電気料金値上げに「対抗」するにはスマートグリッド(2/4 ページ)

» 2012年03月16日 11時10分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

効率改善が著しいエネファーム

 エネファームの技術革新は著しい。機器の小型化により、設置面積が小さくなってきた他、利用できる発電量、発熱量も増えている。

 家庭の消費電力の約8割をカバーできる製品も登場した。エネファームはこれまで100℃以下の「低温」で運転するPEFC(固体高分子形燃料電池)技術を利用してきた。電力よりも熱(お湯)を作るのに適した技術だ。2012年に入り、PEFCとは異なる特徴を備えたSOFC(固体酸化物形燃料電池)を用いたエネファームが登場し始めた。SOFCは750℃という「高温」で動作する。

図2 SOFCとPEFCの比較 左がSOFC、右がPEFC。上はシステム全体の動作、下はセルでの化学反応を示す。FC EXPO 2012でJX日鉱日石エネルギーが展示した内容。

 PEFCと比べて、SOFCの利点は大きく3つある(図2)。まず運転温度が高いため、排熱を機器内部で利用できることだ。都市ガスの主成分であるメタン(CH4)から水素(H2)を改質器で作る際に必要な反応熱をセルスタックの排熱で賄える。つまり装置全体としてのエネルギー利用効率が高くなる。なお、PEFCでは図2の右上にあるように改質器の温度を加熱バーナーで高めていた。

 次に、高価な貴金属触媒が不要だ。PEFCでは水素を酸化するために白金(Pt)触媒が必要(図2の右下にある燃料極の表面)だが、SOFCでは運転温度が高いこともあって不要だ。触媒についてはSOFCが有利な部分がもう1つある。都市ガスから水素を作る際、一酸化炭素(CO)が副産物として10%程度発生する。PEFCではCO変成器やCO除去器を使って、濃度10ppm以下になるまで一酸化炭素を除去しなければならない。さらに、10ppmであっても、一酸化炭素はPt触媒の能力を失わせる(被毒)ため、別途ルテニウム(Ru)触媒を燃料極に加えて、一酸化炭素を二酸化炭素(CO2)に変えている。SOFCでは一酸化炭素を燃料として利用できるため、CO変成器、CO除去器、Ru触媒が不要だ。従って、装置全体の体積を小さくでき、コストダウンにもつながる。

 最後にSOFCは発電効率を高めやすい。都市ガスのうち、エネルギー(電力+熱)として得られる比率はPEFC、SOFCともあまり変わらないが、SOFCでは電力の比率が高くなるよう設計できる。

性能改善相次ぐ

 SOFCを内蔵したエネファームでは、JX日鉱日石エネルギーが先行した。「SOFC型エネファーム」の一般向け販売を2012年1月に開始(関連記事)*2)、「既に数百台を売り上げ、2012年3月末までに800台以上の販売を見込む」(同社)。価格は270万円である。同社は2012年夏にもエネファームと太陽電池や二次電池を組み合わせた「自立型エネルギーシステム」の販売を開始する予定だ。

*2) 同社は2011年10月にSOFC型エネファームの販売を開始したが、当初はモニター販売という形を採っていた。発電効率は45%、総合熱効率は87%。連続運転により家庭の消費電力の7割をまかなえるという。

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