日本の太陽電池産業、明らかな成長の影で進む構造変化スマートグリッド(1/3 ページ)

太陽電池の年間国内出荷量が初めて1GWを超えた。住宅向けが対前年同期比137.7%となり、メガソーラーなどの発電事業用は前四半期比3.7倍に伸び、明るい数字が並ぶ。しかし、安定しない輸出、増え続ける輸入、さらには屋台骨だったSi(シリコン)多結晶太陽電池の低迷など不安要因もある。太陽光発電協会(JPEA)が公開した統計を分析した。

» 2012年02月16日 14時10分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
日本の太陽電池産業、明らかな成長の影で進む構造変化 単結晶Si太陽電池

 日本の太陽電池産業は成長している。国内全体で生産能力の増強が続き、世界市場の伸びに追い付いてはいないものの、国内の市場規模も着実に成長しているからだ。だが、国内企業の動向を見ると、輸入が一貫して伸び、輸出が安定しないなど不安材料が残る。実際の所、何が起こっているのだろうか。

 太陽光発電協会(JPEA)と光産業技術振興協会は、2012年2月15日、国内企業34社が2011年度第3四半期(2011年10〜12月)に出荷した太陽電池セルと同モジュールについての統計を発表した(図1)。

 総出荷量は対前年同期比で106.5%の72万7651kW(727.6MW)に成長した。対前期比でも103%である。なお、総出荷量は国内生産と輸入、輸出という3項目を合計した数値だ。図1では国内生産と輸入を合わせて「国内」と表示している。

図1 国内メーカー34社による太陽電池の出荷量 2011年度第3四半期(2011年10〜12月)は過去最高の出荷量となった。国内出荷の用途別では住宅用が81.5%(対前年同期比137.7%)を占める。発電事業用(メガソーラーなど)は前四半期比で3.7倍に伸びており、今後の成長も期待できる。単位はkW。出典:太陽光発電協会(JPEA)

 JPEAは2011年(暦年)の集計値も発表している。総出荷量は275万8881kW(2758.9MW)、国内出荷量は129万6073kWである。国内出荷量は2011年、初めて1GWを超えた

 暦年の輸出は146万2808kW(前年比101.2%)。ただし、全出荷量に対して輸出の占める割合は53.0%であり、昨年よりも6.3ポイント低下した。

 出荷統計とは別に、暦年の生産能力も集計した。2011年12月末現在の年間生産能力は8166MW、1年後の計画は9111MWである。2009年12月末時点の生産能力は2337MW(1年後の計画は3142MW)、2010年12月末時点では2998MW(同4618MW)だったことから、2011年12月末時点の生産能力が当初の計画の1.77倍にも増えていることが分かる。

国内市場の質的変化が明らかに

 今回の出荷集計値を過去の推移と比較すると、幾つかの傾向が浮かび上がる。

 第1の傾向は、成長路線が安定しない輸出と、国内市場の手堅い成長、さらに国内市場を目指した海外生産品の流入の大幅増加だ。

 第2の傾向は、太陽電池の種類に入れ替わりが見られること。「Si(シリコン)多結晶」が落ち込み、「Si薄膜・その他」が急速に伸びている。

 「中国に押しつぶされる米国の太陽電池業界、次は日本か」(記事)で触れたような状況に日本が進んでいくのか、それとも日本では違うのか。次ページからは、今回の出荷統計から明らかになった2つの傾向を軸に解説する。

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