ど根性! 1つ1つの寸法の係数を計算しよう公差解析 実践の基本(2)(4/4 ページ)

» 2011年10月14日 00時10分 公開
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うーん、よく分からない……。


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視点を変えた方がよさそうね。上から見るとこうなるわよ。左側のサイド部品がボードごと引っ張っちゃうのね。


ALT 図14 上から見てみた
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む、これはちょっとこれまでとはまた違うね。関係をまとめましょ! 回転中心になるのはボードと左側のサイド部品を締結する穴になるね。その引っ張られるポイントとの間で距離を取ると72mmになる。


ALT 図15 サイド部品(左)の寸法の変動と、知りたい箇所(Xの距離)
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寸法が動く方向と、評価したい方向が明らかに違うわね。この場合は頑張って計算するしかなさそうね。


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おーし、頑張ろうっ。まず傾く角度を計算しちゃおう。


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おー、(No.9)の係数が求まったね。ということは、この穴と一緒に締結されるベース部品の方の穴(No.17)も同じ係数になるね。あと、同じ挙動はNo.11のボードが取り付く面の位置でも起こると思うな。


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ボードの位置が引っ張られるのは同じだな。後は、右側の取り付け穴の位置(No.13)と面の位置(No.15)は挙動が正反対になるだけじゃないかな? ……ほら。


ALT 図16 真逆の現象
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ホホ。回転角度が同じだから、ピンの先端の動き方も方向が逆になるだけだね。No.13とNo.15の係数も0.8332っと。えっと、No.13の穴と一緒に締結される、ベース部品の穴の位置(No.18)もだねー。


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よーし、あと残り4つ! ベース部品のガイドを取り付ける穴の位置だね。ピンから遠い方の穴(No.20)から見てみよう。今度はボックス側の穴の位置が動いて、すき間に影響を与えるね。


ALT 図17 これは、もう慣れたパターンだね!
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よしきた。この関係は……。


ALT 図18 ベース部品の寸法の変動と、知りたい箇所 その2(Xの距離)
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じゃあ係数は……。


        70:10=1:X

        X=10/70

         =0.14286

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ガイド側でこの穴と一緒に締結される穴(No.22)も同じ係数になるね。


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ではベース部品のもう一方の穴を見てみようか。挙動はさっきと似ているな、きっと。


ALT 図19 回転する中心が変わるだけだね
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よー、じゃあこれはぺペイのペイで計算しちゃいますよ! 回転する基準になる穴と、ボックスの穴の先端までの距離は80mmだよ〜。


ALT 図20 ベース部品の寸法の変動と、知りたい箇所 その2(Xの距離)
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ではこれを計算してみると……。


        70:80=1:X

        X=80/70

         =1.14286

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No.21の係数は1.14286だね。あと、ガイド側でこの穴と一緒に締結される穴(No.23)の穴の位置も同じ係数になるのう。


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できたーっ! できたできたー! 係数が全部埋まったよ!!


ALT 図21 完成!
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むむ。この結果を見ると、よろしくなさそうだな。


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思いっきりぶつかる確率は高いのかな……。


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まだY方向の計算もあるわ。次回までにY方向の計算をして、まとめてちょっと考えましょ。


  「キカコーサ……」「重力……」「ガタ……」「忘れないで……YO!」

 ――どこかから声が聞こえてきます。

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どこからかおじさんの声が!? 気のせい?


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さー、今日はここのところで帰るぞ!(肌色クローバーちゃん! 待ってて!)。


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妙にナオってばイソイソしてるわね。でも疲れたから今日はここのところで帰りましょ。


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ばーかにゃうだ♪ ばーかにゃうだ♪


 才羽工業の製品での公差解析は、まだまだやることがありそうな感じですが、今日のところは、ひとまずここで一区切りです。

ここまでのおさらい

 今回は時間をかけて1つ1つの寸法の係数を計算していきました。どうでしょうか。ちょっと面倒ですね。飽きっぽい私は何度もくじけそうになりながら計算をしました。

 評価したい箇所に影響する寸法は3次元の空間の中にたくさんちりばめられています。これを洗い出していく中で、必要ない公差を足してしまうのも、逆に関係あるのに見落としてしまうのも人次第だったりします。慎重に「この寸法がばらついたら、組み立て精度に影響はないだろうか」という疑いの目を忘れずにピックアップしてください。

 そして係数の計算。これも寸法がばらつくことで、「どんな風に部品が傾くのか?」「組み立て精度はどうなるのか?」、丁寧に分解してあげることで正しい係数は出てくるはずです。

 しかし、まだまだこのお題には課題が残されています! これからもうしばらくお付き合いくださいね。(次回へ続く

⇒連載バックナンバーはこちら

⇒前回シリーズ「公差解析 基本中の基本」はこちら

Profile

岡田 あづみ(おかだ あづみ)

1978年生まれ。大学を卒業後、自動車部品メーカーに入社。生産技術の現場で公差解析に出会い、その後サイバネットシステム(株)に入社。現在は3次元公差マネジメントツール、「CETOL6σ」のアプリケーションエンジニアとして企業での公差解析の導入に携わる。



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