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» 2012年03月21日 12時50分 UPDATE

マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(19):かわいい素材に黄泉(よみ)がえる廃棄物たち (1/3)

廃棄物工場は、宝の山だった!? 新品同様なのに“ゴミ”として扱われる素材をデザイナーやクリエイターにかわいい素材として安価に提供するナカダイの取り組み。

[三木康司/enmono,@IT MONOist]

マイクロモノづくりと廃棄物の出会い

 今回は、ユニークな産業廃棄物処理業 ナカダイの工場を訪問し、同社 前橋支店支店長の中台澄之氏にお話を伺いました。

 私たち(enmono)が同社を知ったのは、2010年10月に開催された「東京デザイナーズウィーク2010」がきっかけでした。ナカダイは、同イベント内で廃棄物を使った展覧会を開いていました。

 「産業廃棄物処理」の業務内容は、当事者以外の一般人には、いまひとつ分かりにくいのではないでしょうか。それに、廃棄物といえば“暗い”イメージもあるでしょう。

 ところが同社の展示物である廃棄物は、そのイメージとは裏腹に“妙にポップ”(かわいい感じ)であり、一般人に興味を抱かせるようなものだったのです。

 その後の私たちは、2011年10月29日〜11月6日にナカダイが開催した「ナカダイ 西麻布工場」という展示イベントも見学しました。ナカダイの廃棄物を使ったさまざまなクリエイター作品を展示していました。

 「ナカダイ西麻布工場」では、中台氏によるトークセッションも聴講しました。そこで同氏により語られた「主婦目線でのモノづくり」は、私たちの提唱するマイクロモノづくりでもよく勧めていること。「ナカダイとマイクロモノづくりは、非常に近いものがあるな」と感じたのでした。これをきっかけに、私たちは、中台氏とFacebook上で“友達”になり、そこから本格的に交流が始まりました。

yk_enmono19_00.jpg 「ナカダイ西麻布工場」
yk_enmono19_00_2.jpg ナカダイ西麻布工場イベント中のモノ:ファクトリー。ナカダイの産業廃棄マテリアルで制作したさまざまな製品、作品の展示がされた

 「主婦目線でのモノづくり」についてお話する前に、まずはナカダイの事業について紹介していきましょう。

yk_enmono19_01.jpg ナカダイ 前橋支店支店長 中台澄之氏

巨大な倉庫と、シャンプーの香りのする処理工場

 ナカダイの取材は、同社のリユース事業の巨大な倉庫からスタートしました。がらんとした倉庫の中に、新品と見間違えるほどのイスや机が並んでいました。

yk_enmono19_02.jpg リユース事業のために作られた巨大な倉庫の中に、新品と見間違えるような廃棄物が並ぶ。
yk_enmono19_03.jpg ほぼ新品と思うようなプラスチック製のイス。こんな廃棄物が倉庫にはゴロゴロある。

 それ以外にもまだまだ使えそうなオフィス用のパーティション、コピー機などさまざまな“ゴミとは言いがたい”廃棄物が並んでいました。「まだまだ使えそうなのに、“ゴミ”として捨てられる運命にあるのか……」とショックを感じるほどです。

yk_enmono19_04.jpg メーカーの在庫処分品と思われAVボード

 取材当日(2012年1月)は、時期的に廃棄物が少ない時期とのこと。最盛期には倉庫がほぼ満杯になるほどだといいます。

 この倉庫の中にあるものは、実際、メーカーの在庫処分の対象となった新品の製品も混じっているそうで、取材当日は、リサイクル業を営んでいらっしゃる方々向けのオークションが開催され、活況を呈(てい)していました。

 同社の倉庫を見ていて気が付いたのは、どことなく“シャンプーで洗いたての髪の毛の香り”。まずは、その理由を尋ねてみました。

yk_enmono19_05.jpg シャンプーの香りが立ち込める、リユース事業の倉庫。

 中台氏の処理工場では、シャンプーやリンスなどを製造する大手化粧品メーカーの廃棄物処理を請け負っているということ。そういう理由から、廃棄物を入れるパッケージも、その化粧品メーカーのシャンプーやリンスなどが入っていたタンクを再利用していたのです。

 シャンプーの香りがする工場の中で、作業員の方が黙々と選別作業に勤しんでいる姿を見ていたら、廃棄物の工場であることを忘れてしまいそうでした。実際に工場内で作業をされている人の半分近くが女性であるということにも驚きでした。

yk_enmono19_06.jpg 作業員の中には女性の姿も数多く見受けられた。

 中台氏によれば、「分別」という地道な作業については、男性よりも女性の方が向いているとのことでした。そして、その作業を見ていて、廃棄物の分別作業に、とにかく非常に神経を使っている様子が感じ取れました。

 その象徴的な工程が、工場見学の中で立ち寄った発泡スチロールの分別工程でした。中台氏自身も、「一般の人にはどれも同じように見える発泡スチロールを、“見た目”“手触り”“硬さ”などから素材を判別し、細やかに分別することができる」ということでした。

 中台氏は、1つの発泡スチロールにライターで火を着け、その匂いで、どの素材かを見極めるというデモンストレーションもしてくださいました。

yk_enmono19_07.jpg 発泡スチロールにライターで着火するデモンストレーションの様子。

 ここまでこだわって分別に力を入れる理由は、以降で紹介する、「モノ:ファクトリー」というリマーケティング事業のためなのです。

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