MONOistも参加してみた! 全日本製造業コマ大戦製造業のSNS活用の実際(1)(3/3 ページ)

» 2012年04月10日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]
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コマ製作について

 編集部が出場を決めた時点では、既に当日まで2週間を切っていて、設計・製作にかけられる予算も限られていた。協力していただく方々に負担を掛けず、かつ面白いコマが作れないかどうか検討することに。

 シンプルで高性能なタイプのコマを目指すと、3次元CADでモデルを作ってもスイープ1回で作れてしまい、製作も数分で済んでしまう。純粋に、コマとして満足いく性能向上を検討をする時間も足りない。また、金属でモデリングしがいのある凝った形状を作ろうとすれば、製作コストが掛かり過ぎてしまう。――そういうわけで、今回のコマは、その構造を大きく2つに分け、上はRP(3次元造形)、下は金属(旋盤加工)で製作することにした。

 早速、MONOistとスワニーとで、コマの設計について電話で相談。「回転時に、傘(かさ)のように展開する機構」なら対戦時に相手の直接攻撃を避ける効果が期待でき、しかも比較的簡単に実現できるだろうという話に。横浜の大会では、このようなギミックを入れたコマを製作したチームはまだなかった。

 この時点で、由紀精密にも、こちらで考えたコンセプトやコマの基本構造をお伝えし、コマのベースとなる部分の製作の見積もりを取っておいた。最低限、大会に出場できる程度に回るコマは、ひとまず由紀精密の技術で担保しておこうと考えた。

スワニ―の若手設計者パワー、さく裂

 スワニ―の対応は、とにかく素早い。

 編集部が電話で相談した翌日、スワニ―は早速、社内で設計コンペを開催してくれた。そして、その夜のうちに複数の設計案が送られてきた(以下)。どれも採用してあげたいほどに気合いが入っていた。

 そのうち採用されたのは、スワニーのメカ設計者 白川徹氏の案だった。

 花の中央部にワッシャーとバネを仕込んでいて、回転したときにワッシャーが浮き、それまで押さえつけていた各花弁の付け根がリリースされることで展開するという仕組みだ。

 夜間に光造形を仕掛けてもらい、その朝には試作品のパーツが出来上がった。昼前には着色と機能確認が済んでいた。

 「すごいのができちゃいましたよ! これ、売れるかもしれません」――ハイテンションな一報を橋爪氏から電話でいただいた。最低限の狙った機能はかなえられると想定してはいたが、思った以上の出来だった。

スワニ―による試作

 その後は、詳細設計をMONOistの筆者でもあるニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役の水野操氏に預け、パーツ分割や重心検討をしていただく。

花の機構をRPで、コマのベースとなる部分を金属で

 完成したデータは、すぐにスワニーと由紀精密にパスして、製作に取り掛かっていただく。スワニーパートは、RPなので半日程度で製作していただき、編集部に宅配便で届けてもらった。

精密コマの王者 由紀精密の力を借りる

 スワニーの設計検証と製作と同時並行で、由紀精密には金属部の製作を進めてもらった。年度末の繁忙期にもかかわらずスピーディーな対応で、組み立て調整にも協力していただいた。

 スワニーから届いていたRPのコマギミックを由紀精密に持参し、その社内で組み立て調整した。金属部とRP部を接着した後、精度がそれほど高くないRP部の軸ずれをカバーするために、金属ベース部を研磨して微調整した。ちょっとした組み立ての条件が、コマの性能に大きく左右してしまう。

 コマ製作は、横浜大会の回し手でもあった八木大三氏にしていただいた。研磨による仕上げは、同じく回し手を務めた高木大氏に担当してもらった。

高木氏が研磨をする様子

 微調整の後、完成。同社が所持していた当日仕様のケミカルウッドの競技台で、接着したコマの性能を確認した。この性能確認のとき、先に紹介したように、“同社の優勝コマ”に3回中1回勝っていた。

 コマとしての仕上がりは素晴らしいものだった。記者の心の弱さがとても悔やまれるほどに……。しかし、このコマ大戦は、勝ち負けが全てのイベントではない。自らイベントに参加することで製造業の現場の方々との一体感を味わえ、大変貴重な体験となった。

コマ大戦 茨城場所のダイジェスト:MONOistのコマも見られる

 次回は、全日本製造業コマ大戦 茨城場所に参戦したコマの数々を紹介する。

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