怖い瞬低をキャパシタで解決、中部電力が大容量装置を開発スマートグリッド(1/2 ページ)

停電や電圧低下はわずかな時間であっても、さまざまな悪影響を及ぼす。中部電力は1000分の2秒という短時間で応答できる停電補償装置を開発、大手工場でのフィールド試験を開始した。

» 2012年01月20日 18時30分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
怖い瞬低をキャパシタで解決、中部電力が大容量装置を開発 停電の悪影響

 中部電力は明電舎と共同で、瞬間的な電圧低下を復旧する蓄電装置「リチウムイオンキャパシタ式短時間停電補償装置」を共同開発したと発表した。既に、2011年12月から有機材料大手のJSR四日市工場でフィールド試験を開始している(図1)。フィールド試験を今後2年間継続し、2014年に商品化する予定だ。

図1 リチウムイオンキャパシタ式短時間停電補償装置 屋外に設置した装置の外観(左)。幅12.3m×奥行き3.2m×高さ3.5mと巨大だ。三相6600Vの配電線に接続して使う。出力容量は1000kVW。最大20秒の停電に耐えられる。装置内部の様子(右)。出典:中部電力

 工場設備などではわずかな電圧低下が致命的になる場合がある。例えば、2012年1月17日に東京電力管内で発生した電圧低下では、北関東の複数の自動車工場で生産ラインが停止するなど幅広い被害が発生している*1)。半導体製造工場では、瞬低によりラインが停止すると、製造途中の仕掛かり品を全て廃棄の対象となることもある。

*1) 瞬低は落雷などが原因となって発生する。1月17日の瞬停は、福島県の南いわき開閉所の設備で不具合が起きたために起こった。福島第一原子力発電所の一部の設備が停止した他、企業内のサーバや個人のPCが停止するなどの被害もあった。

 中部電力の装置は、瞬低が起きた場合、2ms(1000分の2秒)以内に復旧できる(図2)。従来の同様の装置*2)と比較して、停電時に電力を維持できる時間を2倍の20秒に高めた。キャパシタの方式を変更し、蓄電容量を3倍に高めたことで実現した。

*2) 従来の装置「電気二重層キャパシタ式瞬時電圧低下補償装置」は、中部電力が明電舎、指月電機製作所と共同で2004年に開発したもの。切り替え時間(2ms)や電圧(6600V)は今回の装置の仕様と同じだが、容量が小さかった。

図2 装置の動作 通常は半導体切り替えスイッチによって、装置内部には電流が流れ込まない(図上)。瞬低(停電)が発生すると2ms以内に半導体切り替えスイッチが切り替わり、電気設備に通常通りの電力を供給する。出典:中部電力
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