Mobile World Congress 2012レポート ―― 他で語られなかったメッセージを読み取る金山二郎のAndroid Watch(5)(1/3 ページ)

金山二郎のAndroid Watchの第5回。今回は、2012年2月27日から3月1日までの期間、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」の展示会場の様子から読み取れるメッセージを、Androidかいわいの最新動向を交えながら紹介する。

» 2012年03月26日 11時00分 公開
[金山二郎(イーフロー),@IT MONOist]

 世界最大規模のモバイル関連の祭典「Mobile World Congress(以下、MWC)」が、今年(2012年)もスペイン・バルセロナで開催されました(会期:2月27日から3月1日まで)。

 既に、さまざまなメディアで速報やレポート記事が掲載されていますが、今回のMWC 2012も多くの出展社と来場者でにぎやかな展示会となりました。

 本稿では、MWC 2012の展示会場で筆者が注目した展示ブースの模様と現場で感じた率直な思いについて紹介します。また、MWC 2012の展示ブースの様子からは、Androidを取り巻く企業の明暗が見て取れました。そこから、他のレポートなどでは語られなかったメッセージを読み取りたいと思います。


2年目のAndroid Community

 最近は日本のニュース番組でもその模様が紹介されるようになり、一般の方々にもおなじみの展示会となりましたが、MWCはその名が示す通り、モバイル業界における世界的な展示会として広く認知されています。ITの世界の中でも、携帯電話やタブレットといったモバイル機器は“花形”に位置しますので、MWCにおける展示内容もとても豪華で華やかなものばかりです。ちなみに、2006年からスペインのバルセロナで開催されていますが、以前はフランスのカンヌで開催されていました。

 前回、2011年のMWCは非常に明快なものでした。Apple対抗としてAndroidが強く支持され、Androidの下に皆が集結したという意味合いが強い内容となりました(参考記事:MWC 2011レポート)。

 それでは、今回のMWC 2012はどうだったかというと、相変わらずGoogleが支援する「Android Community」は大盛況でした(画像1)。

Android Communityの様子 画像1 Android Communityの様子

 たくさんのパートナー企業が出展し、ドロイド君のぬいぐるみをつかむUFOキャッチャーに長い行列ができ、「Galaxy Nexus」のバッテリーカバーにAndroidのデコレーションを施すAndroidメカが登場し、Androidデバイスが回転ずし仕立てのコンベアの上を流れ、そして……期待通りに本物のアイスクリームサンドイッチ(IceCreamSandwich)が登場しました(画像2)(参考記事:Mobile World Congress 2012 フォトギャラリー)。

やはり登場したIceCreamSandwich(本物) 画像2 やはり登場したIceCreamSandwich(本物)

 しかし、2年目の慣れのせいでしょうか、筆者は前回ほどの強烈な熱狂を感じることができませんでした。前回は眼の色を変えてAndroidのピンバッジを集める姿が至るところで見られましたが、MWC 2012は“いたって普通”の盛り上がりでした。

 その理由としては、IceCreamSandwich(Android 4.x)が2011年に登場してしまったので、それ以上の大きな発表が用意できなかったからかもしれません。また、Googleのエリック・シュミット氏のキーノートでは、「Chrome for Android」とAndroid端末の低価格化による普及促進について触れられていましたが、ニュースソースとしての“派手さ”という点では、いまいち振るいませんでした。

 ただし、連載第4回「Android搭載タブレット端末で成功する鍵とは何か」でも述べた通り、2012年はAndroidがスマートフォンと汎用タブレット以外の分野に展開されることが確実視されているため、キーノートで触れられていた2つの事象はAndroidの躍進において大きな意味を持ちます。

 Chrome for Androidのアナウンスは、端的にHTML5への傾斜を示します。AndroidのUI(User Interface)は、以前よりもずっと良くなりましたが、汎用製品のUIとしてApple製品と比べてしまうとどうしても見劣りしてしまいます。AndroidのHTML5の中核である「WebKit」は、そもそもAppleが中心となって開発したものです。しかし、現在、Appleは互換性を犠牲にした「WebKit2」に移行しているのに対し、Googleはいまだに旧バージョンのWebKitを使い続けているなど、HTML5にシフトしても課題はたくさんあります。ただ、いずれにせよHTML5は今後間違いなく普及する技術です。従って、この波に乗って進むという選択は妥当に思えます。

 もう1つのAndroid端末の低価格化については、実は2012年のAndroidの大変重要な“キー”だといえます。情報デバイスの普及は確実に進み、性能は上がり、価格は下がるという傾向が続いています。連載第4回でも触れましたが、Androidタブレットが“特定サービスのための専用端末のリファレンス”となりつつあります。MWC 2012の会場では、「NOVO7」というMIPSベースのAndroidタブレットを使ったデモをあちこちで見掛けました(画像3)。

NOVO7 画像3 Opera SoftwareでHTML5コンテンツのデモに使用していた「NOVO7」。Androidの重要な展開を示したデバイスといえる

 そこで、それぞれの説明員に話を聞いてみると、ほぼ例外なく、次のことを聞かされました。あまりにも同じことを言うので感心しつつも思わず笑ってしまいました。

  • わずか75ドル!
  • しかもIceCreamSandwich搭載、HTML5もご覧の通り!
  • こういうデバイスを利用できるので良いサービスがすぐに立ち上げられるようになった、時代が変わった!

 世界規模でAndroidをフロントとしたサービスが今まさに立ち上がろうとしていることを実感させる出来事でした。

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