本格派仮想企業・上智大、また連覇を目指して第9回 全日本学生フォーミュラ大会 優勝校(1/2 ページ)

第9回 全日本学生フォーミュラ大会は、上智大学フォーミュラチームが3年ぶりの優勝を果たす。本記事では優勝マシン「SR10」がどのようなコンセプトで設計・製作されたのか、その秘密にインタビューで迫る。

» 2011年12月09日 13時00分 公開
[佐々木千之MONOist]

 2011年9月5〜9日に静岡県袋井市小笠山総合運動公園(通称エコパ)で開催された、第9回 全日本学生フォーミュラ大会は、上智大学フォーミュラチーム「Sophia Racing」が3年ぶり5回目の優勝(総合優秀賞)を成し遂げた。これで3連覇(2006〜2008年)を含んで過去大会の半分以上を制したことになる名門チームだ。

 今回は2011年度プロジェクトリーダーの中野友祐さんとシャシーリーダーの稲吉太郎さんにインタビューする機会を得て、優勝マシン「SR10」の設計コンセプトや製作の苦労、そして2012年開催の次回大会への意気込みを聞いた。

左からシャシーリーダーの稲吉太郎さん、2011年度プロジェクトリーダーの中野友祐さん

――優勝おめでとうございます。第9回大会を終えていかがでしたか。今年(2011年)は3月11日に起きた大震災の影響もあり大変だったのではないかと思いますが。

中野さん:ちょうど設計を終えていざ車両を作り始めようというタイミングで地震が起き、その後3週間ほど大学に入ることができなかったため、その後の作業に影響が出ました。

稲吉さん:学校で設計の最終確認をした後、学食で食事をしていたときに揺れが来ました。まず皆で、真っ先に車両が壊れていないか確認に行きました。校舎の建物にはひびが入ったところもありましたが、幸い車両自体は無事でした。ただシェイクダウンには遅れが出てしまいました。昨年、一昨年と5月の終わりから6月の初めにはシェイクダウンしていたのですが、今年は6月の最終日曜までずれ込んでしまいました。

 (地震の影響は別として)シャシー(チーム)の反省点は計画性が足りなかったというところです。車両製作では大まかに何を作るかという計画は立てたのですが、「何月何日に何週間でこれを作る」といった細かいプロセスの計画が大ざっぱでした。期限ぎりぎりまで行動せず、ぎりぎりになってばたばたとやっつけ作業のようになってしまったものが多かったように思います。

 これは自分たちでも悔しかったので、来年に向けてはパワートレイン(チーム)やエアロダイナミクス(チーム)と小まめに連絡を取って、壁にぶつかったら「いま僕らはここでこういう部品が具合良くないんだけど、君たちの方でなんとかできる?」というような意見交換をしていきたいです。

編集部注:上智大学フォーミュラチームは、車両製作チームとしてシャシー、パワートレイン、エアロダイナミクスの3チームがあり、各スポンサー対応や遠征時の車やホテルの手配をする企画グループ、そしてドライバーで構成されている。



中野さん:うちのチームの特長としては、自動車部と協力してドライバを育成しているということがあります。他の大学では製作をやりながらドライバーもやるというところが多いですが、そこを切り離すことでドライバーに掛かるストレスを低減し、心配のない状態で走ってもらい、それによって最高のパフォーマンスを出してもらうことが目的です。

――車両全体の計画や大会向けのマネジメントはどうしていましたか。

中野さん:プロジェクトリーダーの僕と、企画グループ、車両製作チームの各リーダーとで話し合って、作業のアウトラインと大会までにいつ走行会をやってどういう風に車両を詰めていくかを決めていました。ただ最初の大ざっぱなところから、次の細かいところまでは決められず、行き当たりばったりでやっていったというのが正直なところです。今年はリーダーの間でのすり合わせが少なく、来年は余裕を持ってやっていけたらと思います。

――毎年車両は変わっていくと思うのですが、細かく役割を分けるのは、最初は見えていない部分も多いだけに難しいのではないかと思うのですがそのあたりの心配は。

デザインファイナルとSR10

稲吉さん:今年はすごくありました。今回のSR10ではリア側の構造をパイプフレームからモノコックに変え、エンジンも新しいものに変わったので、パワートレインチームもまず何をすればいいか分からない、僕もシャシーとしてどうやればいいのか分からず計画が立てられませんでした。今年1年やってきてそのあたりは見えてきたかと思います。

 いまはシャシーは来年3月までの計画は立て終わっていて、それを各リーダーに見てもらい「文句あったら言って」という感じで動いています。以前はいろいろ文句言われると傷ついたんですが、今度はあえていろいろな人から指摘をもらって自分のチームの劣っている部分を直していって、と思っています。

――今年からフロントだけでなくリアもモノコックになったということですが、モノコックを採用して何年目ですか?

後ろから見たSR10
2010年度の車両 SR09

中野さん:3年目です。僕がパイプフレームのみの車両を見ていた最後の世代で、一昨年のSR08と昨年のSR09はフロントモノコック、リアがパイプフレームを採用しました。今の3年生はパイプフレームのみの時代を知りません。パイプフレームはもうロストテクノロジーになっていて戻せと言われてももう難しいです。

2008年度の車両 SR07のパイプフレーム:いまやロストテクノロジー!?

稲吉さん:フロント、リア共にモノコックにしたことで、去年のようにフロントが堅くてリアが柔らかいという剛性の差が出てドライバーが思い通りの運転ができない、ということがなくなりました。以前はドライバーさんにリアがコンニャクみたいだと言われていたので、今年は文句言わせないぞと作ったら「リアの遅れが消えている」と言ってもらえました。

SR10のモノコック(カウルがない状態)
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