マジックハンドなど面白動作の多節リンクたちメカメカリンクで設計しよう(11)(2/2 ページ)

» 2012年03月09日 10時10分 公開
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【No.51】スコットラッセルの厳正直線運動

 このリンク機構は、駆動ピンが水平移動すると、その直角方向に従動ピンを直線移動させ、従動ピンは厳密な直線を描きながら動作します。

スコットラッセルの厳正直線運動 図7 スコットラッセルの厳正直線運動

【No.52】ブリカードの直線運動

 複数のリンクを二等辺三角形になるようレイアウトした場合、駆動リンクを回転させると、従動ピンが、リンクを構成する二等辺三角形を、直角2等分する直線に沿って運動するものです。

ブリカードの直線運動 図8 ブリカードの直線運動

【No.53】ケンプの直線運動

 この機構では、3つのリンク固定端を結んだ同一直線上に従動ピンを配置しています。その線上で従動ピンが直線運動をします。

ケンプの直線運動 図9 ケンプの直線運動

【No.54】スライダリンクの楕円コンパス

 この機構では、駆動リンクの固定端と同一直線上に長穴を配置します。駆動リンクの回転によって、従動ピンが楕円の一部の軌跡を描きます。

スライダリンクの楕円コンパス 図10 スライダリンクの楕円コンパス

楕円:楕円とは、平面上のある2定点からの距離の和が一定となるような点の軌跡のことです。下図のように、2本のクギと糸を使うことで簡単に描けます。



【No.55】テオ・ヤンセンのリンク機構

 テオ・ヤンセン(Theo Jansen)氏は、オランダ出身の彫刻家であり、物理学者でもあります。彼の作品では、風力を利用したリンク機構による機械が有名です。以下は、テオ・ヤンセン氏の作品で使われたリンク機構です。複雑な機構なので、今回は解説を割愛します。

⇒番外編「のしのし歩く! テオ・ヤンセンのビースト機構」はこちら


まとめ

 機械設計者であれば、設計の中で少なくとも簡単なリンク機構を考案しなければいけない場面に出くわすはずです。

 リンク機構を考案する際の秘訣(ひけつ)は、“柔らか頭”と“軽いフットワーク”です。固定観念にとらわれないユニークなアイデアと、「発想の転換」をするための柔軟な思考力、そして「ダメだと思ったらサッサと違うアイデアに移行する」という臨機応変さが必要なのです。

 本連載「メカメカリンクで設計しよう」を参考に、読者の皆さんのアイデアを盛り込み、オリジナリティーあふれる新たなリンク機構を考案していただきたいと思います。(完)

筆者より

本連載(全11回)で解説した四節リンク機構は、発売中の私の著書「めっちゃ、メカメカ!リンク機構99→∞〜機構アイデア発想のネタ帳」(日刊工業新聞社)にも収められています。こちらもよろしくお願いします。



Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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