趣味の切削加工は甘くない!? iModela体験記3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(8)(1/3 ページ)

7万5000円とお手頃価格の「iModela」で切削加工を体験してみた。「お気軽に使える」と思っていた人は、買う前にご一読を。

» 2011年11月09日 07時30分 公開
[水野操 ニコラデザイン・アンド・テクノロジー/3D-GAN,@IT MONOist]

 皆さん、こんにちは。時間のたつのは早いもので、前回の娘の夏休みの宿題レポートから1カ月以上たちました。なんで、こんなに時間がたつのが早いのでしょうか。

 さて、円高は一層進み、タイの洪水被害により製造業も一瞬も気が抜けない状況が続いております(2011年11月時点)。読者の皆さんの中にも、きっと困っておられる方も多いのではないでしょうか。そんな気の抜けない毎日でも、ちょっとした気分転換が、あらためて前進するエネルギーになったり、あるいはちょっとしたアイデアのヒントになったりします。ぜひ、このコラムもそんなことに貢献できたらと思います。そんな視点で、前回のコラムから、この1カ月の間に「Cafe 3D」というサイトを作ってみました。

関連リンク:
Cafe 3D

 以前からこんな趣味なサイトを作ってみようかなと思っていて、一念発起、重たい腰を上げて作ったものの、やはり懸念していた通り、コンテンツの更新が進んでいません(涙)。鋭意中身を充実させようと思っているのですが、このコラムをお読みの読者の中で、自分なら面白いコンテンツを提供できるとお考えの方、ぜひ私にご連絡くださいませ。

 さて、面白い話題といえば、ローランド ディー.ジー.(ローランドDG)社が発表した切削機「iModela iM-01(アイモデラ)」(以下、iModela)が話題になっていますね。小さくてかわいい(?)ボディーで、お値段も7万5000円(税抜き)と切削加工機としてはお手頃。ローランドDGのプレスリリース(2011年10月5日発表)によれば11月9日に発売開始。リリースの直後から、あらゆるメディアで話題になり、さらにTwitterなどでツイートされた数もすごかったようです(以下の関連リンク)。


 特に最近の日本では、プラモデルも接着剤で組み立てるのではなく、着色済みの部品をスナップではめる物が存在します。もっと言えば、「作ること」よりも「完成品」が求められるこのご時世でありながら、このような、まさに「自作のための加工機」が注目を引く理由には非常に興味があります。その理由についての詳しい分析は、また別の機会に譲るとして、今回はiModelaそのものに注目してみようと思います。

 とにかく、10月5日のiModelaの発表以来、モノづくりに仕事としてかかわる人だけでなく、本当にいろいろな人が興味を持っているようですね。あまりにも、いろいろな情報が錯綜しているため、iModelaを3次元プリンタとする情報があったりしますが、iModelaは切削加工をする機械であって、一般的に3次元プリンタは「樹脂などの材料を積層して作るRP機のこと」を指すでしょうし、実際、勘違いしたツイートに対するツッコミもあったようです。

 iModelaの発表以来、私が事務所を置いている3D-GANにも実機を見に来る方がちょくちょくいらっしゃいます。しかも、いかにも製造業っぽいおじさんだけではなく、女性も多く、かついろいろな業種の方々が見えます。このニュースのインパクトに私も驚いております。

 ……が、ここからが本題です。「モノは魅力的」「価格も魅力的」で、「何か響くもの」がそこにあったのは確かです。しかし切削加工機は切削加工機。切削加工の持つ魅力とともにある「面倒臭さ」もあるはずです。実際、ローランドDGさんの切削加工機を知っていれば、同社の「Modela MDX-40」「Modela MDX-20」「Modela MDX-15」などもご存じでしょう。その“小さい版”と考えれば、「切削加工機の特徴をしっかりと知っておくべき」と考え、私自らが試してみることにしました。

 ちなみに、私はCADやCAE、PLMにずっと携わってきましたが、なぜかCAMとか加工というものに直接携わる(やっている人たちはたくさん知っていますが)こともなく来ていたので、まさに趣味企画として試すなら、私がうってつけではと勝手に考えたのでした(笑)。

 とはいっても、全く経験のない私にとって、自分一人でやるのはちょっと大変。

 そこで! 頼れる3D-GANの“あの人”、というわけでツクルスの“ダムダムボーイ”さん(仮名:本人希望で本名は伏せます)に手伝ってもらうことにしました。この記事の件のように、過去、彼に助けられたことはこれまでも数知れず。

 全く切削加工の経験がない人が「趣味で加工しよう!」とiModelaを使おうと思っても、何かトラブルがあったときの対処が難しいかもしれません。実際、今回の加工においても、途中で何回か止まり、パスを出し直して継続したりしました。手なれたダムダムボーイさんのおかげで、なにげなく対処できていますが、未経験である自分一人だったら「つらかっただろうなぁ」と思ったのは正直なところでした。

ddb 今回のスペシャルゲストはダムダムボーイさん(仮名)です

 さて、削るためには、まずデータが必要です。ちなみに、iModelaのワークの大きさは、86mm×55mm×26mmと大体、石けんほどの大きさなので、作る物もその大きさにする必要があります。また削る物の対象は、樹脂やケミカルウッドなどの柔らかい素材です。

 ダムダムボーイさんの推奨は、「簡単にできる、一面加工でいけるような形状」。私も、まずは「切削加工を経験する」ことが目的なので、素直に従って、図1のようにアンダーカットもない「飛行機に人が乗っているような形状」を作ってみました。

1 図1

 寸法は下記のようにワークに対してかなりギリギリにしています。

2 図2

 後は、これをSTLで出力します。おっと、ここまではRPで出力するときと同じですね。STLでデータを出力したら、今度はそれを「SRP Player」にインポートして加工のためのパス出しをします。SRP Playerの操作自体は、今回は特に1つ1つの設定をダムダムボーイさんに教えてもらったので、難しいものとは感じませんでした。でも、初めての人は――何でもそうですが――ここでも時間が必要かもしれません。

 まずは、モデルを読み込んだ際の向きでは、上面がZ軸になっていない場合も多いので、まずは上面を定義します。最初に削る面が上面になりますが、今回は一面しか加工しないので、単純に上をZ軸の上の方向にします。

3 図3

 後は、削り方や刃の種類、材料などを、ステップを追って定義すればいいのです。


動画1 SRP Playerでの作業


 ここまでは比較的簡単でした。

 iModelaにつないでいたPCと、この作業をしていたPCが違っていたので、データを移す作業をした後、「切削開始」というボタンをクリックして、ファイルに切削パスを出力しました。3次元プリンタを使う際も、STLファイルをそのRP機の専用ソフトで処理する必要があるので、ここまでの手間は両者でそれほど違わないと考えてもよいでしょう。私は、この作業が初めてだったため、1つ1つを勉強しながらの作業でしたが、手なれた人であれば、もう少し素早くできると思います。

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