たった1本の光ファイバーが1万箇所以上の温度センサーに――データセンター向け温度測定システム富士通研究所のアルゴリズムを活用

富士通ネットワークソリューションズは、1本の光ファイバーで1万箇所以上の温度分布を10cm間隔で正確かつリアルタイムに測定できる「光ファイバー温度測定システム」の販売を開始。データセンター内での活用を見込む。

» 2012年04月25日 19時10分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

 富士通ネットワークソリューションズは2012年4月25日、1本の光ファイバーを温度センサーとして、1万箇所以上の温度分布を同時に測定し、リアルタイムに可視化する「光ファイバー温度測定システム」の販売を開始した。サーバや通信機器などが多数設置されたデータセンター内での活用が見込めるという。

 同システムは、測定器・ソフトウェア、設置工事、現調、SE作業、保守までを含めたトータルソリューションとしての提供となる。データセンターの規模に応じて、6種類の測定器が用意され、24kmまでの光ファイバー長に対応しているという。100ラック、300m2相当(ラック前面・裏面、天井、床下の温度を測定)のデータセンターでの参考価格は約2000万円となる。同社は、今後3年間で約10億円の販売目標を掲げる。

「光ファイバー温度測定システム」のイメージ 「光ファイバー温度測定システム」のイメージ(※出典:富士通ネットワークソリューションズ)

 現在、データセンターで利用されているような従来型の温度センサー方式では、センサー設置ポイントのみでの測定になるため、より詳細な温度分布を把握できず、効率的な空調設定が不可能であった。これに対し、同システムは、富士通研究所が開発したアルゴリズム(特許出願済み)により、光ファイバーで1万箇所以上の温度分布を、10cm間隔で正確かつリアルタイムに測定できる。また、専用のソフトウェアにより、詳細な温度分布をグラデーション表示できる他、あらかじめ設定した温度を超えた場合、温度異常としてリアルタイムに通報する機能も備えている。

専用ソフトウェアの画面イメージ 専用ソフトウェアの画面イメージ(※出典:富士通ネットワークソリューションズ)

 同システムにより、きめ細やかな空調設定(風向、風量、温度設定など)が可能となり、温度環境の適正化が図れるため、機器の故障リスクの低減やデータセンターの電力削減に貢献できるという。なお、従来の温度センサー方式とのコスト比較においては、「約600ポイント(従来型ポイント式温度センサーの設置数)以上、およそ100ラック以上の規模で安価となる」(同社)としている。

 また、温度測定方法については、「ラマン散乱光」(補足)による測定方法を採用しており、サーバや通信機器などの電気信号に影響を与えずに測定できるとのことだ。

※補足:物質にレーザー光などの強力な光を照射すると、その光の波長に対し、わずかに長い波長と短い波長の光が散乱する。これをラマン散乱光と呼び、物質の温度に応じて強度が変化する性質を持つ(プレスリリースより)。


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