。

 面白いことに、世界的なブランド製品は別として、大企業においては複数の事業が存在します。日本では“周辺事業”とくくられてしまうビジネスの方が、日本でのシェア挽回を目指して中国市場には早くから進出しており、日本のコンペティタと比較すると中国ではシェアが逆転しているというような現象もよく見られます。

 これら事業のカンパニーは中国現地の企業とも厳しい競争を繰り返しており、それ故にしっかりとした生産体制をもって、世界ブランドを中国で生産するという戦略を実行しています。

世界市場を目指すために重要なこととは?

 逆説的になりますが、上述のような世界ブランドを目指すならば中国市場向けの独自仕様を捨て、世界標準を作り出していくことこそが、いま中国拠点で求められていることといえます。

 この意味では、日本のテレビメーカーも、当初は製品が高価であるという理由で韓国製品などに負けていたものの、現在は必要最低限の機能に絞るもしくはコア機能の部品だけを日本から輸入し周辺部品は現地の安いもので済ませるといった取り組みによってコストダウンを図る工夫をし、徐々に市場を確保しつつあります。

 もう1点、重要なのは、中国現地のメーカーである場合は、世界ブランドを確立することです。

 最近では日本の家電量販店でもよく見かけるハイアールが高いブランド力を持っていることは既にご存じだと思います。しかし、いまだに日本では中国の製造業=「安かろう・悪かろう」のイメージがあります。従って、安いだけでなく品質の良い製品を、コピー製品ではなく独創性のあるブランドを確立しなければなりません。

 中国の13億超という人口の中には多くの優秀な人材がいます。筆者も北京から有能な開発者を採用しています。これら有能な人的資源を海外に流出させることなく維持する一方で、日本国内に進出してきている技術先進国の研究開発ノウハウや生産技術も吸収して進歩していくことが不可欠です。

 いま、中国の新幹線技術に関するアメリカでの特許申請について、どこまでが独自の技術なのだと話題になっています。しかし、前述のような技術吸収という側面から日本の過去の歴史を振り返ってみるとどうでしょうか? 最初は欧米の製品をまねて改良を繰り返してきたことと思います。あまり目くじらをたてるのではなく、日本の技術が中国から世界へ、ひいては世界から日本に利益をもたらすものと考えることもできるのではないでしょうか?

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.