プリウスの使用済み電池が「大容量蓄電システム」に、トヨタが実証実験開始電気自動車

電気自動車(EV)を住宅と接続して互いに電力を融通する仕組み作りが進んでいる。だが、電池の実数では既に一定の地位を築いたハイブリッド車(HV)の方が多い。トヨタはHVの使用済み電池を使った大容量蓄電システムの活用を目指す。

» 2012年02月20日 11時40分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
プリウスの使用済み電池が「大容量蓄電システム」に、トヨタが実証実験開始 HVの電池

 小規模オフィスや小型店舗、一般住宅などまさに身の回りにも大容量蓄電池の備えが必要になってきた。小規模な太陽光発電システムと大容量蓄電池を組み合わせれば、停電や災害に強い街作りができるからだ。

 リチウムイオン二次電池はまだまだ高価であり、数kWhの容量でも100万円以上の導入コストが掛かる。このため、電気自動車(EV)の電池を再利用する研究開発が進んでいる。例えば日産自動車の「リーフ」を使った研究だ(関連記事:EVの使用済み電池はまだ使える、日産が北米で実証実験へ)。

大量に販売されているHVこそ有効

 トヨタ自動車も、電池の再利用に乗り出す。同社のハイブリッド車(HV)「プリウス」は既に3世代目に入っており、プリウス以外にもHVのラインアップをそろえていることから、使用済みニッケル水素二次電池の回収数は2010年(暦年)に5654個に達しており、今後ますます増えていく*1)。2011年の回収見込みは6000個である。そこで、HVで使用済みとなったニッケル水素二次電池(図1)を大容量蓄電システムとして利用する実証実験を開始する。

*1) これまでは販売店で回収したニッケル水素二次電池をいったん原材料にまで解体し、新しい電池を製造する際の原料としてリサイクルしていた。

図1 「アクア」の電池モジュール ニッケル水素二次電池のセルは、従来のプリウスと同じものだ。写真のモジュールでは120セルを内蔵する。プリウスは186セルである。

 2012年2月24日、名古屋トヨペットの太田川店(愛知県東海市)にHVの使用済み電池を利用した「定置型蓄電システム」を構築、性能や耐久性、CO2(二酸化炭素)削減効果、省エネ効果を検証する。なお、太田川店では壁面や屋根に太陽電池を設置する。

 2012年3月には「北九州スマートコミュニティ推進事業」*2)の一環として豊田合成の北九州工場(北九州市八幡東区)にも定置型蓄電システムを設置し、2カ所で実証実験を並行して進める。検証期間は1年間だ。

*2) 国が支援する「次世代エネルギー・社会システム実証」の1つ。2011年度は20の事業が採択されている。トヨタ自動車と豊田合成、豊田自動織機が参加する「工場における太陽光発電+高性能LED+PHV(プラグインハイブリッド自動車)等を組み合わせたエネルギーマネジメントシステム」事業もその1つ。「ただし、定置型蓄電システムでは、PHVへの充電までは考えておらず、住宅や小規模なオフィスへの給電を想定している」(トヨタ自動車)。

 実証実験に使う定置型蓄電システムの寸法は、幅100cm×奥行き80cm、高さ180cm。容量は7kWh。これは一般家庭の1日の消費電力よりわずかに少ない容量だ。「実証実験では容量が90%まで減った電池を使う」(トヨタ自動車)。第2世代のプリウスのニッケル水素二次電池を使うのであれば、6台分に相当する。「今後、システムの効果を見ながら、どの車種の何%容量の電池を何個組み合わせるのかを決めていく」(トヨタ自動車)。

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