のしのし歩く! テオ・ヤンセンのビースト機構メカメカリンクで設計しよう(番外編)(2/2 ページ)

» 2012年04月25日 12時45分 公開
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 なぜなら、左右2対のリンク構造では接地部は2点支持となり、構造物を安定して保持できない構造となり、ギクシャクした動きになっていたのです。

 一般論として、物体を安定して支持するためには最低3点が必要です。これは、製図の幾何公差で使うデータムターゲット(面ではなく複数の点でデータムを構成する際の考え方)にも共通する事項です。

 そこで、図5のように位相を少しずつずらした4対の足を配置すると少し安定した動きになります。

テオ・ヤンセンのビースト機構の歩行動作 図5 テオ・ヤンセンのビースト機構の歩行動作(複数面を重ねた動作)

 つまり、接地部の保持点数を増やせば増やすほど進行方向に対して左右と上下動作は小さくなるのです。

 インターネットの動画サイトで見られるテオ・ヤンセンのストランド・ビースト機構の足の多さは、上記のような理由があるからなのです。

 今回紹介した現物のおもちゃやアニメーションでは、支点位置や足の長さについて、最適化した数値で作ったものではありません。

 テオ・ヤンセンのオフィシャルWebサイトを確認すると、コンピュータシミュレーションによって得られた最適なリンク長さの比率が示されていますので、実際に製作してみたい場合は下記URLを参考にするとよいでしょう。

関連リンク:
STRANDBEEST

 テオ・ヤンセンのストランド・ビースト機構の優れた点は、たった1つの動力で、さまざまなリンクを作用させて、動物が歩くような動きを実現させていることです。

 筆者の持論ですが、最小限のアクチュエータを使って、メカリンク機構で複雑な動作をさせることこそが機械の信頼性を向上させる秘訣であると確信しています。



 以上で、「メカメカリンクで設計しよう」の番外編は終わりです。リンク機構にかかわらず、設計作業には論理性が必要です。読者の皆さんにアドバイスするとすれば、「論理性を意識した設計を心掛ける!」ということに尽きます。

筆者より

本連載(全11回)で解説した四節リンク機構は、発売中の私の著書「めっちゃ、メカメカ!リンク機構99→∞〜機構アイデア発想のネタ帳」(日刊工業新聞社)にも収められています。こちらもよろしくお願いします。



Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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