自動車のワイパーを上手に動かすリンク機構メカメカリンクで設計しよう(7)(2/2 ページ)

» 2011年10月25日 08時00分 公開
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【No.28】航空機に見られる車輪格納機構(固定部・作用点等長 1)

 支点距離(X)と作用点の距離(Y)を等しく設計し、かつ駆動リンクの長さ(A)と中間リンクの長さ(B)を等しく設計したパターンです。

 図8のアニメーションから、下記のことが分かります。

  • タイヤが接地すると反力によって駆動リンクと中間リンクが一直線上に伸び切り、リンク機構が拘束され接地反力を受けられる
  • 接地による負荷を解除した後、駆動リンクを時計回り(CW)させると、タイヤが付いた従動リンクが持ち上げられ格納され、そのまま駆動リンクを回転し続けることで再度、タイヤを出すことが可能
固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合 図8 固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合

【No.29】航空機に見られる車輪格納機構(固定部・作用点等長 2)

 図8に示した機構で、支点距離(X)と作用点の距離(Y)を等しいままに、中間リンクの長さ(B)に対して駆動リンクの長さ(A)を短く設計したパターンです。

 図9のアニメーションから、下記のことが分かります(動きそのものは図8と同様となります)。

  • タイヤが接地すると反力によって駆動リンクと中間リンクが一直線上に伸び切り、リンク機構が拘束され接地反力を受けられる
  • 接地による負荷を解除した後、駆動リンクを時計回り(CW)させると、タイヤが付いた従動リンクが持ち上げられ格納され、そのまま駆動リンクを回転し続けることで再度、タイヤを出すことが可能
固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)が中間リンク(B)より短い場合 図9 固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)が中間リンク(B)より短い場合

駆動リンクがロックする構造 1

 ここで、支点距離(X)と作用点の距離(Y)を等しくしたまま、中間リンクの長さ(B)に対して駆動リンクの長さ(A)を長く設計したパターンを確認してみましょう。基本的な構造は同じはずなのに、駆動リンクと中間リンクの長さが変化すると、リンク機構がロックするパターンがあることが分かります。

固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)が中間リンク(B)より長い場合 図10 固定部(X)と作用点(Y)が等長で、駆動リンク(A)が中間リンク(B)より長い場合

駆動リンクがロックする構造 2

 さらに、駆動リンクの長さ(A)と中間リンクの長さ(B)を等しく設計し、支点距離(X)を作用点の距離(Y)より、長く設計したパターンを確認してみましょう。この機構も同様に、基本的な構造は同じはずなのに、支点距離と作用点の距離が変化すると、リンク機構がロックするパターンがあることが分かります。

固定部(X)が作用点(Y)より長く、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合 図11 固定部(X)が作用点(Y)より長く、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合

駆動リンクがロックする構造 3

 同様に、駆動リンクの長さ(A)と中間リンクの長さ(B)を等しく設計し、支点距離(X)を作用点の距離(Y)より、短く設計したパターンを確認してみましょう。この機構も同様に、基本的な構造は同じはずなのに、支点距離と作用点の距離が変化すると、リンク機構がロックするパターンがあることが分かります。

固定部(X)が作用点(Y)より短く、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合 図12 固定部(X)が作用点(Y)より短く、駆動リンク(A)と中間リンク(B)が等長の場合

 図10〜図12の事例のように、支点間距離や作用点の位置、リンクの長さの関係だけにとらわれず、支点位置などによっても状況が変化する場合があるため、必ず動作軌跡を確認しましょう。

今回のまとめ

 駆動リンクが一方向に連続回転し、従動リンクや中間リンクを機能として使用する事例を確認しました。これらは四節リンクを実務設計で使う際によく用いられる構造となります。

 ただ、安易に支点の位置やリンクの長さを決めてしまうと動作時に無理が掛かったり、動作ロックしたりする可能性もありますので、2次元CADで動作軌跡を描くなどして、不具合が発生しないか十分検討しなければいけません。



 次回はスライド構造を組み合わせた四節リンク機構の特徴を確認しましょう。(次回に続く)

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Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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