インタビュー
» 2012年01月24日 11時30分 UPDATE

インタビュー 電気自動車:最強のスポーツカーを作るには、テスラの技術責任者に聞く (2/3)

[畑陽一郎,@IT MONOist]

電池の選択がカギ

MONOist 長距離走行を実現するには電池がカギだということか。では、なぜEV専用の二次電池を使わずに、汎用品として使われている小型の「18650」型を採用したのか。

Kelty氏 Tesla Roadsterの仕様を満たす電池はリチウムイオン二次電池でなければならないことは分かっていた。長距離走行が必要で、高速走行を目指していたからだ。

 だが、8年前の開発時点では、大型で角形のEV専用電池は入手できなかった。テスラがスタートアップしたばかりの企業で、無名だったこともあるが、そもそもEV用電池はまだ量産されていなかった。従って選択肢は18650型しかなかったといえる(図3)。

 この判断は後から考えても非常に良かったと思う。現時点でもう一度、過去の選択をやり直せるとしても、18650型を選択する。現在はさまざまなEV専用電池が入手できるが、それでも18650型を選ぶ。18650型は技術的にベストだと考える。特に電池寿命を考えると、このような判断になる。

20120124Tesla_cell_590px.jpg 図3 Tesla Roadsterが採用した18650型セル 寸法は直径18mm×長さ65mm。テスラによれば、各社による18650型の生産規模は年産10億個であるという。出典:Tesla Motors

EV用電池として優れる18650型

MONOist 18650型がベストな選択だというが、それはなぜか。技術的な問題なのか、それともコストなのか。

Kelty氏 1つは実現できるエネルギー密度(単位重量当たり:Wh/kg、単位体積当たり:Wh/L)だ。大型の電池と比べると、18650型はエネルギー密度が高い。比較にならないほどだ*3)。エネルギー密度が高ければ、EVに搭載する電池の体積や重量を減らすことができる。

*3) テスラによれば、Tesla Roadsterの二次電池モジュールの重量エネルギー密度は121Wh/kgであり、これは日産「リーフ」の79Wh/kgや三菱自動車「i-MiEV」の80Wh/kgより高いという。

 コストを考えても有利だ。具体的な部品コストを話すことはできないが、安価な理由は説明できる。

 18650型の生産設備は日本や韓国、中国などに分散している。これは18650型が民生品に広く使われているからだ。Tesla Roadsterに組み込んだ18650型は汎用品とは仕様が異なる。EV用だ。だが、生産設備は汎用品と同じだ。EV用を生産するからといって、先方が新たな設備投資を行う必要がない。これがコストに効く。

 18650型の製造が始まって既に20年程度たっている。生産に必要な時間は短くなっており、不良率も下がり切っている。バラツキも少ない。これらは全てコスト低減につながる。

MONOist 小さな18650型のセルをたくさん集めてパッケージ化するよりも、EV用の大型セル1個を選んだ方が、エネルギー密度を高められるのではないか。

Kelty氏 それは違う。18650型のセル1本の容量が10Whだとしよう。すると10本で100Whになる。10本を容量100WhのEV用大型セルと並べてみると、どちらの体積が大きいか、どちらが重いのか、実物を見れば分かるが、18650型の方が有利だ。

 こうなる理由は、EV用大型セルはそもそも18650型とは電池の設計が違っているからだ。化学(材料)も異なっていて、18650型と同じエネルギー密度に高めることができない。

 エネルギー密度を考えるとき、もう1つ忘れてはならないのが、セルだけでなく、モジュール全体を考えるということだ。角形で大型のEV用セルを採用したとしよう。角形セルをすき間なく敷き詰めたらどうなるだろうか。セルに対してヒーティングやクーリングを施さなければならないことを考えれば、セル同士の間隔は空けなければならない。さらに、セルの体積が大きくなると、それに応じて表面積の比率が小さくなる。つまり、ヒーティングやクーリングが効きにくくなる。

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