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» 2011年10月12日 12時10分 UPDATE

知っておきたいASEAN事情(4):“東南アジアの大国”インドネシア国内市場の成長は本物? (1/2)

リーマンショックの影響も少なく安定して成長を続けるインドネシア。2億超の国内市場は魅力的だが、近年、成長のエンジンが変質しつつある。この国を拠点とする際のカントリーリスクとは?

[栗田 巧/DATA COLLECTION SYSTEMS,@IT MONOist]

安定した政治状況に裏打ちされた発展

 今回は、東南アジアの大国インドネシアを紹介します。

 30年に及ぶ長期政権(1967〜1998年)を担った第2代大統領スハルトの時代に東南アジアのリーダーとして君臨していたインドネシアは、その後、長い低迷期にありました。

 スハルト体制が崩壊した後の6年間に、ハビビ、ワヒド、メガワティと度重なる政権交代があったこともあり(どこかの国よりはましですが)、国内産業の工業化は足踏み状態となっていました。加えて、9・11同時多発テロ以降に増加した国内テロなどの影響を受け、発展途上国では経済発展の必須条件である外国からの投資が低迷した時期です。

 2004年に誕生したユドヨノ政権は、2009年に再選を果たし、予定では2014年までを任期とする長期政権となる見込みです。また、この数年は国内テロ事件発生件数が減る傾向にあります。こうした変化に敏感に反応したのが、インドネシア市場進出を目指す外国資本の耐久消費財メーカーです。

項目 内容
総人口 2億3151万人
都市人口 1億0296万人
人口当たりのGDP 3015米ドル
PC普及率 6.42%
携帯電話普及率 69.25%
日系企業進出数 692社
インドネシアのファクトシート

 政情が安定し、国内経済が成長基調にあるとなれば、2億人を超えるインドネシアは巨大市場への道を突き進んでいるということでしょうか。一般に、人口当たりのGDPが3000米ドルを超えると、耐久消費財の購買が急増するといわれています。上記の表を見ると、この意味ではインドネシア市場はまさに爆発的な成長の兆しを見せているといえます。

 既にいろいろなメディアで報道されているように、インドネシアのFacebook登録者数は3500万人を超え、イギリスを抜いてアメリカに次ぐ世界第2位になりました。インドネシアの若者は、スマートフォン(Blackberryが一番人気)で、FacebookやTwitterなどのSNSを利用しています。このあたりはマレーシアやタイの若者と同じ行動パターンといえます。

 SNS関連でいえば、都市部の若年層を対象にしたSNSによる広告活動があります。インドネシアでは30歳未満の若年層が人口のほぼ半分です。単純計算では、都市部だけでも5000万人近い若年層が存在することになります。ジャカルタのコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」では、既存のマスメディアからSNSを中心にした広告活動へ切り替えています。結果として、非常に効果的に対象セグメントの囲い込みができています。

 インドネシアに限らず、成長が続く発展途上国では、旧来の伝統・文化・価値観が駆逐され、海外から流入した文化・価値観が若者を中心に急速に浸透しています。ジャカルタの若者も、東京の若者も、ニューヨークの若者も、ロンドンの若者も、SNSを介して、リアルタイムに同じ価値観や関心を共有可能な時代といえます。

市場の中心は2輪車から4輪車へ:工場建設ラッシュ

 さて、ここからは製造業のお話をしましょう。インドネシア人の消費順位は、家→車→家電といわれています。

 人口当たりのGDPでいえば、1000〜3000米ドルに達すると一気に拡大するのが2輪車です。

 2010年の全体需要が736万台(前年比で26%増!)、2011年は800万台に達すると予測されています。日本国内市場でいえば、昭和30〜40年代初めの光景でしょうか。ここまで市場が伸びれば、日本の2輪車メーカーは本腰が入ります。中国やベトナムのようにコピー車が氾濫する市場とは異なり、インドネシアは健全な市場環境にあることもあり、本田技研工業(ホンダ)とヤマハ発動機(ヤマハ)の2大メーカーはかなり積極的な生産能力増強を図っています。

 しかし、今後もGDPの成長が見込まれているインドネシアでは、既に次の競争が始まっています。4輪車市場です。2輪車では日本国内メーカー同士の競争でありましたが、4輪車となると、今後は少し事情が異なるかもしれません。

 インドネシアの4輪車市場規模は2010年で76万台(前年比57%増!)です。2006年度の約2倍の市場規模です。近くアセアン最大の4輪車市場であるタイを抜き、100万台の市場規模に達するのも時間の問題といわれています。現在は日系メーカー合計で95%の市場占有率を誇っていますが、ここに来て、インドネシアをBRICSに続く有望市場と位置付けている欧米系の自動車メーカーが殺到しています。

  • BMW 生産能力増強&販売網強化のため今後2年間で9億円の投資予定
  • ダイムラー 新モデルを投入し、高級車市場の6割占有を目指す
  • フォード 2010年にリリースしたFiestaが好調で、2011年は前年比3倍の販売見込み

 他にも、ゼネラルモーターズやフォルクスワーゲンも自社工場建築を検討中と伝えられています。

世界初のMPVはインドネシアが発祥の地?

 1970年代のインドネシア市場には元祖MPV(Multi-Purpose Vehicle:多目的車)といえる自動車がありました。トヨタの現地法人トヨタ・アストラ・モータースが製造・販売していた「キジャン(Kijang)」です。1977年に発売されたキジャンは、大家族を乗せ、大量の荷物を積み、舗装されていない悪路を走破するというインドネシアのライフスタイル(当時)にマッチした製品でした。現在は、トヨタIMVプロジェクト*の一環としてパワートレイン、シャーシの共通化が行われ、Kijang INNOVAのブランドで販売されています。


*トヨタIMVプロジェクト 2002年に発表された新興国市場をターゲットにしたプロジェクトの総称。IMVはInnovative International Multi-purpose Vehicleの頭文字から取っている。全世界の新興市場をカバーする最適生産および供給体制を構築し、日本以外での生産販売体勢により需要変動や為替差益に収益が左右されない体勢を整える、トヨタの世界シェア15%を目指すための主要プロジェクトの1つ。また、IMVプロジェクトから生み出された車はIMVシリーズと呼ばれ、1プラットフォームから3つのボディタイプで5車種が生産販売される。


Kihiang Innova 画像は現行の「Kijang Innova」(トヨタ・アストラ・モータースのWebサイトから引用)

海外の現地法人は? アジアの市場の動向は?:「海外生産」コーナー

独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。




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