スズキが燃料電池車の開発手法を一新、英社との合弁会社を軸に電気自動車

スズキは燃料電池車の開発方針を一新させる。これまでは燃料電池の供給を受け、燃料電池に適合する既存の車種に合わせて開発していた。今後は、新たな合弁会社を中核として、一から燃料電池車を作り上げる。

» 2012年02月08日 11時20分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
スズキが燃料電池車の開発手法を一新、英社との合弁会社を軸に 水素燃料電池車

 スズキと英Intelligent Energyは、2012年2月7日、燃料電池システムを開発・製造する合弁会社SMILE FCシステムを設立すると発表した(図1)。出資比率はそれぞれ50%。本社をスズキ本社(浜松市)内に置き、研究施設をスズキの横浜研究室に置く。

 Intelligent Energyの燃料電池開発技術とスズキの制御技術、量産技術を組み合わせて燃料電池車(二輪車、四輪車)の開発、製造に本格的に取り組むのが目的だ。「合弁会社の人員規模は公表していないが、10人程度である。研究テーマに応じて、スズキやIntelligent Energyから技術者を送り込んで開発を進める」(スズキ)。

図1 両社の首脳 スズキ会長兼社長の鈴木修氏(右)と、Intelligent EnergyでCEOを務めるアンリ・ウィナン(Henri Winand)氏。両社は2007年2月に燃料電池についてパートナーシップを結んでいる。出典:スズキ

 スズキはこれまでもIntelligent Energyから空冷式の燃料電池セルの提供を受け、燃料電池搭載二輪車を開発してきた(図2図3*1)

*1) 2011年3月にはスズキの「バーグマン フューエルセル スクーター」が、燃料電池を搭載した車両(二輪車または四輪車)としては世界で初めて欧州統一型式認証:WVTAを取得している。WVTAとはEU加盟国全体で販売が可能な型式認証だ。

図2 スズキの「バーグマン フューエルセル スクーター 東京モーターショー2011(2011年12月開催)に出展した実車のカットモデル。全長2055mm×全幅740mm×全高1360mm。燃料電池とリチウムイオン二次電池のハイブリッッドシステムとなっており、加速時や上り坂など負荷が高い場合は両方からモーターに電力を供給する。減速時(回生時)や停止時にはリチウムイオン二次電池に電力を蓄えておく。
図3 図2の一部を拡大したところ 空冷式固体高分子形燃料電池(右上)や交流同期電動機(右下)、発電した電力を一時的に蓄えるリチウムイオン二次電池(左)、700気圧まで充填可能な水素タンク(左下)などが見える。

 それにもかかわらず今回、合弁会社を設立した目的は何だろうか。「これまでは供給を受けた燃料電池セルに適合する既存の二輪車を選んで、燃料電池車を開発していた。今後はパワーユニットとして燃料電池セルを用いた二輪車をゼロベース開発する形になる」(スズキ)。従来は空冷式燃料電池セルに適合する排気量のスクーターを選んで搭載していたが、今後は空冷式や特定の排気量にはこだわらないという。

 なお、スズキは燃料電池車開発で、他の自動車グループとは連携しない姿勢を継続する。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダは2011年1月、エネルギー事業者10社とともに、「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表(関連記事)。2015年に4大都市圏(首都圏、中京圏、関西圏、福岡県)を中心とした地域に燃料電池車の量産車を導入する計画を明らかにしている。

 「当社は他の3社とは連携しておらず、2015年という目標も共有していない」(スズキ)。Intelligent Energyとの協力による燃料電池車開発が完了した段階で市場に参入する。


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