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» 2012年01月13日 10時42分 UPDATE

金山二郎のAndroid Watch(3):「IceCreamSandwich」はAndroidの将来を照らす光明となるか (1/2)

金山二郎のAndroid Watchの第3回。2011年はAndroidにとって混迷を極めた1年であったといえる。そんな中、さまざまな不安を吹き飛ばす存在として、待望の「IceCreamSandwich(Android 4.x)」が登場した。今回は激動の2011年を振り返るとともに、ICSの全体像を踏まえた上で、2012年のAndroidの展望を占う。

[金山二郎(イーフロー),@IT MONOist]

 ついに、待望の「IceCreamSandwich(以下、ICS)」がリリースされました。ICSはいったん停止したオープンソースの復活や2つの枝に分かれてしまったAndroidソースツリーの再統合という大きな役割を担っています。また、そのような問題が起こったあたりから、Androidを取り巻く状況が目まぐるしく変わりはじめ、先の見えない混沌(こんとん)とした状態に陥りました。

 何がどうなるか分からない状況は当分続くと考えられますが、ICSの登場はAndroidの将来を確かに照らす光明となります。今回は、混迷を極めた2011年を振り返りながら2012年のAndroidの展望を占います。

激動の2011年

 2011年は東日本大震災が発生したこともあり、日本が世界中から注目された年でした。その影響は多岐にわたり、東北沿岸部の方々のご苦労とは比較になりませんが、IT業界も決して無関係ではありませんでした。

 筆者の住む関東圏ではまず計画停電からはじまり、余震の多かったころには出社できず自宅にいるしかない状態となりました。セキュリティ上、仕事環境を簡単に家に持ち帰ることもできず、かといって仕事には大抵契約期間がありますから、先の状況が見えず連絡すらままならない中で、作業場所、作業範囲、納期などに関する調整を迫られました。

 日常生活においては、街中や電車内で携帯電話が一斉に、緊急地震速報を示すあの妙な音を奏で出すことが度々ありました。夜道は暗く、寒さも手伝って、あのころは本当に気を休めることができない暮らしを強いられました。

 さて、携帯電話の話題になりましたが、震災当時、スマートフォン(以下、スマホ)はほとんど緊急地震速報に対応しておらず、一斉に鳴り出したのは旧来からあるいわゆる“ガラケー”でした。当然のことながら、スマホは日本で育て上げたわけではなく、いわば外来種です。一方、そのネーミングのゆえんでもありますが、ガラケーは日本国内でガラパゴス諸島に生息する生物に例えられる独自の進化を遂げており、絵文字などからはじまり、緊急地震速報やおサイフ機能を世界に先駆けて搭載しました。

 しかし、スマホの攻勢は圧倒的であり、ガラケーとスマホのシェアは近い将来に入れ替わると予想されました。このため、2010年の時点で、各携帯電話事業者の投資先はスマホに切り替わっていました。震災を経て、各携帯電話事業者は自社ブランドのスマホについての緊急地震速報への対応を急ぎました。そして、2011年9月、NTTドコモが従来機については上位機種を販売せずスマホに切替えるという発表をし、これで日本国内におけるスマホの将来が決定しました。

 Androidはといえば、前回述べた通り、「よくもここまで」と思うばかりの混迷ぶりを見せました。品質と互換性への不安、アップデートへの不安、特許と裁判への不安、ソース非公開と分断したソースツリーへの不安と、スマホを中心としたプラットフォーム戦争の中で、2011年はAndroidに対する懸念が渦巻いた1年であったといえます。その多くの不安を吹き飛ばしたのが、ついに公開されたICSでした。

IceCreamSandwichの全体像

 もはやあらためて説明する必要もないことですが、ICSはAndroidのバージョン“4.x”の通称です(図1)。

Androidのバージョンとコードネームの対応 図1 Androidのバージョンとコードネームの対応 
Androidのバージョンとコードネームの対応表。アルファベット順にお菓子の名前を並べるアメリカ人らしい発想

 ICSはまずSDKが2011年10月18日に公開され、次いで4.0.1のソースコードが11月14日に公開されました。ちなみに、“3.x”のソースコードも一緒に公開され、Honeycombのオープンソースの利用価値は別にして、Honeycombライセンスに縛られた期間が終わりました。12月16日には早くも“4.0.3”が公開され、世界中の開発者が前バージョンからの差分をチェックしています。

 新機能についての詳細は、さまざまな形で紹介されていますから詳しく述べませんが、全体的にはHoneycombの機能を受け継ぎながら、さらに新しいAPIも盛り込んだ形となっています。とにかく盛りだくさんの新機能をこれでもかと見せ付けるところは、シンプルさとトータルバランスを重視するアップルとの指向性の違いがよく現れています。ただし、だからといってアップル製品の機能をカバーできているわけでもなく、例えばスペルチェックなどは「iOS4」から搭載されていた機能をAndroidが追い掛けた格好になっています。また、フォントやUIなどの直接的なユーザー体験も新しくなりました。

 このような機能追加は、ユーザーはもちろんのこと、開発者にも大きく影響します。新しいAPIについて使い方を覚えなければいけないのは当然のこととして、Googleは投入スピードを重視しているためか、仕様として非公開ではあるものの実装としてはアクセス可能なAPIを混ぜた形でリリースしています。これらのAPIは将来的にも使えることは保証していませんし、Googleの場合は公開APIですらその将来が確かであるともいえません。ネイティブライブラリの実装を他のものに替えることで、APIにも多少なりとも変更が加わるといったこともあり得るからです。特に、新しいAPIを使用する場合、また、やめた方がよいといわれていますが、やむを得ず非公開APIにアクセスするような場合には、それらAPIの将来についての考察が欠かせません(図2)。

New Public APIs in ICS 図2 New Public APIs in ICS 
ICSの新APIを解説するWebページ。その冒頭で、非公開APIへのアクセスに対する警鐘が語られた

 ビルド環境への負荷も上がる一方で、RAMは推奨16Gバイト、ソースツリーをダウンロードするのに8Gバイト、1つのコンフィギュレーションのビルドに25Gバイトを要するとのことです。RAM16Gバイトのビルド環境を持っている人もなかなかいないでしょうし、GingerBreadのソースツリーが3Gバイト強であったことを考えると、ICSは倍以上に膨らんでいます。

 しかし、実際、16Gバイトといわずとも、今の20万円程度のPCであれば1〜2時間でビルドできるようですし、8Gとか25Gといっても、最近のSDカードにも十分収まる大きさです。PandaBoardなどのリファレンスターゲット向けコンフィギュレーション対応もあり、開発者向けの努力がうかがえます。

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