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» 2012年02月17日 19時20分 UPDATE

スマートグリッド:あなたの部屋にもガスタービン、IHIが手のひらサイズを開発

非常用発電機として需要が高まっているガスタービン発電機。しかし、何トンもの重量があり、気軽に設置できるものではない。このような常識を覆したのがIHIだ。2015年に発売を計画する400W出力の量産品は重量わずか5kg、価格も200万円だ。

[畑陽一郎,@IT MONOist]
あなたの部屋にもガスタービン、IHIが手のひらサイズを開発 手乗りガスタービン発電機

 石炭火力発電などと比べて、比較的短時間に低コストで増設できるガスタービン発電が注目を集めている。とはいえガスタービン発電機は電力会社や大口需要家に向けたもの。価格も数千万円である。用途は限られている。

 このような常識を覆す装置をIHIが開発した。同社が世界初と主張する「携行型超小型ガスタービン発電機」である。2012年2月16日、自立発電実証に成功した。

 開発したガスタービンは直径8cm、長さ12cmであり、1.2kgと軽い(図1)。このサイズで発電機も内蔵する。プロパンガスを供給することで、毎分40万回転(40万rpm)で動作し、400Wの電力を生み出す能力がある。

20120217IHI_259px.jpg 図1 発電機内蔵ガスタービン 「現時点の効率は5%だが、小型熱交換機を外付けすると15%になった。量産時は20%にまで高めたい」(IHI)。エネルギー密度やパワー密度では、二次電池や燃料電池などを大きく超える潜在能力があるという。出典:IHI

 開発したのは航空エンジンや宇宙機器を製造しているIHIの瑞穂工場(東京都瑞穂町)。航空機のエンジンはガスタービンと同じ原理で動作しているため、ジェットエンジンやターボチャージャーなどの技術を応用したという。

 「小型化で苦労した点は2つある。1つは軸受けだ。ボールベアリングでは摩擦が生じるため、小型の空気軸受け(フォイル軸受け)を開発した。もう1点はタービンの発する熱を遮ること。定置型ではないため、高熱になることはできない」(IHI)。ガスタービンの燃焼温度は900℃だが、排気温度は70℃と低い。

 ガスタービンを組み込んだプロトタイプのパッケージ(図2)も13kgと持ち運べる重量だ。商品化時には体積を約半分に縮め、重量も5kgを目指す。

20120217IHI_package_345px.jpg 図2 携行型超小型ガスタービン発電機のプロトタイプパッケージ 図1に示した発電機内蔵ガスタービンに冷却ファンと消音器を追加し、燃料タンクや電装系、補機類、エンジン起動用電池を組み合わせたものだ。起動ボタン1つで発電を開始し、動作時の騒音も低い(33万rpm時、60W発電時の騒音は44dBA、7m側方で測定)。寸法は58cm×20cm×40cm。出典:IHI

自治体やロボットを狙う

 同社はガスタービン自体は販売せず、パッケージ化にした製品を作る。「2015年には商品化したい。写真のようなパッケージ品であれば、量産時の価格は約200万円である」(IHI)。

 今回の形状のパッケージは、個人向けや自治体向けを考えたものだという。災害時の非常用電源として利用できるほか、車両が進入できないような山岳地などで電力を供給でき、充電器としても使える。大出力化への要望は、ガスタービンを並列配置することで実現する。開発品はプロパンガスで動作しているが、量産時は灯油や軽油での動作も可能にするという。

 このガスタービンは起動性にも優れる。起動から定格発電開始まで約30秒であり、停止まで2分半と短い。このため、携行用途以外も考えられる。「現在、モーターで動いている自律型ロボットの動力源も狙いたい」。ホンダの「ASIMO」がガスタービンで動作するところを見ることができるのだろうか。


 小寺信良氏の連載記事では、今回のガスタービンについてより詳細に解説しています。動作状態が分かる動画も撮影しました。記事は、こちらから。


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