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» 2011年12月07日 12時00分 UPDATE

メカメカリンクで設計しよう(8):車のエンジンにも使われるスライド構造の仕組み (2/2)

[山田学 ラブノーツ/六自由度技術士事務所,@IT MONOist]
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【No.32】クランクローラー機構

 No.30のスライダクランク支点部の滑り対偶を回転対偶に変更したものです。

図5 図5 クランクローラー機構
図6 図6 摩擦係数の違いが機械効率に影響を与える

 一般的に、滑り抵抗と比べた場合、転がり抵抗の方が抵抗値が小さく機械効率が良いといえます。同じ力の向きであれば、転がり抵抗の方が有利であることがイメージできるでしょう。

 しかしコストアップになる可能性もあるので、使用環境や荷重条件を考慮して、滑り構造をローラー構造に変更できないか検討しましょう! 転がり構造に設計する場合、コストやスペースによってオリジナルでローラーを設計する場合と市販のボールベアリングを使う場合とがあります。ボールベアリングは安価なわりに表面が熱処理されていることから摩耗の心配も少なく、真円度も良好なため転がりローラーとして利用することができます。

スライド部は押したほうが安定する?引いたほうが安定する?

 自動車の駆動方式に、FR(フロントエンジン・リアドライブ)とFF(フロントエンジン・フロントドライブ)があります。FRは後輪に駆動力が与えられるため、後ろから押すイメージです。FFは前輪に駆動力が与えられるので、前から引っ張るイメージです。

 下の写真を見れば分かるように、物体は押されるよりも引かれる方が安定します。

yk_link08_image07.jpg

 リンク機構のスライド部にも同様のことがいえるので、引っ掛かりに注意する必要があるのです。



 滑り対偶を回転対偶にすることでフリクション*1低減につながることが分かりました。

 リンク機構の回転支点に、滑り軸受や転がり軸受を採用をしてフリクション低減を目的に使用することも可能です。

*1 フリクション(friction)和訳すると摩擦を意味し、一般的に摩擦抵抗の意味で使用されます。


回転支点の機構

滑り軸受(ブッシュ)

 軸を面で支持して、滑り摩擦による運動を行うもの。銅合金などの金属製やポリアセタールなどの樹脂製などがあります。素材を切削あるいは成形してオリジナルで設計したり、市販品を選択したりするときもあります。

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転がり軸受(ボールベアリング)

 保持器と転動体の間に球体があり、転がり運動を行います。市販品を安価に購入できます。メーカーの営業に相談すると、構成部品であるボールやコロも単品で購入可能です。

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【No.33】円弧スライダクランク

 円弧スライダクランクは、スライダの動作を直線から曲線に変更したものです。機構を考えるときに直線運動しなければいけないという既成概念にはまってしまうと、機構設計は行き詰ってしまいます。

 下の事例のように、曲線と直線を組み合わせるとさまざまなアイデアや利用方法が浮かんできます。

図7 図7 円弧スライダクランク機構

 図7のアニメーションでは、駆動リンクが反時計回り(CCW)に回転しています。このとき、従動リンクを時計回りに回転させると、どのようになるでしょうか?

図8 図8 力の向きが機械効率に影響を与える

 図8に示すように、駆動リンクの回転方向によって、スライダのピンが受ける力の向きで機械効率が大きく変わります。

 図8の(b)の状態では中間リンクによってピンが円弧穴の壁に向かって荷重を受けるため、アクチュエータの負荷オーバー、機構ロックなどの可能性を排除できません。駆動リンクの回転方向は設計構想書として設計思想を明確にするとともに、電気設計者やソフト設計者とコミュニケーションを密に取り、機械設計者が想定していた回転方向と反対向きに回転させないように留意しなければいけません。

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今回のまとめ

 スライド構造を設計するとき、リンクで発生するフリクションと力の向きを考慮して設計しなければ、顕著に機械効率が悪化しアクチュエータの負荷につながったり、動作ロック、スティックスリップなどの動作不良につながったりします。

 次回はその他のスライド構造を組み合わせた四節リンク機構の特徴を確認しましょう。(次回に続く)

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Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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