連載
» 2011年10月25日 13時00分 UPDATE

井上久男の「ある視点」(7):メイド・バイ・ジャパンのクルマが売れなくなった――中国高級車市場でドイツに負ける理由 (1/2)

中国でドイツの高級車メーカーが多大な利益を稼ぎ出している。世界最大の高級ブランド市場に成長しつつある中国で、実は日本車が売れなくなってきているようだ。その理由を探る。

[井上久男,@IT MONOist]

BOPビジネスだけではない、世界最大の高級ブランド市場

 中国でメルセデス・ベンツやBMWといったドイツの高級車が多大な利益を稼ぎ出している。ランボルギーニやロールス・ロイスなども堅調という。中国の吉利汽車傘下に入ったボルボも今後4年間で店舗を70%増加の200店舗まで拡大し、販売台数も現状の7倍近い20万台に増販する計画だ。

 2011年1〜6月の中国での新車販売台数は前年同期比3.4%減少したが、高級車市場は40%近くも伸びている。政府がバブル経済引き締めのため、土地などの不動産取引の規制を強化しているため、資金が高級自動車市場に流れているとの見方もある。

 自動車だけに限らず、中国の高級ブランド市場は拡大している。中国の政府系シンクタンクである国家信息中心によると、世界のラグジュアリー消費の25%を中国が占めており、現在は世界2位だが、5年後には146億ドルに達して世界の28%近くを占めるようになり、中国が世界1位になるという。

"荒稼ぎ"するドイツ車メーカーと日本車ブランドの衰退

 ドイツの自動車メーカーの荒稼ぎぶりを決算データで示すと次のようになる。

 BMWの2011年1〜6月期連結決算は、売上高が前年同期比22%増の339億ユーロとなり過去最高を更新、純利益も2.6倍の30億ユーロ。販売台数は19.7%増の83万台。内訳は、本拠地の欧州でも販売を伸ばしたほか、アジア地区が5割増の19万台となり、初めて北米地区を上回った。アジアの中でも中国が6割増の12万2000台とけん引役を果たした。通期でも販売台数を上方修正して過去最高の160万台以上を見込んでいる。BMWは2007年9月に発表した2012年までの中期経営計画で、利益や負債の削減目標を1年前倒しで達成する見通し。収益を電気自動車の開発や、オランダの自動車リース会社の買収などに充てる。

 ダイムラーの同時期の連結決算は、売上高が10%増の511億ユーロ、純利益が50%増の29億ユーロ。乗用車部門のメルセデス・ベンツ事業は、売上高、販売台数ともに過去最高を更新。中国での販売台数が59%増の9万5000台となり、好業績を支えている。2009年は赤字決算だっただけに、「中国さまさま」といったところだろう。

 「アウディ」を傘下に抱えるVWの同時期の連結決算も、売上高が26%増の778億ユーロ、純利益が3.7倍の63億ユーロだった。販売台数は上半期として初めて400万台を突破。中国が17%増の111万台とけん引した。VWの中国での販売台数は本国ドイツ(58万台)の2倍近くまで成長している。ブランド別でもアウディの伸び率が18%と最も高い。2011年の世界販売台数は800万台を超え、700万台程度を見込むトヨタを軽く追い越し、米ゼネラル・モーターズに次いで世界2位に浮上する勢いだ。

 欧州の金融システム不安に起因するユーロ安も、当面のところ自動車メーカーの利益をかさ上げし、追い風となっている。あまりにもドイツメーカーが稼いでいるため、中国内からは「中国で稼いだ利益をドイツに持ち帰っているので、中国の政府系ファンドが直接ドイツメーカーに出資し、配当という形で、中国にもっと還元してもらう必要がある」といった指摘も出始めているほどだ。

 ドイツ勢が快進撃を続けているのに、日本の高級車ブランドは押されまくり、存在感が喪失しかかっている。アウディ、BMW、メルセデス・ベンツ、レクサス(トヨタ自動車)、アキュラ(ホンダ)、インフィニティ(日産自動車)の販売の推移を示すと、それが一目瞭然だ。

 アウディは、2005年に約5万8000台だったのが2010年にはざっと4倍の約22万9000台にまで伸びた。2位のBMWは約1万1000台から18倍の約18万台にまで増えて伸び率ではアウディを上回る。メルセデス・ベンツも約1万3000台から17倍近い約17万3000台にまで膨らみ、こちらも伸び率ではアウディを上回る。

mhfpro_inouereport07_gr.gif
2005年(台) 2010年(台)
アウディ 5万8000 22万9000
BMW 1万1000 18万0000
メルセデス・ベンツ 1万3000 17万3000
レクサス 6300 5万2000
アキュラ 3 6000
インフィニティ 200 1万1000
各社(ブランド)の販売台数の伸び

 トヨタやホンダにとって深刻なのは、「カムリ」や「アコード」も存在感が埋没し始めている点だ。2011年1〜6月の販売台数でモデル末期だったとはいえ、カムリは前年同期比マイナス20%、アコードもマイナス15%だった。看板車種の落ち込みが足を引っ張り、2011年1〜6月の中国での全体の販売台数もトヨタは2.2%減の35万4000台、ホンダも12.3%減の27万1000台だった。

世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.