品質管理者必須の統計的手法 層別、チェックシート、パレート図実践! IE:現場視点の品質管理(9)(3/3 ページ)

» 2011年12月20日 12時00分 公開
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パレート図作成の手順

(1)データを採取する

 データの分類項目を決め、パレート図にまとめる期間中の記録やデータを集めます。期間を区切って計画的にデータを採取するわけですが、一般的には期間は1カ月程度です。データはできるだけ詳細(作業者別、時間別、ライン別など)に採取しておくと後の分析に役立ちます

(2)層別で分析する

 収集した記録やデータを機械設備別、発生位置別、原因別などに層別して、不良発生件数や損失金額の大きい順に並べる。項目は、「結果、原因、現象」に大別されますが、不良低減には、材料、作業方法、作業者、設備などの「原因」で分析する方が効果的です。また、項目ごとの件数や金額を累計し、全項目の合計件数(金額)に対する累計構成比率(%)を算出します。

不良項目 不良件数 (件) 累積不良件数 (件) 累積構成比率 (%)
キズ 16 16 40.0
材料 10 26 65.0
ゆるみ 6 32 80.0
面取り 5 37 92.5
異物混入 3 40 100
合計 40
表2 サンプルデータ

(3)データ量を棒グラフ化する

 層別して記録やデータの大きい順に棒グラフで書く。ただし「その他」の項目は、必ず項目の最後に記入する。

(4)累積構成比率を折れ線グラフにする

 各項目の不良件数を左から順に加えた値の全体に対する百分率(累積構成比率)を折れ線グラフで記入し、その目盛を右側に累積パーセントで示すと、その不良に影響している大きな原因と不良項目別の百分率(%)が一目で分かる。

図2 図2 パレート図の作成例

パレート図の活用

(1)改善の第一歩は、パレート図の作成

 改善を行うときに大切ことは、現場の人たちが一致協力して改善を進めることができることと、具体的な攻撃目標を選ぶことです。改善にたずさわる人たちが手当たり次第に改善の対象を決めて努力しても、努力の割に効果は少ない結果となります。

 パレート図を書いてみるとよく分かりますが、効果に大きな影響を与えているのは、2項目か3項目であって、残りの項目は結果に対して、占める割合は小さいことが分かります。

 私たちは、限られた人手や時間を能率よく活用して効果を上げることを目的としてパレート図を書き、上位1〜3項目を取り上げて重点的に皆で努力して改善を行うことにより、効率的に効果が得られるというわけです。「管理」で重要なことは、重点をおさえて仕事をすることですから、重点は何かを教えてくれるパレート図は、大切な分析ツールといえます。

 工場内の改善対象は、品質上の問題だけに止まらず、能率(効率)の問題、在庫の問題、安全の問題、倉庫管理の問題などがあります。取り扱う問題が何であろうと、ことが改善であるならば、どのようなことでもパレート図を活用することが結果的には効果的です。第一歩は、まずパレート図です。

(2)改善の効果の確認にもパレート図

 計画された改善が終了した後の効果を確認する場合にも、パレート図が用いられます。つまり、明らかに改善効果があった場合には、パレート図の横軸に並んだ項目の順序が入れ替わることで確認できます。

 しかし、一定期間ごとに作成したパレート図を並べてみたとき、その間に改善は実施していないにもかかわらず、横軸の項目の順序が著しく入れ替わっている場合は、その工程は日常の維持管理がしっかり行われていないことを示していますので、特に注意が必要です。

(3)パレート図作成状の注意

 パレート図の縦軸の目盛は、件数、時間などが多いでしょう。件数や時間が損失金額と比例しているのであれば、それでも構いません。しかし、不良や欠点の1個当たりの損失金額は、その内容によって著しく変わる場合が多くあります。このような場合にパレート図を本当に生かして利用していくためには、それぞれの項目の不良や欠点がもたらした損失が分かるように、縦軸を損失金額にした方が現実的です。

 そのためには、項目ごとに1件当たり、または1時間当たりの損失金額を知らなくてはなりませんが、このようなときには、経理部門や原価管理部門と相談して、それほど詳しいものでなくてもいいのですから、項目ごとの1件当たりのおおよその損失金額を決めておき、件数や時間ではなく、損失金額でパレート図を書くようにすると非常に分かりやすくなります。特に、件数が多くても、損失金額としては小さい場合、また逆に、件数が少なくても損失金額が大きい場合があることに注意しながら効果的な改善の実施を行っていかなければなりません。

 重要項目について、源流原因までのパレート図を作成しながら問題を解決していくとき、最初から源流原因(真因)別分析ができれば望ましいでしょう。それが難しい場合には、最初に結果別で分析し、その中の重要項目について原因別分析し、その中の重要項目をさらに源流原因別分析するというように、順に上流にさかのぼっていく分析で真の原因を見つけて対策していくと大きな成果を得ることができます。

◇ ◇ ◇

 統計手法の書き方や計算方法をいくら覚えたところで、それがどのような意味を持つものかを十分に認識していなければ、ただ「報告」を飾る体裁に過ぎません。とにかく、勉強して得た知識を使ってみることです。そして、失敗や障害にぶつかってみることです。その積み重ねによって、初めて自分ものになっていくのだと思います。統計は目的ではなく手段に過ぎません。常に、「何のために(目的)、その手法を用いようとしているのか?」「その結果として何が分かったか?」を記述してみる習慣を身に付けることが大切です。

 次回は、問題抽出に用いられる「特性要因図(Cause-effect Diagram)」について説明します。小集団活動などでよく利用されていますが、効果的に活用されていない手法の1つだと思います。ご期待ください。

⇒前回(第8回)はこちら
⇒次回(第10回)はこちら
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筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)


日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。


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