価格性能比に優れた太陽電池とは小寺信良のEnergy Future(11)(4/4 ページ)

» 2011年12月22日 11時10分 公開
[小寺信良,@IT MONOist]
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スッキリしたデザイン以外のメリットとは

 この製造工程の違いは、製品の見た目にも大きく現われている。結晶シリコン系が複数のセルを連結することですき間ができ、モザイク模様になることと比べると、CISは黒一色の1枚板で、見た目もすっきりしている。デザインのよさから、家庭用で選ばれる例も多いという(図7)。

図7 CIS太陽電池モジュール つなぎ目のない真っ黒な1枚板である。

 さらに製造プロセスでのメリットもある。結晶シリコン系に比べて製造工程が短いことだ(図8)。工程を拾っていけば約3分の2で済むことから、製造コスト面でも量産効果によるメリットが出やすい。さらに結晶シリコン系は、インゴットを形成する前に結晶化工程で、どうしてもある程度の時間と電力が必要になるという難点がある。

図8 製造工程の比較 CIS太陽電池(赤)は結晶シリコン太陽電池(青)と比べると必要な製造工程が少ない。さらに材料の使用量も少ない。出典:ソーラーフロンティア

変換効率は何を意味するのか

 CISのモジュールの変換効率は、結晶シリコン系よりもずいぶん効率が悪く見える。現在ソーラーフロンティアのCIS主力モデルでは12.6%、チャンピオンモデルで13%を超える程度である。

 ソーラーフロンティアによれば、実は現在の出力測定法では、CISの本当の実力がうまく測定できないという。JIS規格で定められた測定方法は、決められた室内環境で一瞬だけキセノンランプなどを使って光を照射し、太陽電池の出力を測定している。

 CISには「光照射効果」という現象が起きる。太陽光に照射されて数日たつと出力性能が上がるという現象だ。工場出荷時の測定結果よりも、10日以上照射を受けた段階での測定結果の方が、出力が向上することが分かっている。つまり公称最大出力150Wのパネルでは、実際には160Wぐらい出るということも起こり得る。年間発電量ではシリコン系に比べ10%程度多く発電したというデータもある(図9)。

図9 CIS太陽電池の光照射効果 暴露試験における出力の変化を示した。日光にさらすと出力が初期値よりも上がる。出典:ソーラーフロンティア

 現在はパネルの優劣を検査機関が測った変換効率で判断するというのが一般的だが、実際に現場に設置した状態で太陽光を当ての出力を見てみないと、正確な能力が分からないことになる。これは他社も条件は違えど、同じだろう。これをどのような比較パラメータで顧客に伝えていくかが、今の太陽電池業界全体が抱えている課題である。


筆者紹介

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小寺信良(こでら のぶよし)

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

Twitterアカウントは@Nob_Kodera

近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)



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