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» 2012年01月06日 12時11分 UPDATE

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(17):「仏像は顔が命」日本人の心が生きるLED照明 (1/3)

仏像を愛する異業種の経営者2人が手を組んで生み出した仏像フィギュアケース。日本人ならではの繊細さでLEDを制御する。

[三木康司/enmono,@IT MONOist]

 前回紹介したMORITAは、同社が長年培ってきた技術を用いて、優れた仏像フィギュアを生み出したメーカーでした。そして同社の「イSム(イスム)」ブランドのファンたちが求めていたのは、フィギュア本体の緻密さや精巧さだけではありませんでした。それは、「ユーザーが自分の仏像を自宅で“どうやって飾るか”“いかに見せるか”」の技術です。

 今回紹介するのは、MORITAの仏像フィギュア イSムを最も美しく見せるように設計されたLEDケース「Yuragi(ゆらぎ)」です。MORITAとコラボレーションをした企業 ブライトチップスを視点としたストーリーです。

yk_enmono17_01.jpg 仏像フィギュアメーカーと、仏像好きLEDのプロがコラボしてできた! LED照明付きケース Yuragi
yk_enmono17_02.jpg Yuragiに格納したイSム「如意輪観音」フィギュア

鉄道模型の照明をリアルに

yk_enmono17_03.jpg ブライトチップス 代表取締役社長 林真一氏

 この仏像ケースを開発したブライトチップスは、もともと半導体設計者であった林真一氏が独立して立ち上げた会社です。立ち上げ当初の主要な業務は半導体のコンサルティング業務でした。

 ところが同氏の趣味が高じて、2003年から鉄道模型専用のLED照明を発売します。鉄道模型の内部を本物の鉄道と同様の発色で照らすというものです。それぞれの鉄道模型に発色をカスタマイズした専用のLEDライトを提供し、ユーザーはそれを購入して自宅で自分の鉄道模型に組み込むというわけです。

 2004年には、そのLED技術とフラットリフレクター(フラットディスプレーの光拡散技術)を組み合わせた製品を作り、鉄道模型界で一躍有名となりました。

 鉄道模型を夜間時のライトと全く同様に発色をさせるということには、芸術的感性を強く要求されます。実際、標準の鉄道模型に付属しているLEDランプは、それが可能なものはあまり多くはなかったということです。

yk_enmono17_04.jpg ブライトチップスのLEDを搭載した鉄道模型

 そんな林氏のLED技術と芸術的感性が、その後、思わぬところで発揮されることになります。

林氏と仏像フィギュアとの出会い

 林氏は、幼少の頃から仏像などの造形の美しさにひかれて、仏像の写真集などを手に取りつつ、いろいろな仏像を見てきたそうです。

 2007年ごろ、林氏はたまたま、MORITAのミニチュア木製仏像「薬師如来 日光・月光菩薩像」の存在を知り、興味を持ちました。それを製造している会社の情報を調べたところ、MORITAは林氏の事務所に近いことが分かりました。なので、まずはMORITAを訪問して、現物の木製仏像フィギュアを見せてもらおうと林氏は考えたのです。

 そうして出会ったMORITAの代表取締役 森田滋氏と林氏は、すぐに意気投合。初対面にもかかわらず、非常に話が盛り上がったそうです。その後も、MORITAの仏像フィギュアの試作を見せてもらいつつ、両氏の交流が続いていきました。

普通のケースで仏像フィギュアを飾るなんてもったいない

 林氏が仏像フィギュア専用のLEDケースの開発に着手したのは、森田氏と林氏の出会いから1年経過した2008年ごろでした。

 林氏が森田氏と交流を重ねるうちに気になったのは、仏像フィギュアを飾るケースのことでした。当時のMORITAが扱っていた仏像フィギュア用のケースは、一般的なフィギュアを入れるケースのみ。

 林氏は、MORITAの作る仏像フィギュアの出来の素晴らしさ故に、一般的なガラスケースでそれを飾るのは“もったいない”と感じたと言います。

 林氏は森田氏に、

 「仏像フィギュアをきれいに見せるなら、LED照明付きのガラスケースだ」

という提案を投げ掛けました。

 しかし、そのときの森田氏は、頭の中に「?」マークを幾つも浮かべているような、いかにも“ピンと来ていない”表情をしていたそうです。

 それでも林氏の「仏像フィギュア専用ケースを開発したい!」という思いは揺るぎません。そこで、同氏が得意とするLED技術を使い、ひとまず“個人の趣味”として、オリジナルの仏像フィギュアケース開発を始めることにしたのです。

 まず林氏は、森田氏にお願いして「阿弥陀(あみだ)如来像」フィギュアを一体借りてきました。

 そして、本業である半導体の設計コンサルティングの仕事を続けながら、毎晩のように、作業場に持ち込んだ阿弥陀如来像フィギュアと“にらめっこ”です。ガラスケースにLEDを仕込み、「どの角度で」「どんな色温度の」光を当てれば、最も仏像フィギュアが美しく見えるのかを試行錯誤しました。

 白色LEDの光線は、「真っ白な光」から、「青みがかった白」「オレンジがかった色」「紫がかった色」など、実にさまざまな色を作り出すことができます。この取材で実際にLEDライトを見せていただくと、私が思っていたよりも、さまざまな色温度が存在することを知りました。その色調は、まさに無限に近いといえるパターン数で、その上、ちょっとした色調整の差で人間の目は別の色調として捉えてしまうのです。

yk_enmono17_05.jpg さまざまな色温度をもつLED

 色調を選別されたLEDは、さらに接続されたコンピュータ基板から信号を送ることで輝度調整をされながら、妖艶な雰囲気を作り出します。

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